ブラインドマン その調律は暗殺の調べ

ブラインドマン その調律は暗殺の調べ

この映画のことは何も知らない。いちおうレイトショーか何かで劇場公開されたようだ。盲人が殺し屋という設定はちょっと無理があるし、おフランスだし、ベッソンだしで、あんまり大した出来ではあるまい。知ってる出演者はランベール・ウィルソンだけだし。まあ見る気になったのは彼が出ているからなんだけどさ。それにしてもこういう題名いつまで続けるのかね。見る気なくすんですけど。ウィルソンは時々見かけるけど・・「キャットウーマン」とか「バビロンA.D.」とか・・何かいつもトホホな役で。怖い女・・シャロン・ストーンとかシャーロット・ランプリングとか・・に足蹴にされているような感じで。もっと重みのある役見てみたいのに。そういう点では今回はよかったけど。冒頭ロワイエという女性が殺される。文化コンサルタントということだが、後で出てくる女警察署長は娼婦と言っていて。殺した後で切り刻むのはなぜかな。サイコパスの仕業に見せかけるため?このあたりでは血みどろ残虐映画路線かな・・「クリムゾン・リバー」とか「シックス・パック」とか・・と思ったけど。次にコンスタンタンという富豪が殺される。ロワイエは、元カレのワルナスにつきまとわれていた。ワルナスは精神科にかかっていたし、今もクスリをやっていて怪しいが、警部のラサール(ジャック・ガンブラン)は、プロの殺し屋の仕業と直感する。ロワイエの浮気を疑ったワルナスは、彼女が男といる写真をとってあった。その中に盲目のピアノ調律師ナルヴィク(ウィルソン)もうつっていて。コンスタンタンの家にもピアノはあったが、こちらはナルヴィクも関わっていないようで。コンスタンタンとロワイエを殺したのは彼だが、手口とか変えて、足がつかないようにしているのか。彼が事前の準備(車に爆薬仕かけるとか)をするところはうつらない。後でメールで指令を受けているのはわかるが、助手もなしに一人で準備し、実行し、証拠も残さず立ち去るというのは・・いくら映画でもうそっぽすぎる。指示がメールというのも安直すぎる(パソコンに残したままだし)。その点「スパイ大作戦」はちゃんとしてたよな。必ずテープとか始末してたし。

ブラインドマン その調律は暗殺の調べ2

ラサールは二年ほど前、車を運転していて事故を起こし、妻を死なせてしまった。それ以来鬱気味で、深夜に車を暴走させるなど、自殺願望がある。ガンブランは知らない人。目がギョロッとしていて、目の間が狭く、鼻が大きい。何となくネズミっぽい。「謎の円盤UFO」のドクター・ジャクソン役ヴラデク・シェイバルのような取っつきにくさ。それにティム・ロスをミックスし、雰囲気を和らげた感じ。タバコばっかり吸ってるのは、時代遅れな感じ。何かあるとタバコを取り出してくわえ、火をつけて目をすがめ、フーッと煙を吐き出す。こういうのがカッコよかったのは70年代くらいまでなんじゃないの?アラン・ドロンとか。別に自殺なんぞしなくても、そのうち肺ガン、喉頭ガン、咽頭ガンなど、嫌でも宣告されるぞ。彼を心配してるのが警部補のエロイーズ(ラファエル・アゴゲ)。ラサールが好きなのだが、彼の心に入り込む余地はなし。せいぜい、いい香りの香水つけて、気づいてくれるの待ってる。アゴゲも知らない人。たいていのおフランス女優はおしゃべりですべてが大げさで気まぐれで。でなかったらタバコくゆらし、ワイングラスもてあそびアンニュイムード。エロイーズは背が高くほっそりしている。さっぱりとした髪型、色が白く化粧っ気なし。知的で清潔感が漂う。言われたことはきちんとやり、いつも控えめ。ヴィッテルかエビアンか・・シンプルで透明な感じ。一度だけラサールにキスをする。彼は手錠をはめられていて抵抗できないからチャンス・・それだけ。クビを覚悟で彼に協力する。さて、ラサールはナルヴィクに目をつけたものの、証拠はないし動機も不明。署長はワルナスが犯人と決めつけ、それで片づけようとしている。たぶん彼女は過去に何度もラサールの直感を信じて苦い思いをさせられたんだと思う。妻をなくし、落ち込んでいる彼に同情し、味方になってあげようと思ったんだと思う。でも・・早く妻の元へ行きたい・・なんて考えてる男はろくなことはしない。たぶん暴走し、その後始末は大変だったことだろう。さすがの彼女もうんざりし、彼の応援ではなく制御に回ることにしたのだ。

ブラインドマン その調律は暗殺の調べ3

だから冷たい態度を取るけど、それでも心のどこかでは彼のこと見捨てることもできず・・衝突する警視とラサールの間をとりなしたり・・いい人なんだと思う。でも・・ワルナスは無実とラサールが言ってるのに無視するのは・・。「恋人を作りなさい」と忠告し、そこがいかにもおフランスだが、それで一件落着されてもなあ。犯人にされた方はたまったもんじゃないよなあ、ちゃんと調べてくれよ~ってなもんよ。ラサールにはアレックスという息子がいる。友達を連れて訪ねてくれたのはいいが、どうもこのドミニクと息子は恋人どうしらしい。あちゃ~息子はゲイだったのか。もちろん息子が幸せならば口を出すべきことじゃないが、このドミニクが生意気なやつで、しゃくにさわるったらない。警察が横暴だの何だのとぬかす。警察が存在しているおかげでおまえらは安心して暮らせるというのに!アレックスがドミニクの機嫌取るのも気に食わない。でもまあ・・アレックスは父親思いのかわいいコだったな。三人目の被害者は退役軍人のソルビエ。もうこの頃には殺された三人が、武器の密輸に関係していたことがわかってる。ナルヴィクも、調べてみたら本人はすでに死亡。アントンという男がナルヴィクになりすましているらしい。署長には上・・国防省・・からこれ以上ラサールを動き回らせるなとストップがかかる。アントンは国の任務で行動しているのだから・・。こういう展開ってよくある。何か事件が起こり、警察が捜査していると、上の方から説明もなしにストップがかかる。これ以上関わるとためにならんぞ、手を引け。でも、はいそうですかと引っ込む警官はいない。上が何だ、圧力が何だ、こっちだって意地がある、やめてたまるか・・と続ける。すると今度はその警官が何やら濡れ衣を着せられて、追われる身となるのだ。困ったことにそういう流れになる過程に、多くの場合説得力がない。今回だって、表沙汰にしたくないのなら、アントンにあんなハデな方法は取らせないはずで。事故に見せかけるとか、死体を隠すとか、とにかく目立たない方法でやるはずで。死体を切り刻むとか、チャリティ会場で爆殺とか、そんなことしたのでは警察が動かないはずがない。

ブラインドマン その調律は暗殺の調べ4

また、ラサールだけ担当からはずせ、始末しろとなるのもおかしい。ラサールはだめだけど、エロイーズが引き継ぐのは問題なしってか?ラサール自身も、アントンに目をつけたにしては尾行も何もしていない。尾行していれば・・第三の殺人の現場に出くわしたはず。まあ別にいいんですけどさ。緻密さとか説得力とか、期待する方が間違ってる。今作はガンブラン、ウィルソン、アゴゲの三人がとてもよかったから、その点では大満足。結局・・アントンは某大佐の命令で動いていたらしい。元軍人で、戦地で失明。自分は無用の存在になった・・と落ち込んでいたが、大佐に拾われ、暗殺者として働くことに。暗殺と言っても、標的はテロリストやその協力者。盲目の自分でも国の役に立てる・・そう信じ、疑うこともなかった。ところが・・ラサールの見るところ、大佐や連中は武器の密輸に絡んでる。四人目のハッカニを暗殺したとたん、アントンは大佐に始末されるだろう。すでに近くには狙撃手がスタンバイしているが、アントンは(目が見えないから)気づいていない。ラサールとアントンには共通点がある。かたや妻をなくし、かたや戦友を失い、一人生き残った。もっともアントンの戦友達の死は大佐の仕業だったのだが。二人とも死に場所を求めてウロウロしている。二人の間には友情とも連帯感ともつかぬ奇妙な感情が芽生えている。アントンの方はもう生への執着心はないから、わざとラサールに撃たれ、死ぬ。ラサールの方は、やっとエロイーズへ心が動き始めている。死より生へ傾きつつある。この先二人がどうなるのか不明だが、ラストには希望がほの見える。武器密輸の悪事は大佐一人がやっていたわけじゃなし、他にも仲間はいるはずだが、ま、そんなことはどうでもいいとばかりに映画は終わる。ラサールの飼い犬ラウルは、息抜き的存在。バカ犬っぽいし、人をうかがうようなところもあるし、なぜかアントンにすり寄ってきたり。いろんな表情、しぐさを見せ、とてもかわいい。後半は出てこなくなるけど。あと、女性が数回意味もなく全裸で出てくる。サービスのつもりか?結局ピアノの調律師という設定は、あまり意味がなかったな。