フィアー・ドット・コム

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少し前までは「ザ・リング」がヒットしていたが、こちらはお客が10人ほど。えらい違いだ。私がこれを見に行く気になったのは「火山高」を見た時予告をやっていて、スティーブン・ドーフとナターシャ・マケルホーンが出てると知ったから。この二人が出ているのならそんなにひどい映画でもないかな・・と。この予想はまあまあ当たって、「リング」も「回路」も見てないのでそちらとの比較はできないが、けっこうおもしろかった。ポスターを見たら監督は「TATARI」の人。やっぱりね。クライマックスの特撮(素人にはCGだのVFXだの何が何やら区別がつかないのでこれからは特撮って書いておこうっと)に何となく共通点があるのよ。きっと同じスタッフを使っているんだと思う。それとサイトから聞こえてくる声も感じが似てる。まあプラットの部屋で医者とインターン達がテレビにうつっているのを見た時にすぐに「TATARI」じゃーと思ったんですけどね。それにしても「ホーンティング」と「TATARI」、「ザ・リング」と「フィアー・ドット・コム」。二番煎じと言ってはミもフタもないが、マイナーな方ばかりとる監督さん。好きだなー。ポスターもプレスも新聞の広告も「白い少女の恐怖」を前面に押し出しているけど、はっきり言ってあんまり怖くないのよね。プレスにも書いてあるけどフェデリコ・フェリーニの「悪魔の首飾り」に出てくる少女をイメージしているのは確か。でも見せ方が全然違う。ストレートすぎてあれを見て人が狂気に追い込まれるとはとても思えないわけ。クライマックスで目がパッと変わるところがちょっと怖いだけ。「モンキーボーン」のところでちょっと書いたけど「世にも怪奇な物語」の第3話に出てくる女の子は、テレンス・スタンプ扮する主人公にしか見えない死神みたいな存在。長い髪のせいでどんな顔をしているのかよくわからない。それがあるシーンでちらりと顔がうつる。その時の顔の気味悪さ、気持ち悪さときたらあなた・・。ボールをかかえいやいやをするように首を振るそのしぐさも本当に異常で、忘れることができない。この少女の欲しいのは首なんです。ひゃーこわ・・。それにくらべればこっちの少女なんて天使ですがな。この点はちょっと、いやかなり残念。逆にうれしかったのは珍しい人が出ていたこと。見ている時は全然気がつかなくて、エンドロールで名前を見てびっくり。

フィアー・ドット・コム2

まずウド・キアー。「サスペリア」とライオンのCMくらいしか見てないんだけど、若い頃はほっそりして目が大きくてきれいでした。もう一人がマイケル・サラザン。ジャクリーヌ・ビセットと長い間恋人関係にあった人。ひょろっと背が高くて、大きな目は垂れていて・・甘い二枚目も30年たって別人のようになっちゃったけど、貫禄はついたなー。ストーリーはねえ・・何というか出てくる人は刑事だったり保健省の調査員だったりするわけだが、全然そんな感じがしないのよ。特にテリーはマイクと一緒に捜査活動をしていて、本来の自分の仕事を全くしていないように見える。サイクスはマイクの相棒なんだろうけど、仕事してるの?って言いたくなるほど何もしないし、最後はあっさり殺されちゃう。プラットがマイクを撃った時には何で銃を持ってるの?と思ったけれど、あれってきっとサイクスの銃ね。全くサイクス、あんたがドジったおかげでマイクが死んじゃったじゃないのよ。こういうぼんくらタイプの刑事って「ナイトウォッチ」にも出ていたけど、本職の刑事さんが見たらいくら何でもそこまで無能じゃないぞ・・って怒るだろうな。さて舞台はニューヨークだけど、とてもそうは見えない。雨ばっかり降ってるし、どうして電気つけないの?って言いたくなるくらいどこも暗い。しかしどの映画見てもいつも思うんだけど、皆広くていいアパートに住んでいるなあ。ドーフ扮するマイク刑事は、「ドクター」と呼ばれる事件がFBIに移ってもあきらめきれずに一人で調査している。真面目だがさほど頭脳が鋭い方でもなく、従って解決の糸口も見つけられないでいるのだが、ぐうたらなサイクスではなく、テリーと出会ってからは頭も働き出す。二人で捜査している時、テリーが駐車違反の切符を切られてしまうと「何とかするから」と言ってその切符をしまう。じゃあまた・・と別れて歩き出してからマイクは心が残るのかちらりと後ろを振り返る。車に乗り込もうとしているテリーは全然気がつかない。このシーンが私にはすごく印象的。明らかにマイクは会ったばかりのテリーに引かれているのよね。それは美しい女性への興味ということもあるけど、それ以外の、一緒に仕事をしていて「はかどる」みたいな気持ち。サイクスだと「もうよせよ」としか言わなくて、一人で考えるより他ないんだけど、一緒に考え、歩き回ってくれる相棒ができたぞ・・みたいな。

フィアー・ドット・コム3

それと二人でビデオを見ていてあっちょっとやばいシーンだぞって時に「僕は後で見よう」と席をはずそうとするところ。ここも好き。いい人だ、マイクって。マケルホーンは目がギョロッとしていてきつい感じなんだけど、それを和らげているのが口元。笑うと白い歯がこぼれ、何ともすがすがしい。被害者のカレンはねえ、あんたいくら何でもあさはかすぎますって。「自分からワナに飛びこむカレンかな」(「古池や」風にどうぞ)だよ、全く。犯人のプラットはホント悪いヤツ。「私は痛みを感じない」なんて言って、足を撃たれた時には思いきり痛がっていたじゃないの。ああいう残酷な行為をして喜んでいるヤツに限って自分の痛みには弱いのよ。人を苦しめるためにはどんなことも平気でやるけど、自分のこととなるとからっきしこらえ性がない。最後の方は特撮オンパレードだけど、プラットが女性達に与えた苦痛にくらべればあんなもん罰としては軽すぎますがな。未来永劫解放されることのない絶え間ない苦痛、それが彼に与えられるべき罰ですってば。ここも特撮使いすぎてかえって恐怖感はうすれましたな。マイクが死んでしまったのが私としては大いに不満。ハッピーエンドにして欲しかったなー。被害者のある者は水で、ある者は交通事故、虫・・というように、その人が恐れているもので死に至るわけだが、マイクの場合は何なのかな。犯罪者の手にかかって(車に襲いかかる暴漢の幻覚を見ていたし)か、助けてあげられなかった被害者の怨念(エレベーターで出会った女性は被害者のジーニーだよね)によってか・・。結局最後はその通りプラットに撃たれて死んじゃうんだけど。エレベーターで女性が口紅を塗るのは一つの伏線なのね。一回目に見ていた時は気がつかなかったけど。テリーが見つけたジーニーの死体の腹から口紅が出てきて、それがプラットの居場所を見つけ出す手がかりとなる。テリーが口紅をプラットに見せるシーンも始めはわからなかった。暗すぎて手に持っている口紅が見えないのだ。画面が暗すぎるのもどうかと思う。彼女もサイトを見たのだから自分の恐れている何かにつきまとわれるはずなのだが、そこらへんははっきりしない。ラストシーン、電話がかかってくるが聞こえるのは雑音ばかり(ありゃ絶対霊界からマイクがかけてきたんですってば)。愛するマイクを失い、うつろな表情のテリー。そうか、彼女の恐れるものって「孤独」なのね。