ホーリー・ウェディング

ホーリー・ウェディング

この映画はずっと前にNHKBSか何かで見たんだと思う。中古ビデオ売場へ行くと必ず一本はある。今まで買わなかったのは、テレビで見た時これといって印象に残らなかったからだと思う。コメディーだけどすごく笑えたという記憶がない。今回買ったのは、ひょんなことからジョゼフ・ゴードン=レヴィットが出ていると知ったから。レヴィットは、今私が注目している俳優の一人なのだ。さて、マリリン・モンローにあこがれ、ハリウッドへ行って有名になりたいと夢見るハバナ(パトリシア・アークエット)は、遊園地でモンローのそっくりさんとして働いている。ある晩恋人のピーター(テイト・ドノヴァン)と組んで遊園地の売上金を強奪する。ところがあんまり頭のよくない二人のやること、ピーターは監視カメラにばっちりうつっていたのだった。これじゃすぐつかまる・・と、新聞もテレビもないところ・・自分の故郷・・カナダにある宗教コロニーへ向かう。ハバナはそんなところへは行きたくない。お金を山分けしてハリウッドへ行きたい。しかし彼女を一人にしたらたちまち警察につかまってしまう。ピーターにもそれくらいはわかる。コロニーへ戻り、家族や住民の手前同棲というわけにはいかず、正式に結婚式を挙げる。お金は秘密の場所に隠す。三年ぶりに戻ったピーターを、母親や弟イジキエル(レヴィット)は喜んで迎えるが、ハバナは村では浮いた存在。村の人口は130人。それをジーク(イジキエル)が「131人とバカ女1人」と書き換えるのがおかしい。ジークと町へ出かけたピーターは、捜査の手が伸びてきていることを知り、逃げ出すことにする。戻ってきたばかりなのに・・と車の中で兄弟げんか。車は引っくり返って炎上。外に投げ出されたジークは助かったが、ピーターは死んでしまう。夫が死んでもさして悲しくないハバナ。それよりもお金だ。さっさとここから逃げ出したい。でもどこに隠してあるのだろう。必死に捜しているところへ、長老達がジークを連れてやってくる。コロニーの長ヴィルヘルム(アーミン・ミューラー=スタール)によると、聖書の教えにより夫が子供を残さず亡くなった場合、妻は夫の兄弟と結婚する決まりなのだという。もちろん断ることもできるが、お金を置いて立ち去るわけにはいかない。仕方なくハバナはジークと結婚することにする。一方ジークはまだ12歳。女の子より蛙が好きというお年頃。

ホーリー・ウェディング2

ピーターのことでいつも学校でいじめられ、何か興奮したりびっくりしたりするとすぐ気絶してしまう。・・すぐ気絶する動物っていたよなあ・・テレビで見たことある・・ヤギだったっけ?とにかく頼りなくて小動物みたいなジーク。美少年ではなく平凡な顔立ち。眉尻が下がっていかにも気が弱そう。それにしてもやっぱりいじめやからかいがあるのね、こういう集団でも。さて、ジークとハバナがけんかしたり策をめぐらせたりしている間にも、捜査は進んでいた。FBI捜査官マーコウスキが担当。アメリカとカナダにまたがっているからFBIが出向いたのか。ところがこのマーコウスキ、どうも落ちこぼれらしい。相手が女子供と知ると、うまくごまかしてお金を自分のふところへ入れかねないような男。ジークはすでにお金を見つけていて、ハバナに渡してさっさと出て行ってもらうつもりだったが、盗んだものと知り、長老に知らせる。持ち主に返すことになり、ハバナとジークはコロニーを出発する。ハバナにとってはチャンスだ!泊まったホテルで若い男と意気投合するが、ジークはやめさせる。妻とうまくいってないらしい中年男が、結婚なんてするな・・とジークにぼやくシーンがおかしい。もっともハバナの中では、何かが少しずつ変わり始めていた。頼りないジークだが、聖書の教えを素直に受け入れて育ってきたので迷いがない。信じるものがあるということは強いものだな・・と思う。確かに何もかも聖書にのっとってという生活は退屈だし視野は狭いし楽しむことより耐えることを多く要求される。それでもジークは満足している。食事にしても人間一人が食べられる量は決まっているし、たいていの者より自分は多くのものを持っている。果てしない欲望をいだき、満足を知らない者もいるが、ジークは持っている欲望が少ないので、今のままでも十分満足なのだ。自由気ままに生き、楽しいことをいっぱいやってきたはずのハバナだが、ジークに家族のことを聞かれてとまどう。さてマーコウスキをかわし、やっと遊園地にたどり着いた二人。しかしハバナは親切を仇で返してしまった支配人に会う勇気はなく、ジーク一人を行かせる。しかし心配でたまらず、あとを追う。あたりを注意して見ると、やっぱりマーコウスキがいた!お金を横取りする気だ。・・てなわけでクライマックスはにぎわう遊園地での追いかけっこ。

ホーリー・ウェディング3

宗教コロニーと言えば「刑事ジョン・ブック/目撃者」で知られるようになったアーミッシュがある。この作品はテレビで一度見たことがあるけど、印象に残っているのは食べちゃいたいくらいかわいらしいルーカス・ハース坊やと、乳牛みたいな母親。何であんなシーン入れたのかな。ルーカス坊やは成長して、「ブリック」では何とレヴィット君と共演している。しかも役柄は・・!!話を戻して「ジョン・ブック」と言い、「ホーリー」と言い、宗教コロニーが、何かあった時のかっこうの隠れ場所・・みたいなとらえ方されているのはどうなんだろう。まあ今回は兄の未亡人が規則により弟の妻になるというのがキモなので、コロニーの生活ぶりはコメディーっぽく軽く描写されている。それでも12歳で正式に結婚できること、車や農業用機械を動かせること(つまり免許がある)などは興味深かった。クライマックスではジークが大型機械を動かせるということがポイントになって、楽しいシーンを見せてくれる。てなわけで今回はわりと楽しめた。ジークがハバナのことを支配人にとりなすシーンなど、不覚にも涙ぐんでしまった。12歳の子供に真面目な顔で「僕の妻です」なんて言われてごらんなさいな。何てけなげな、何て純粋な・・。しかもジークはマーコウスキに殴られて目に青あざ作ってるし、ハバナはそれに氷のうあててるし(どう見たって母子!)。二人にはこのままコロニーで夫婦として暮らして欲しいところだが、映画はそうならない。家出したまま家族との交流が絶えているハバナだが、家に帰ってみることにする。ジークはまた10年後に会いに来てね!と言う。おそらく二人は結婚を解消したのだろう。10年後にはジークにも好きな女の子ができているかもしれない。ハバナの方にだって・・。でもどちらにせよハバナはいつかまたここを訪ねてくるだろう。今度は本名のベッツィという名前で・・。今度のことでハバナは生まれ変わったけど、ジークの方もだ。遊園地で追われている時、恐怖のあまり何度も気絶しそうになったけど必死でがまんした。気絶してしまえば何もわからなくなり、うんと楽だ。今までの彼ならそうしたろう。でも今回は妻のハバナのため、一人の男としてがんばらなくては・・と恐怖を克服した。偉い!監督はレナード・ニモイ。何てことはないけど心がほんのり暖まる映画。時間を置いて見直すと見方が変わることもあるのね。