ベスト・キッド(2010)

ベスト・キッド(2010)

何となく・・みんなしてジェイデン・スミスをスーパー子役スターに押し上げようと企んでいるような・・。一番力を入れてるのがウィルとジェイダ・・息子を有名にしたい親バカ。そりゃ才能豊かで将来有望なんでしょう。でもどうしても出てくる生意気さがいや。ジャッキー・チェンが出ているんでなきゃ見ませんよ。いつもとは違うジャッキー。彼だっていつもコミカルでオーバーな演技しているワンパターン役者じゃない。積み上げてきた人生の重み、厚みが見る者の心にずっしりと響く。武術の達人ではあるけれど、短い時間戦っただけで息が切れる。だって人間だもの。悟りきっているように見えて、心に深い傷を負ったまま抜け出せないでいる。だって人間だもの。他の人から見れば治せる傷だが、本人はかかえ込んだまま。記憶はゲームみたいにリセットできない。普通の映画ならジャッキー扮するハンは、悪い武術教師と対決し、勝利するだろう。正しい者は必ず勝つ!でもそういうシーンはなし。ドレ(ジェイデン)を指導するが、あとは脇に徹している。何たってドレの成功を描くのがメインだから、しょぼくれた中年男の意地なんてどうでもいいのだ。でも我々にはわかっている。武術教師なんて倒さなくていい。自分の一番の敵は自分なのだ。人と争いたくなるのを戒めなくちゃならない。自分を厳しく律することのできない者は、人を正しく導くことなんてできない。また、自分の一番の味方は自分である。大事にしてあげなくちゃならない。自分を大事にしない者は、他の者も大事にしない。いじめっ子らの描き方は、あんまりだ・・と思う時もあるが、最後の方でフォローしていたのでホッとした。ボスのチョン役の子は、鋭い目が印象的。武術選手の鋭い目つきはレーザー光線のようで、俳優だからってすぐ表現できるものではない。2時間以上あって長いが、中国観光やらドレとメイの幼い恋やら、余計な(←?)ものがくっつけられているせいだ。それでいてドレの父親の死の理由が不明とか、中国の学校での授業シーンゼロとか、いいかげんである。また、ドレとかかわっているうちに(無気力だった)ハンの管理人としての仕事ぶりに変化が出てくるとか、そういうのもなし。すべてがドレ重視。ジェイデンにスポットが当たるような作り。

ベスト・キッド2

いやどんなに描写が偏っていても我々の目はジャッキーに行きますけどさ。それにしてもジェイデン最大の見せ場である大会のシーンは・・。皆さんあれらのシーン思い出せます?試合の様子ちゃんと見せようなんて思ってない。カメラ振り回している。そう、ゆらすなんていうんじゃなくてぶん回している。チャカチャカチラチラブンブングイーン・・この映画のこの部分はクズです。作り手はバカ。逆に印象に残るのは武当山。少林寺と違ってあそこで修業する人達は頭をそらない。長い髪をきれいにまとめるのに毎日時間をかける。前NHKBSでやってた。山の上、清浄な空気、霧、コブラと向かい合う女修行者。あの女性の目つきも印象に残る。静かに瞑想する人々・・この静けさとか集中度は、多くの映画では重視されない。いつもぺちゃくちゃしゃべっていないと・・いつも音楽流しっぱなしにしていないと・・いつもテレビつけっぱなしにしていないと・・不安になる。間が持たない。でも・・そんなことしなくたって・・黙っていたりじっとしていたりしたっていいわけで。みんなと違っていたっていいわけで。大量生産・大量消費みたいな人達(ぺらぺらしゃべるドレ、愛情たっぷりのママ)見てるといささか疲れを覚える。まあああいう人達がいたっていいんだけど。そばへ寄りたくないだけで。生意気で年長者に対しても対等にふるまおうとするドレが、ピンポンで老人にへこまされるシーンがよかった。ドレがハンに文句言ったり注文つけたりするのも許されないことなんだけどね。師匠には絶対服従。弟子は疑問なんか持っちゃいけない。それだけに師匠は自分を律しなくちゃいけないんだけどね。あの武術教師みたいだと、弟子の人生まで狂っちゃう。今回は吹き替え版で、お客は25人ほど。アメリカではヒットしたから「2」も作るのかな。ジャッキーが続投するなら見てもいいけど。彼にアカデミー賞を・・なんて声もあるが、どうなんでしょう。そりゃ実現して欲しいけどね。こういう軽く見られがちな・・つまり演技よりアクション専門でしょ彼は・・みたいなタイプの人にもスポットライト当たって欲しい。今回のジャッキーはホント味があってよかった。日本でもヒットしたようで、ジャッキーのためにもうれしく思う。