ブラック・ダリア

ブラック・ダリア

公開されてからだいぶたった平日のシネコン、お客は10人ほど。監督がブライアン・デ・パルマで、ショッキングな内容。でもそのわりにはアメリカでも日本でも客足は今いちなのでは?原作はまだ読んでいない。かなり複雑そうだし、映画も一度見て理解できるなんて思っていない。わからなきゃわからないでいいや・・という感じ。私のお目当てはアーロン・エッカートとミア・カーシュナー。アーロンは「サンキュー・スモーキング」も公開中だし、これを機会に認知度がアップして欲しい。ミアは「エキゾチカ」で知られているらしいが私は見たことなくて、「ザ・クロウ」だけ。とにかく目が印象的な人で、「ザ・クロウ」の時もやたらクローズアップされていて、私はその度にキーウィーフルーツを連想したものだ。「ブラック」を見たお客の印象に残るのは彼女の悲しそうな目と、スカーレット・ヨハンソンのぽってりした唇だけなのでは?今回はデ・パルマらしさはさほど強烈とも思わない。被害者エリザベス・ショートは黒ずくめの服装をし、映画「ブルー・ダリア(青い戦慄)」をもじってブラック・ダリアと呼ばれていたらしい。「青い戦慄」はWOWOWでもやったので私も見たことがある。アラン・ラッドとヴェロニカ・レイクの美男美女カップルによるサスペンスもの。別にどうということはないが、わりと楽しめる。「ブラック」の主演はジョシュ・ハートネット。彼扮するバッキーが冷静なアイス、アーロン扮する熱血漢リーがファイアー。対照的な性格の特捜刑事コンビが、むごたらしい殺人事件を解決すべく奔走するのかと思っていたら・・。何か違う。ボクシングの試合。「ブロークン・アロー」みたいな感じで、若いバッキーはリーにいちおう負ける。実際は自分の父親を施設に入れるお金を稼ぐためわざと負けたのだ。バッキーは非情になれない性格。真面目で義理堅く人にだまされやすい。ヨハンソン扮するケイに引かれつつ、リーに義理立てして恋心を押さえつける。恋心はともかく、お人好しでだまされやすいのは「ブロークン」の時のクリスチャン・スレイターと同じ。リーは同じくジョン・トラボルタ思い出させる。双方似ているので展開は予想がつく。信じていたのに裏切られる。でも最後に生き残るのは若い方。善の方。ジョシュは1940年代に不思議とマッチしている。真ん中から分けてぺったりとなでつけた髪、だぼっとした服装、大柄な体格。

ブラック・ダリア2

デ・パルマはアーロンのこと「若き日のカーク・ダグラス」と言ってるらしいけど、まさにそんな感じ。タフでどん底からのし上がってきた感じ。バッキーと違って生きるためには悪いことでも何でもし、金のある今はぞんぶんに生活を楽しむ。正義漢、熱血漢・・でも悪のにおいもぷんぷん。でもってそんな(ボクシング)こんな(ケイを加えた仲良し三人組時代)があって・・それが長すぎる。公開前予告でさんざん見せられたショッキングな事件、つまりブラック・ダリアのことは?そりゃそのうち事件は起きるけど・・捜査するけど・・まだぐらついている。ブラック・ダリア事件一直線という感じがしない。あれこれ並べているという感じ。見ているこっちは何に集中すべきなのか迷う。ケイの過去?バッキーとリーが追う凶悪犯ナッシュの捜査?そのうちリーが死んじゃう(あんれまあアーロン、途中退場かよ)。カギを握る謎の女性マデリンが出てくるけど、演じているヒラリー・スワンクが合わない。溶け込んでいない。演技がどうっていうことじゃなくて、ちぐはぐな感じ受ける。ブラック・ダリアにそっくりの謎の美女ってことだけど、全く似てないし謎めいてもいない。スワンクの特徴ははっきりしているってことで、謎めいた役とかあいまいな役やると違和感が漂う。映画を見ていてもワクワクしなくて、このまま行くのかな、何かまずいんじゃない?・・って思ってしまう。それでもところどころいいシーンはある。死体が発見されたらしいところから、バッキーとリーの張り込みを間にはさみ、いったん我々の気をそらしておいてから、やっぱり死体発見なんだ・・ってわかるまでの見せ方。それとリーが殺されるところ。妙な男がリーを襲うが、顔がピーター・ローレみたいなのがいい。そしてもう一人闇の中から現われるが・・まあ誰なのか予想はつきますよ。今回は目くるめくとか、映像マジックとか、そういうのはあんまりなくて、デ・パルマらしくないけど、別に失望はしないです。映像的にはちゃんとしていると言うか。奇をてらったふうでもなくわりとまとも。ゴージャスで重厚。失望したのはストーリー展開。ふらふらと腰が定まらない。めくってもめくってもなかみが出てこないみたいなもどかしさ。バッキーとケイのあれこれなんて私にはどうでもいいんだけどな。

ブラック・ダリア3

このままよくわかんないまま終わるのかなー、まあそれでもいいけどぉ・・なんてなげやりに見ていたら・・ラストの方は引っくり返りまくり。あんまりやりすぎて何が何だかわからない。あげくの果てバッキーがマデリン撃ち殺してケイの元へ。私達は幸せになります!・・って、いいんですか?こんな終わり方で。バッキーあんたのやったこと殺人ですぜ。誰にも知られず、彼も知らん顔決め込むんでしょうか。これじゃ刑事じゃなくてパニッシャーだよな。・・まあとにかく内容かなり削ってはいるんだろうけど、それでもごたごたとまとまりのないストーリーでしたな。さて映画で描かれる事件も陰惨だけど、パンフによれば実際の事件はそれ以上にひどく、人間てそこまで残酷になれるものなのかと暗澹たる思いにとらわれる。60年近く前の出来事だから真犯人はもう死んでいるだろうけど、地獄でその報いを受けていて欲しい。ひどい目に会った被害者はそのぶん天国で幸せになっていて欲しい。そうでなきゃあんまりだ!ひどすぎる!主要人物五人の他に「スネーク・アイズ」に出ていたマイク・スター、同じく「スネーク・アイズ」の他に「エコーズ」にも出ていたケヴィン・ダン、それと「バリスティック」の悪役グレッグ・ヘンリーも目についた。ヘンリーは最初の方にちらりと出ただけ。出番削られちゃったのかしら。目や口元がきれいで、なかなかのハンサム。大勢でうつっていてもひときわ目立つ。もっと出て欲しかったわー。えッ!ローズ・マッゴーワンも出ていたの?音楽担当はマーク・アイシャム。「ツイステッド」同様トランペットが印象的。あたしゃデ・パルマがどうのこうのと書けるほど彼の作風に詳しいわけじゃないし、原作もまだ読んでいないので、まあ表面的な感想になってしまいましたよ。見終わってもこれというものがない。感動がない。・・と言ってつまんなかった、金返せ!とも思わない。まあ普通。いちおう人間の暗黒面は伝わってくるけど毒の濃縮液ぶっかけられるような、そんな部分がない。ケイのことに時間割くけど、そのわりにははっきりしない。リーとの関係は?何で彼女がマデリンのこと知ってるの?パンフの表紙すらケイの下着姿だ。B・Dという赤い傷あとが何ともそらぞらしい。スカーレット・ヨハンソン売出し中のチラシみたい。もっと前面に押し出すべき他のことがあるだろ!・・の残念作。