炎の人ゴッホ

炎の人ゴッホ

これは前に一度見たことがある。私の記憶では白黒映画だったが、きれいなカラーだ。記憶違いかテレビが白黒だったのか。一つだけ覚えているシーンがある。ゴーギャンがゴッホの大量の絵を見て、「描きも描いたりだな」だか「描きまくったな」だか、そういう意味のことを言って呆れるところ。声は小松方正氏。今回字幕にはどう出るかなと期待して見ていたら・・「はかどってるな」だった。う~ん、普通。さてゴッホのイメージを固めたと言われるこの映画・・と言うか、カーク・ダグラスの熱演。ダグラスはまだ生きているんだよな。1916年生まれだからもう100歳越えたのか。伝道のため炭鉱夫達の世界へ自ら飛び込むゴッホ。未亡人となったケーに求婚してはねつけられるゴッホ。パリでの他の画家達との交流。絵を描きまくったアルルの日々。ゴーギャンとの共同生活と破綻。耳を切り、精神病院での日々、そして拳銃自殺。耳を切ったのは有名な事件だが、全部切り落としたのではなく、耳たぶを切ったらしい。あいだあいだにはさまれるゴッホの絵の数々。実際の建物、風景・・。少しくらい映画の出来が悪くても、伝記と画集を見ているようで、心が躍る。芸術家としての苦悩が掘り下げ不足というのは確かにそうだ。特に発作は唐突だし、それでいて説明を避ける。医師の見立てですませ、突っ込まない。終盤あたりは散漫な印象さえ受ける。前にも書いたようにダグラスは熱演だが、印象に残るのはゴーギャン役アンソニー・クイン。散らかった室内やずさんな金銭管理を嫌う。外で描くことにこだわるゴッホに対し、室内でも想像力を働かせればいいと気にしない。女性には愛を求めない。ピリピリしていて、どう見たって破滅するしかないゴッホに対し、自分のやり方、考え方を持っている。ダグラスが熱演すればするほど、クインの存在が際立つ。ゴーギャンと言えばタヒチだが、この頃はまだ行っていない。ネットで調べるとゴッホに負けず波乱万丈の生涯だったようだが。ゴッホの弟テオも印象に残る。兄の生活を支えるため、いったいどれほどの金銭を援助したのだろう。しかも彼は兄の死後、間を置かず死んでしまうのだ。せめてゴッホの作品が世に認められるまで生きていて欲しかったが・・神様も薄情だ。テオ役はジェームズ・ドナルド。