ボーダー

ボーダー

アル・パチーノとロバート・デ・ニーロという二大スターの共演なのにシネパトス。うれしいやらさびしいやら。大劇場でかかって、しかも熱気ムンムンの超満員なら、映画業界も安泰なのにねえ・・って何のこっちゃ。映画の日、ゴールデンウィーク、土曜日ということで、行ってみたら行列ができてる。ごちゃごちゃで、前の人の頭で何も見えなかったらいやだなあ・・と尻込みしかけたけど、でも勇気をふりしぼって(?)並びましたよ。前にも書いたけど講習で東京へ行くことになったので、暇な時に何か見る映画はないかネットで捜したわけ。そしたらたまたまこれをやっていたわけ。しかもシネパトス。新しくできた、行ったことのない、こじゃれたシネコンならその気になれたかどうか。いまだに座席指定制は嫌い。敷居が高い。その点パトスはねえ・・。懐かしいなあ。約2年ぶり。相変わらず私好みの映画やってくれてる。ありがとうシネパトス。並んでくれている人もありがとう。そうだよねえパチーノとデ・ニーロなら見ないわけにはいきませんてば。それにしても新橋文化はJRの下で、パトスは地下鉄の上かぁ・・。田舎は映画館と鉄道は離れているしなあ・・行くの大変なのよ。今回はシネパトス2で、向かいの1は「クロッシング」。向こうもお客がどんどん入ってる。「ボーダー」は結局満員にはならなかった。ロビーには二人の等身大のパネルが・・。パチーノの168センチはわかるけど、デ・ニーロの174センチは・・あら、意外と小さいのねという感じ。パンフは次回上映の「ザ・エッグ~ロマノフの秘宝を狙え~」と一緒。「ザ・エッグ~ロマノフスーパーでの特売を狙え~」←意味なし。そう言えば「ファイナル・レジェンド 呪われたソロモン」でヴァン・ダムが卵盗んでたっけ。まあ「ザ・エッグ」の方は見ることはできませんよ。5月15日からだから。田舎でもやらないだろうなあ・・。二本立てでやってくれればいいのにシネパトス・・ってそりゃムリか。で、二作合同のパンフレットだから、どちらもあまり詳しいことは書いてなくて。折りたたみプレスシート程度の簡単ななかみ。苦労して逮捕しても裁判で無罪になってしまい、シャバに舞い戻る凶悪犯達。そいつらが何者かによって次々と殺される。手際がよく、証拠を残さず、犠牲者達は何の抵抗もしていない。

ボーダー2

ダニのような連中とは言え、殺人は殺人、犯人を挙げなければならない。この映画は少し前「ハリウッド・エクスプレス」で見た程度。二人が刑事で、どっちかが闇の処刑人になってる・・さあ、どっちでしょう・・みたいな印象。どちらが道を踏みはずしているのかはギリギリまでわからず、それがサスペンスを盛り上げるんだろうと思ってた。そしたら・・いきなりデ・ニーロのタークがカメラに向かって犯行を告白・・みたいな感じで、アレレ・・となる。最初からばらしちゃうの?査察官みたいな連中がそれ(ビデオテープ?)見てるし、もう逮捕されちゃった後?以後は回想シーン?どことなく「88ミニッツ」や「インソムニア」を思わせるムードがある。後でパンフを見たら「88ミニッツ」と同じ監督だった。証拠の捏造は「インソムニア」っぽい。オープニングは二人してガシガシ銃を撃って、何となくマーベルコミックみたいなムード。荒っぽい感じ。冒頭から二人が並んで出ていて、見る側としてはウヒョホな状態。NYPDのベテラン刑事、あぶらが乗っていて銃の腕前も健在、ツーと言えばカーのコンビ。ただこの仕事、長くやってるとどうしてもたまってくるものがある。正義では裁けないもの、理想とはほど遠い世界。それでもやっていかなくちゃならない。ストレスはたまり、むなしさはつのる。そしてある時道を踏みはずす。どちらかと言うとタークの方が自分を抑えきれず、もめ事を起こす。ルースター(パチーノ)はなだめ役だが、時々彼はターク以上に過激なところを見せる。するとタークの過激さがうすまって見えてしまう。そうやってルースターはその場をうまくおさめてしまうのだ。そのタイミングがうまい。つまりパチーノの方が見せ場が多い。製作は2007年だが、二人ともとうに60を過ぎ、老いが目立つ。パチーノはシワだらけだし、デ・ニーロは顔の線が丸みをおびてきたせいでシャープさがない。徹頭徹尾タークが怪しく描かれるが、どう見てもそこらのオッサンなので、怖さは今いち。もう10年か20年前の二人なら道を踏みはずした刑事のギラギラ感がたまらないほど出まくっただろう。60過ぎのオッサンじゃ階段踏みはずすのがオチ。こんな年寄りがまだ刑事やってるなんて、NYPDはよっぽど人手不足なんだろう。停年はいつ?70歳?上司ヒギンス役ブライアン・デネヒーも70近い(撮影当時)。

ボーダー3

「もう何年やってる、110年か?」「いや、120年だ」なんていう気のきいたセリフで笑わせてくれる。たいていのことは笑い飛ばせるくらいこの世界にどっぷり浸かっている。でも今回の事件は笑い飛ばせることじゃない。最初は異常者の仕業に思えたが、そのうち警官の仕業ではないのか・・という考えが出てくる。もしそうならただじゃすまないし、現実にタークが疑われ始める。この映画はうまく物事の片面だけを見せて筋を運ぶ。途中でタークが「ルースターを卒業した」とか言うので、何らかの理由でルースターは死んでいるのだろうな・・と予想がつく。もっと言えばタークも死んでるかも。だってしゃべってるのテープの中だし。ラストでまだ生きているってわかるけど。まあそうやって見ている者をうまくだまして最後まで持っていく。映画はカットシーンでもあるのか、だんだん作りが粗っぽくなる。ターク、ルースターのベテランコンビに対し、後輩のライリー(ドニー・ウォールバーグ)、ぺレズ(ジョン・レグイザモ)コンビが出てくる。タークとぺレズは仲が悪い(自分では気づいていないが二人の性格は似ている。だからケンカするのだ)。あるシーンからぺレズの顔には傷ができているが、理由は説明されたっけ?誰かの名前が出てきても誰だっけ?となったり、ちょっと残念な出来だ。ある場面は緻密なのにある場面は粗雑。みんないい演技しているのに(某アンチャンは除く)。私自身はウォールバーグが出ていたのがうれしかった。「シックス・センス」や「ドリームキャッチャー」のような特異な役をやることもあるが、こういうどこと言って特徴のないキャラの彼も好きだ。さえない容貌でどこにでもいるタイプ。でも目が行ってしまう。明らかにレグイザモの方があれこれ目立つことしてるのにね。他に科学捜査官カレン役でカーラ・グギーノ。タークの恋人だがぺレズともつき合っているようだ。ぺレズが夜電話を受けるシーンがあるが、隣りに女性が寝ている。その時は奥さん?・・と思ったが、後でカレンかも・・と。もう一度見る機会があったら確認してみよう。そう・・私としたことが一回で出てきたのだ。お客パラパラなら二回見るのも気が楽だが、今日みたいにこんでいる時は遠慮しようか・・なんて。何て控えめなんでしょ私って・・。いや真面目な話これって二回見るように作られているのよ。

ボーダー4

一回目は作り手にまんまと乗せられて見る。目に見えていることを信じて見る。でも結末を知ると、これって別の見方しなきゃいけないんだ・・とわかるわけ。もう一度見て確かめたくなる。本当に○○は犯人で、××は見せかけの存在なのか。本当に××はホニャララをしていないのか。他の出演者では、罪を帳消しにしてもらうためおとりになって、危うく命を落としそうになるが、何とか助かる弁護士ジェシカ役でトリルビー・グローヴァー。仕事もできて男関係も発展家(しかも刺激を好む傾向あり)のカレンとは対照的で、ういういしくかわいらしいのがよかった。ターク達が何とかぶち込もうと狙い続ける麻薬商人スパイダー役はカーティス・ジャクソン。例によってヒップホップ界のカリスマなのだそうだ。ヒップホップ界はカリスマがうじゃうじゃいるらしい。いまだにこういうの出してくるの・・そろそろやめません?そんなに俳優不足しているの?スーパースターだか何だか知らんが、ただの演技へたなアンチャンでしかない。最後の方はかけ足だ。どんでん返し・・「人生を破壊するほどの驚愕の真実」・・まあ何とでも宣伝してください。いくら驚愕の真実でも説明不足、消化不良だ。「濃い映像」・・まあ確かに濃いです。例によってパチーノは演説する。全部しゃべり終えるまで死なない。死に顔は・・見事な演技と言うよりは・・本当にあんな死に顔になるんだろうな・・シワだらけだし。一つ気になったのは犯行現場にいつも残されるメモ用紙に書かれた詩。たった一つの手がかりだけど筆跡鑑定とかそういうのやってた?いつまでたっても犯人を挙げられず、疑惑の目で見られるタークとルースターだけど、筆跡はくらべられたの?・・と言うか詩を書く時、別に筆跡ごまかしていなかったでしょ?オープニングは(前にも書いたけど)銃をガシガシ撃って、音楽もガシガシ鳴って、名前の出方も・・ちょいと「モーテル」風に字をたらーっと垂らしてみたら?みたいな感じで(「モーテル」見た人はわかるよね!)。でもエンドロールでは反対に心の休まるようないいメロディーで・・サントラ欲しいなあ。やっぱりねえエンドロールでの音楽って大事なのよ。「シャッターアイランド」の時みたいな変な歌だととたんにがくっとくる。何だよ~変な歌い方だなあ具合でも悪いのかよ~。てなわけで二人の名優の最後の・・もとい、鬼籍の狂演(違うって!)堪能しました。