ブラッド

ブラッド

やっぱり見ちゃうんですのこういうの。渋谷でやってたけど見逃して、あきらめかけていたんだけどやってくれてるところがあって・・。二週目からは夜なので一週目の終わりに滑り込みセーフ。お客さん入ってないと思うけど、でもやってくれてありがとう!お客は四人だったけど、そのうちの一人は半分以上経過してから入ってきたな、何で?時間間違えたのかな。終わって出てきた時、ちょうど他のスクリーンでも「HERO」が終わったらしく、オバちゃん達が10人くらいゾロゾロボロボロ(オバちゃん達の歩き方ってこんな感じでしょ引きずるような・・)出てきた。まあレディス・デーだからね。まあ10人てことはなくてもっと入っているんだろうけどさ、「ブラッド」なんかと違って。これを見にくるのはルーシー・リューファンの男性とかさ。でも私の目当てはジェームズ・ダーシー。「エクソシスト・ビギニング」でのハンサムぶりが忘れられなくて。あの後「ポアロ」シリーズの一つで見かけたけど、扱いが軽くてもったいないと言うか。背が高くて甘さと気品があって、現代劇より古典の方が似合いそう。車より馬、電気よりランプって感じ?チラシも見たけど小さな写真かろうじて載ってる程度。よーく見ないと気づかないほど。だからきっと端役だろうと・・。でも見てみたらそうでもなくて。ルーシー扮するヒロイン、セイディーが戦う吸血鬼一味のボス、ビショップ役。悪役なのよ。ストーリーは・・新聞記者セイディーがふとしたことから事件に巻き込まれる。吸血鬼達に殺されるのだが、自分も吸血鬼になって生き返る。復讐しようと一味を次々に倒していく。一方やはり一味に娘を殺された刑事ローリンズも、捜査しているうちにセイディーに近づいていく。セイディーは、ビショップを殺すのに成功したらその後自分を殺してくれ・・とローリンズに頼む。ローリンズ役はマイケル・チクリス。「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」が公開されたばかり。他にカーラ・グギーノ、マリリン・マンソン、マコ。わりと充実したキャストだと思う。でもストーリーや映像は・・。セイディーがビショップ達に目をつけられたのは彼女が書いた記事のせい。あるカルト集団について書いたのだが、その時の取材相手がトリシアという少女。彼女も友人も、セイディーの同僚イーサンもみんなビショップ達に殺されてしまう。理由は自分達の秘密がばれそうになったから。

ブラッド2

記事を書いたセイディー自身も何か嗅ぎつけているに違いない・・と、彼女を襲うわけ。実際には何も嗅ぎつけていないんですけどね。読者に受ける記事を書いただけ。で、ストーリーがまずいのはこういうあやふやな理由でヒロインが殺されてしまうこと。ビショップ達のこともあいまい。存在を知られたくないわりにはあんまりこそこそしていない。彼らの歴史・背景がわからない。なぜ吸血鬼になったのか、どうやって暮らしているのか(けっこう金持ち)。映像もまずい。パッパッチカチカやたらフラッシュたいてる(?)からこちとら目がくらんで何も見えませんの。何うつってるのかわからないから怖くないんです。テクニックに凝ってると言うより何うつってるか見せたくないんだと思う。意地悪しているんだと思う。しかも・・何となく汚らしいんだよな。幼児が食べ散らかしているみたいな。ケチャップやミートソースが口のまわり、あご、胸に垂れてもうわやんわやんになってると言うか。こういう映画に普通ある美学ってもんが全くない。何やら血みどろの食事シーンも園児のお昼ご飯どきと変わらない。手づかみはやめてね~口に入れてね~ほらこぼさない~床に食べさせてどうするの~あーんなすりつけちゃだめ~。じっくり見せるということがなくすぐ切り替わる。反応遅いこちとらとしてはえッ何がうつってたの?ってなもんよ。これじゃ動体視力テストじゃん。カーラもマコもあんまり見せ場ない。特にマコは実写映画はこれが遺作ってことになるらしい。そのわりにはひどい映画選んじゃったね。でも・・だからこそいいんだけどさ。名作しか出てませんなんてのより、名作にも出たけどくだらない映画にもたくさん出ましたよなんていうのの方が人間らしくていいじゃん。それにしてももっと長生きして欲しかったな残念。マコ扮するポーはビショップの召使みたいだけど、彼も吸血鬼なのかな。他に車椅子の老人も出てくるけど彼は?とにかくはっきりしないことばかり。さて、生き返ったセイディー・・もちろん吸血鬼になりかけている。アーチュロという謎の男に助けられ、復讐に乗り出す。アーチュロがこれから訓練するとか言うので、そういうシーン(カンフーの修行とか)次に出てくるかと思ったら・・なーんも出てきませんでしたとさ。安直な展開だと思う一方ホッとしたのも確か。だってリューがアクションできるのもうわかってるし、今更見せられたってねえ。

ブラッド3

結局銀のボウガンで相手倒すだけ。格闘シーンほとんどなし。このアーチュロの存在もあいまい。ビショップに追い出されたってことらしい。てことはセイディーがビショップ倒したら彼がまたボスに復帰するわけ?権力闘争に利用されているだけなのに、このことに関してはセイディーは何とも思っていないみたい。ボスが誰だろうと関係なし、ただ自分をこんな体にしたビショップ一味を倒したい、その後死にたい・・それだけ。ローリンズは最初勘違いする。セイディーがトリシア殺した犯人だと思っている。でも誤解だってわかって・・それでも吸血鬼の存在は信じられない。でもセイディーは撃たれても死なないし、信じる他なくなって・・そのうち心が通い合う。でもよくあるラブシーン突入ってことにはならない。「フォーガットン」風味。あっちは母親としての立場があったけど、こっちは父親としての立場がある。それとチクリスじゃラブシーン似合わないし・・。ローリンズはそんな状態で捜査にかかわってもらっちゃ困る、休んでいろ・・と同僚に何度も言われる。娘を殺した犯人を突きとめたいという気持ちはわかるし、同情もするけど、彼がいると現場は混乱するだけ。はっきり言って迷惑。でもローリンズは全然聞かない。それほどまでに娘を愛していたのか・・と最初は思うけど、そのうちに違うのだとわかってくる。彼は娘とうまくいっていなかった。娘は父親を嫌っていた。トリシアはただのかわいい娘ではなかった。カルト集団にかかわっていたことでもわかるが・・。いちおうパンフと言うかプレスみたいなのが売っていて、形がちょっと変形で、飛び出す絵本みたいで、工夫をこらしてある。映画を見ていてもストーリーあいまいだけど、わりと親切に詳しく説明してくれている。それでもよくわからないんだけどさ。リューは脚本読んだとたんヒロインのキャラにほれ込んだらしい。また作り手はありきたりのヴァンパイア映画にするつもりはなかったようだ。監督はどうやら吸血鬼をカルト集団としてとらえているようだ。だから牙もニンニクもなし。それでいて鏡にうつらないとか武器に銀を使うなどの設定は残す。別に残さんでも・・。カルト集団と言っても何がどうなのか結局はあいまい。要するに誰かを殺して血をすすり、死体は捨てる・・それだけ。別に吸血鬼でなくてもそういう事件は異常者によってひんぱんに起こっているのでは?

ブラッド4

まあとにかくルーシー・リューが怪しいお色気ふりまく吸血鬼映画だと思って見にくると「あれ?」となるわけ。私をこんな体にしてしまったあいつらに復讐してやるぅ・・フィルム・ノワール風でいきたいらしい。プレスには「スレンダー・ボディをセクシーに躍動させ」とか「全裸逆さ吊り」に「挑戦」とか、まあいろいろ書いてあって、何とかお客の気を引こうと涙ぐましい努力をしている。「ありきたりのヴァンパイア映画」や「フィルム・ノワール」ではお客呼べないからルーシー・リューの魅力に頼るわけ。でもスレンダー・ボディって要するに体つきが貧弱ってことだし、全裸だってほとんどは別の人がやってるんでしょ?一瞬それらしきシーンもあったようななかったような。でもこちとらリューのヌードなんてどうでもいいし・・。でもってここまで書いてきたことでもわかるけど、とにかくあいまいだしあやふやだしいいかげんだし。作り手の意図がどこにあるにせよそれはうまくいってないし、俳優達のいい演技も空回りしてるし、料金ぶん満足できるっていう映画ではないの。何じゃこりゃ映画なのよ。・・でも・・私には・・ところどころ心に残るもののある・・と言うより心に引っかかるもののある映画でしたな。普通引っかかると言うと欠点の方だけど、今回はいい意味で。心のどこかにかすかに残る。思い出す度にじーんと・・とかそういうのではなくね、かすかに。セイディーは若者に受けそうな記事を書こうとカルト集団を取材したりする。それが新聞のトップを飾り、喜んでいるようなごく普通の女性。吸血鬼になってしまっても自分が生きるために他人の命を奪うことにためらいがある。罪のない者を殺したくない。でもアーチュロはこともなげに言う。「罪を犯していない人間なんていない」この言葉でアーチュロがどんな人間(?)かわかる。セイディーを助けてくれたけど、彼は決して善の存在ではない。残念なことにこのアーチュロは後半全く出てこない。ビショップの生死(?)は彼にとって重大な関心事のはずだが。それはともかくセイディーのこういう苦悩が一つの見どころなわけ。イヴ(カーラ・グギーノ)やビショップ達は何も悩んだりしない。どれくらい生きてるのか不明だが、人間を犠牲にしていくらでも生きることができる。いつまでも若いまま。心はおごり高ぶっている。死ねないことの苦しみや悲しみはもう通り過ぎちゃっている。

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何事にも無感動。セイディーが復讐に現われても何とも思わない。そこらへんカーラはうまく演じていた。アーチュロはイヴにだまされるな・・と忠告したけど、どう見たってアーチュロよりイヴの方が真実語っている。アーチュロは自分のためにセイディー利用しているだけ。ビショップ倒してもアーチュロが復帰するだけで、人間を殺すのがやむわけではない。でもこのこと映画はただすーっと通り過ぎちゃう。あまりにも長く生きてるせいで生きる意味も見出せなくなってる。命を大事にしない。死ぬこと何とも思わない。イヴのそういうところがまず私の心に引っかかった。さて、殺され捨てられ発見され、遺体保管所に送られたセイディー。そこで目覚める。自分がどうなったのかまだよく理解できない。姿がガラスにうつらないのはなぜ?フラフラと外へさまよい出る(「バイオハザード」風味)。目がかすんでよく見えない。そこらの店からサングラスをくすねる。太陽光線が苦手ってことか。ひとりぼっちで(「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」のアンナ風味)夜はホームレスの収容所みたいなところへ泊まる。今にも死にそうな老人見つけて殺し、血をすするがなぜか吐いてしまう。プレスによれば人を殺した嫌悪感から吐いてしまったらしい。生きる希望もなくなって、投身自殺をはかるが・・でも死ねない。人を殺してまで生きたいとは思わない。ひと思いに死んでしまいたい。でも生き返ってしまう。その後ヒッチハイカーの青年を殺すんだけど、その時彼女は自分が変化したことに気づく。人を殺しても全く罪悪感を感じない。それどころか解放感さえ味わう。今まで自分をしばっていた人間としての常識や抑制がなくなっている。こういう変化は教育上よろしくないが、そういう考え方ってできると思う。人間と吸血鬼とでは外見は似ていてもなかみは全く別。片方に通用するものがもう片方にも通用するとは限らない。人間が人間を殺したら犯罪だけど、吸血鬼が人間殺しても犯罪とは言えない。人間が生きるために動物殺して食べるのと同じ。こういうヒロインにリューを配したのはよかったと思う。小柄(160センチ)でやせていて色が黒くてあんまり美人じゃない。でも体はよく動くし、表情は乏しいものの吸血鬼になってからはその方がぴったりだ。最初の方で仕事がうまくいってニコニコしているところはかわいいし、一味につかまって恐怖におののいているところもいい。

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生き返ってとまどっているところ、目がおかしくてまともに開けてられないとか手がふるえるとかの演技もいい。そしてもちろん復讐に取りかかってからのクールさもね。金髪でムッチムチの白人女性じゃこうはいきませんて。ムッチムチとクールは両立しにくい。まあいくつか残念な部分ももちろんある。例えば背が低いから少しでも大きく見せようというのか、上げ底のサンダルはいてたり、歩く度にごとんごとん音のするようないかつい靴はいてたり。人間だった時ならそれでもいいけど、吸血鬼になってからは・・復讐に乗り出してからは・・まずいんじゃないの?家に忍び込むんだから音のしないペッタンコ靴でなきゃ。歩く度にごとんごとんじゃ、それじゃ忍び込んだことにならないってば!それと朝起きてオシッコというのも・・吸血鬼もトイレ行くんですか?初耳だな。ローリンズ役のチクリスも適役。「ファンタスティック・フォー」のDVDのコメンタリー聞くと、とにかく陽気でおしゃべりで出たがりという感じ。ヨアンなんかほとんどしゃべってないの。おっさんが一人でしゃべりまくっているから。今回は娘の死に苦悩する平凡な父親の役。後悔で頭はいっぱいだけど、かと言ってトリシアがあのまま生きていればますます憎み合っていたに違いないの。途中で死んじゃったから愛情がつのるのよ。ところが・・ビショップを倒そうと忍び込んだらそこにいたのはトリシア。生きていたのかよかったよかった・・と、死体がすでに発見され、自分のこの目で見ているはずなのにローリンズは狂喜する。おかしい、ありえないとわかっているのに目の前のこと受け入れちゃう。人間は事実ではなく、自分の信じたいものを信じるのだ!もちろんセイディーはトリシアが吸血鬼だってわかってる。トリシアは今ではビショップの手先。情けは無用。で、トリシアはかわいそうな娘から一変、本性をあらわす。あんたのことなんか大嫌いだった、ビショップが私を解放してくれた、今では彼が私の父であり兄であり恋人なのよ・・と。まあここらへんはうまくできていたな。本性あらわすというと普通牙がのびたり目が赤くなったりするけど、そういうのじゃなくて、一見清純そうなのが実は淫乱・・というのがね。まあとにかくあれこれ(逆さに吊されて血を抜かれるとか)あって、ビショップを倒し、セイディーはローリンズに無理に頼んで殺してもらう。

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めでたく死ぬけど、ラスト、死体保管所でまたまた生き返る。何だよーこれじゃいつまでたっても終わらないじゃん・・。出演は他にホルト・マッキャラニー・・と言っても誰も知らないと思うが、「ビロウ」のルーミス役の人。目に特徴があって、出てきたとたん「ん?誰だっけこの人・・」と気になる。この映画ではヘアスタイルのせいで誰だか思い出せなかった。後でネットで調べてルーミスだってわかったのよ。演じているルークとかいうキャラもあいまい。マリリン・マンソンはノーメイクだし、ごく普通の人間の役。でもどことなく変わっていて、ただ者には見えない。ジェームズ・ダーシーは「エクソシスト・ビギニング」の頃にくらべると少しやせたような・・。あの時は神父服のせいかがっちりしてたくましい感じ。髪が黒々としていてクリストファー・リーブみたいだった。でも今回は少し細くなってアンソニー・パーキンス風味。今の俳優さんでパーキンスのような繊細さ、純粋さ出せる人ってあまりいないと思う。でもダーシーなら出せる。今回は悪役ということもあって邪悪さ、高慢さを出している。うっすらとヒゲも生えてちょっと汚らしい。私から見るとあんまり適役とも思えない。吸血鬼でしかもボスならもうちょっと・・一分のスキもない美しさ、神秘さ、高貴さをたたえていなくちゃ。ダーシーならそれが出せる。今回だって出してた。でも作り手にそれを前に押し出そうという気がなかった。別のもの出そうとしていた(口のまわりわやんわやんとか、わざとらしくはだけた胸とか)。重い歴史(死ねずに生き続けるという)背負う貴公子吸血鬼として描かれていればロマンチックだったのにぃ・・残念。てなわけで映画の出来はすっげー悪くて、それなのに何でこんなに長い感想書いちゃったのか自分でもわけわからんけど、でもまあ見てよかった。何たってルーシー・リューは主演ということですっごくがんばっていたし。条件が悪い(背が低い、肉づき貧弱、美人じゃない、色は黒くて目は寄り目、若くない、白人じゃない)にもかかわらずがんばっているのを見りゃ、そりゃあねえ・・応援してあげたくなりますってば。「2」も作れそうな思わせぶりなラストだけど(もちろん今度はアーチュロと戦うんでしょうなぁ・・)、アメリカではごく一部での公開。ヒットしなかったから無理かな・・。