フリージャック

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これと「タイムボンバー」は、もう何年も中古ビデオ売場で仲良く売れ残っている。気になるけど買うほどじゃない。で、100円でレンタルする方を選ぶ。この映画のことは全然知らない。エミリオ・エステヴェスが銃を構えているから、刑事物だと思ってた。「張り込み」での彼はなかなかよかったし。でも・・SFみたい。ネットでの評価は低い。売り出し中のレーサー、アレックス(エステヴェス)はレース中大事故を起こすが、そのショックで1991年から2009年にワープしてしまう。でもこれ、未来の連中が仕組んだこと。2009年(もう過ぎたぞ)には、金を出せば精神転送機とやらで、”心”を次のボディに移すことができる。アレックスは事故で死ぬ運命だったけど、その一瞬を細工して転送。正確な時間、場所がわかっているからこれができる。すぐ”心”を次のと(つまり依頼主との)入れ替える手はずになっていたけど、邪魔が入り、目覚めたアレックスは何が何やらわからないまま逃げ回ることに。精神転送と、タイムワープの両方出してくるのは、人を殺してボディを手に入れるわけにはいかないからかな。つまりアレックスみたいに死が過去の事実になっているのなら、体いただいても罪にはならないとか。「サウンド・オブ・サンダー」の恐竜と同じで。まあ死体泥棒にはなるけど。・・と言うか、別にわざわざ過去から持ってこなくても2009年の状態じゃ殺人は日常茶飯事に見えるけど。殺伐としていて、無法地帯のよう。「ニューヨーク1997」みたいな。それにしても連中の手際の悪さときたらいったいどうなっているんだろう。転送をなぜ移動する車の中でやるのか、やらなければならないのか、私にはその理由が思いつかないのだ。無法地帯を走っていて、襲撃受けて、そのせいでアレックスは逃げることができたけど。襲撃の理由は何?大金持ちと底辺の人間しかおらず、その中間はなしという設定。オゾン層が破壊され、環境汚染が進んでいる。底辺の者が金持ちを攻撃するのか。警察は機能しているのか。軍隊は?マッキャンドレス社の副社長ミシュレットが、後に書く理由で、ボディ入手を邪魔したのか。目覚めたアレックスは、当然救急車の中だと思ってるはずで。なぜそう思わせておかないの?なぜ余計なことするの?

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さて2009年では、アレックスの恋人ジュリー(レネ・ルッソ)はマッキャンドレス社の重役だ。会社は大企業だが、何をやってるのかよくわからない。精神転送装置はそのうちの一部門。社長がアンソニー・ホプキンスで、ジュリーは彼のお気に入りのようだ。アレックスを追っているのはヴァセンダックで、演じているのは何とミック・ジャガー。アレックスを取り逃がしたせいで、ミシュレットはヴァセンダックをクビにするが、彼はその後も勝手に追い続ける。社長はテレビ電話に出るだけなので、たぶんこいつが黒幕・・とすぐわかる。ホプキンスだし。もう体は死んでいて、脳だけで生きていて、アレックスのボディ狙っているのだ。実は彼はジュリーに恋していて、でも彼女はアレックスを忘れられなくて、振り向いてくれない。じゃあ外見がアレックスになれば振り向いてくれるのでは・・。そんなわけのわからん純愛物語が挟まれたりするけど、もちろんそれじゃ終わらない。ホプキンスだし。それにしてもああやってテレビ電話に出られるってことは、思考を立体映像に変換できるのね。それと時間を飛び越えることができるのなら、病気になる前の自分の健康体転送すれば?でもそうすると今の自分がいなくなるか・・ああややこしい。見ていてびっくりするのは、かなりお金かかってるように見えること。お金かかってるじゃなくて、かかってるようにと言うのがビミョー。車とか必要もないのに変な未来車にしている。18年じゃそこまで変わらないと思うが。環境汚染、エネルギー枯渇を言いたいのか。ハデなカーチェイスでは、車をどんどんぶっ壊す。アレックスが運転する車は、霊柩車みたいな形。全体的に「ブレードランナー」を意識しているような。社長と対決するあたりでは「2001年宇宙の旅」風のチカチカシーンも。まあ何でもやってやれという貪欲さはいいが、土台になってるものが感じられないのがイタイ。何がきっかけでこういう世界になったのか、アメリカ以外はどうなのか、どういう思想が蔓延しているのか・・そういうのが欠けている。車の形を変えるとか、そういうのだけじゃだめなのよ。「ニューヨーク」「ブレード」「2001年」・・そのうち「ロボコップ」風味も。いやいいんですけどさ、寄せ集めでも。

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でもエステヴェスにあまり魅力が感じられないのはまずいな。たぶんファンにとっては活躍してくれてうれしい映画なんだろうけど、あまり興味のない者には、アレックスがどうなろうが知ったこっちゃないッ!若くて未熟なまんまのアレックスに対し、ジュリーの方は18年の間に美しさに磨きがかかり、キャリアも順調。ルッソは非常に美しく、堂々としている。背の高さにしろ、顔つきにしろ、エステヴェスとは釣り合いが取れない。エステヴェスには(ファンには悪いけど)終始小物感ありあり。そのぶんジャガーが奇妙な存在感出してる。演技がうまいわけではないが・・最強の唇持ってる。かなうのはアンジェリーナ・ジョリーしかいない!ヴァセンダックという名前は間違いだと思う。ドナルド・ダックでしょう!プライドが高く、クビになっても追い続ける。ミシュレットも別の追っ手差し向けるので、途中でかち合ったりする。ヴァセンダックは金目当てなので、アレックス本人のことは何とも思っちゃいない。事情が変化すれば態度を変える。頭もよく、クライマックスでのアレックスの捨て身の芝居にもうまく合わせる。ここはなかなかよかった。見てる方としては彼には死んで欲しくない。と言ってアレックスとの友情育んで欲しくもない。そこまで甘っちょろくなってはだめ。彼は彼のままでいて欲しい。まあラストはいちおうハッピーエンドなので、後味は悪くない。ただ、金持ちと底辺連中だけと言いつつ、ラストでは思いっきり一般市民が普通に歩いているので、ああ・・やっちまったなとがっくり。ミシュレット役ジョナサン・バンクスは冷たくてぬるっとした感じがよかった。血が通ってない・・みたいな。彼には社長を生き返らせる気なんてない。時間切れで社長の脳が死ねば・・自分が社長になれるチャンスだ!だからたぶんヴァセンダックの邪魔すると思うんだけど。他にはアレックスの逃亡助けるシスター役アマンダ・プラマーが強い印象残す。ジュリーを護衛するブーン役グランド・L・ブッシュは「THE VISITOR」でFBI捜査官やってた。アレックスのマネージャーか何かのブラッドは「Mr.ベビーシッター」のデヴィッド・ヨハンセン。出演者も個性的なの揃えてある。張りぼて感が漂うとは言え、お金かけて意欲的に作ってある。でもヒットしなかったようで、その点はお気の毒様でした。