ハイテンション

ハイテンション

この映画、公開されたのは知ってたけど見逃した。珍しいフランス製スプラッターという触れ込み。別に血がどばーを見たいわけじゃないけど、こういう映画はなぜか気になる。この「なぜか気になる」が曲者。何かの方法で解決しない限り(テレビ放映、レンタル、あるいは購入)、ずーっと頭にこびりついて離れない。こういう「こびりつき映画」、常に何本かあります。「ハイテンション」の場合レンタルだけでは解決せず、DVD買ってしまいましたとさ。主人公マリー(セシル・ドゥ・フランス)は親友アレックス(マイウェン)の実家へ行く。試験勉強をするために・・ってことは二人は大学生か。田舎の一軒家・・さぞ勉強ははかどることだろう。マリーはやせていて髪はベリーショート。性格は内向的で恋人はいない。Tシャツとジーンズでボーイッシュ。アレックスは社交的でふざけるのが好き。恋人が浮気しているのでは・・などと普通に悩むタイプ。深夜・・玄関ベルが鳴り、こんな夜中に誰が・・とアレックスの父親が出ると、立っていたのは帽子をかぶり、作業服を着た中年男(フィリップ・ナオン)。アレックスの父親、母親、幼い弟・・次々に殺される。アレックスはしばられ、男が乗ってきたトラックに乗せられる。寝つかれず起きていたおかげで難を逃れたマリーは、何とかアレックスを助けようとするが・・。ある日突然殺人鬼に襲われるという恐怖。ごく普通の若い女性に、いったい何ができるのか。彼女の行動に、ピンチに、見ている我々は一緒に恐怖を味わったり応援したり。こうすりゃいいのに、ああすりゃいいのに・・と何度も思うが、現実にあんな状況に置かれたら何もできないだろうな・・とも思う。男は途中でガソリンスタンドに寄る。マリーは大急ぎで店員に助けを求める。でも・・思った通りこの店員は犠牲になる。後の方でアレックスが助けを求めた通りがかりのドライバーも犠牲になる。マリーがトイレに隠れている間に、トラックは走り去ってしまった。マリーは警察に通報するが、トラックに隠れていたせいでここ(ガソリンスタンド)がどこなのかわからない。仕方なくマリーは、店員の車でトラックを追う。深夜、孤立無援、薄着、素足。心細い、もどかしい、じれったい。恐怖、怒り、義務感。・・果たしてマリーはアレックスを助けることができるのか。

ハイテンション2

DVDにはメイキングやインタビューがついている。監督アレクサンドル・アジャは当時25歳で、まだ若い。何度も低予算だ撮影期間は短かったとくり返していた。でも余裕がなかったからこそこういう映画ができたのかも。迷いがない、ムダがない。勢いがあり、工夫がある。ところどころあれっと思うセリフや描写がある。クライマックスでどんでん返しがあるが、これ自体は目新しいものではない。「ああ、またか」と思う。でも予想していなかったので私はかなりびっくりした。この映画で印象的なのはチェーンソーを手にしたマリーの写真。でも今回気づいたけどDVDカバーのこの写真、マリーの後ろにカゲがうつってる。もうモロにネタばれ。映画の冒頭にも「私が私を追いかけている」というセリフがある。つまりあんまり隠していないのよ。私のように今頃になって気づくとろい人間もいるわけで・・。と言うか、だまされていた方が映画楽しめるわけで。マリーには恋人がいない。夜眠れず外に散歩に出ると、シャワーを浴びているアレックスが見える。どうもマリーは、アレックスが好きらしい。でもだからこそあんなに一生懸命にアレックスを助けようと奮闘するのだろう・・と私は思っていた。でも実際は・・。オチについては、ない方がよかった・・と書いてる人が多い。確かにこのオチだといろいろなことの説明がつく反面、どうしても理屈に合わないことが出てきてしまうのだ。マリーが運転する車が引っくり返るシーンは見せ場だが、撮影は大変だったと思う。夜だし森の中だし。でもあのオチだとこのシーンは全く不要なのだ。まあネタばれになるのでこれ以上書きませんけど。映画を見ている時には全く気づかなかったけど、インタビューを見たらマリー役セシルは「80デイズ」に出ていた人だ。こんな難しい役もこなすなんてさすが!インタビューではちょっとふっくらして、ピンク色の肌が輝いている。よく動く目と口、いきいきとした表情。帽子を小粋にかぶり、とってもキュート!私がDVD買う気になったのは半分はこのキュートさのせい。映画はブルーがかった冷たく寒々しい画調だけど、インタビューでの彼女はやわらかく暖かいムードを発散していた。・・てなわけで血が、首が、内臓が飛び散る凄まじい映画だけど(DVDは公開版より過激らしい)、悪趣味と言ってしまえばそれまでだけど、意欲や情熱の感じられる若々しい映画。私は感心したな。