ヒッチコック

ヒッチコック

この映画の原作ではないけれど、「サイコ・シャワー」を本屋で見つけた時はすぐに買って読んだ。「サイコ」のDVDにはさまざまな特典が付いていた。これらによって、映画製作の裏には資金とか検閲とかいろんな障害があったのだとわかった。他に、ヒットさせるためのさまざまな工夫も。「レベッカ」や「マーニー」の感想を書くためネットでいろいろ調べていた時、ジョーン・フォンティンに冷たく接しただの、ティッピー・ヘドレンにセクハラまがいのことをしただの、ホントかいなと思うようなことが書いてあってびっくりした。そう言えば昔買った「魔性のヒロイン」という雑誌にも、某インタビューで「イングリッド・バーグマン、グレース・ケリー、ティッピー・ヘドレンなど一見冷たく上品で知的な女ほど好色」・・みたいなこと言ったと書いてあって。これを読んだ時から嫌なジジイだ・・と、彼のこと嫌いになったんだけどさ。アンソニー・ホプキンス主演で映画が作られたと知った時は、だからかなり暴露的な内容になるのでは・・と期待した。だってDVDのドキュメンタリーなんかだと、きれいごとしか言わない。ほめたたえてばっか。でもそれだけじゃないはず、絶対負の面があるはず・・って思っちゃう。公開時の新聞批評を読んだ感じでは、夫婦愛の話みたいで。とたんに期待もしぼんでしまった。夫の成功のかげには賢夫人の存在が・・何かあっても結局は絆が深まった・・あのぅそんなカビの生えた内容の映画今更見たいと思います?わざわざ作る意味ないじゃん。でもたいていの人は夫婦愛に感動したとかほめていて。ホプキンスはメイクの塊みたいになってる。実在の人に扮して名優二人が大熱演!公開時期もアカデミー賞狙い!何やらあざとさを感じるのは私だけ?妻のアルマ役ヘレン・ミレンはともかく、70代半ばのホプキンスは60歳のヒッチやるには老けすぎ。ヒッチに似てないホプキンス。太りすぎのレクター。要するにヒッチが生きて動き回っているように見えない。メイクの塊が動いているだけ。まあ期待せずに見て、やっぱりその通りだったんだけどさ。でもよかった点もある。一つ目はアンソニー・パーキンス役にジェームズ・ダーシーを起用してくれたこと。ほっそりしていて繊細な雰囲気の彼は、パーキンス役にはぴったりだ。でも、出番の少なさ、扱いの軽さにはがっくり。

ヒッチコック2

「サイコ」イコールシャワーシーンで、それ以外は存在しない・・みたいな。それとダーシーはあまりはっきりくっきりとはうつしてくれなかったな。すでに40過ぎてるし、20代後半のパーキンスやるのは・・ああせめて10年、いや5年でもいい、もっと早くこの企画が立てられていたら・・。もっとも、出番が少ないんじゃどっちみち(涙)。ちょっとびっくりしたのは、おばあさんの格好している彼がうつること。あれじゃあノーマンイコールベイツ夫人ってバレバレじゃん。全員が「サイコ」見て犯人はノーマンだと知ってるって前提?よかったことの二つ目はエド・ゲイン役でマイケル・ウィンコットを起用してくれたこと。出ているとは知らなかったので、彼だとわかった時にはうれしかった。ヘアスタイルなど実際のゲインに近く、外見はスティーヴ・レイルズバックのゲインより似てるかも。でもゲインとヒッチのやり取りは今いち。特にバスルームのシーン・・床を指でこするとか、錠剤とか、意味がわからん。他の出演はジャネット・リーがスカーレット・ヨハンソン、ヴェラ・マイルズがジェシカ・ビール、ヒッチの秘書ペギーがトニ・コレット、映倫の人はカートウッド・スミスか。脚本家のステファノ役はラルフ・マッチオ。このマッチオの久々の登場と、出番の少なさも一部の人には驚きだったようで。ゲインの兄役でフランク・コリソンがちょこっと。さて、映画の半分を占めるのがアルマの苦闘。家庭ではよき伴侶、仕事では頼れるパートナー・・表向きはそうでも、彼女の”女”の部分があがく。夫を助けたいという気持ちと、もううんざりだという気持ち。クックと脚本を練っている時の楽しさ、彼には女性として見てもらえているといううれしさ。ヒッチといる時には味わえない心の浮き立つ充実感。でも・・妻がいながら若い女を引っ張り込むクックに幻滅する。自分も危ないところだった!で、再びヒッチに協力するけど、映画が成功して喝采を受けるのは彼。”女”としての彼女の居場所は、その後見つかったのだろうか。リーやマイルズは仕事より家庭の方が大事・・と、愛する夫や子供がいることに女の幸せを感じている。アルマにだってそういう時期はあったはずなんだよな。・・でも・・私がこの映画に期待したのはそういうことじゃなくて・・ってもういいや。