裏窓

裏窓(1954)

ヒッチコックの作品はNHKBSで定期的に(←?)やってる。この「裏窓」も、先日放映されていた。原作を読んでびっくりするのは、リザもステラも出てこないこと。使用人のサムにみんなやらせる。ジェフリーズの職業も不明だが、映画ではカメラマンにしてある。足を骨折したのも、撮影中・・カーレース事故のとばっちりか。ジェフリーズ(ジェームズ・スチュワート)のギブスが取れるまであと一週間。暑いさなか、みんな当然のように窓を開け放している。網戸なんて気のきいたものはついてない。退屈で仕方がないジェフリーズは、まわりのアパートの住人達を観察する。彼を恋しているリザ(グレース・ケリー)は、なかなか色よい返事をもらえない。結婚してもうまくいくはずがない、住む世界が違いすぎる、このままの状態でこれからも行けないものか。絶世の美女が自分に首ったけなのに、そんな態度普通取るか?また、そんなふうに言われてそれでも彼に恋し続けるか?映画の中だからこんな夢みたいなことやっていられる。ジェフリーズが見る住人達の生活ぶりが興味深い。もちろん見えるのは彼らの生活の一部だけで、名前も知らない。ミス・グラマーはバレリーナか。音楽をかけ、部屋の中で飛び跳ねる。下の部屋の住人はさぞ迷惑だろう。男が何人も来るが、適当にあしらい、深い仲にはならない。オールドミスのミス・ロンリーハートは、いい人が現われるのを待っている。一度酒の勢いを借りて若い男を連れ込んだが、いざとなると追い返してしまう。部屋の中にピアノを置いているのは作曲家か。たくさん人が集まっていることもあれば、一人で荒れていることも。新婚さんらしいカップルも入居してきた。犬を飼っている夫婦は、暑いのでベランダで寝ているが、ある晩雨が降ってきてえらい目にあう。病身らしい妻と暮らす男・・深夜雨の中をトランク持って外出し、その晩以来妻の姿が見えない。ジェフリーズは、男ラーズ(レイモンド・バー)が妻を殺し、死体を切り刻んで始末したのではと思い始める。最初は相手にしなかったリザや看護師のステラ(セルマ・リッター)も、そのうちジェフリーズ以上に積極的になる。ジェフリーズは刑事のドイル(ウェンデル・コーリイ)に連絡し、調べてもらうが・・。

裏窓2

退屈のあまりジェフリーズが覗き見をしていなかったら・・ラーズの犯行はばれなかっただろうが、それにしても窓のことを気にしなさすぎる。まあ何も見えなければ映画にならないんだけど。それにしてもとっかえひっかえ高そうなドレスで登場するグレース・ケリーの美しさったらない。見ていても何の仕事してるのかわからないが、ネットによるとファッションモデルらしい。あたしゃ大金持ちのお嬢さんだと・・。仕事はしてるにしても腰掛け程度で、それでジェフリーズは自分とは釣り合わないと思ってるんだと。コーリイは青い目が印象的な人だ。原作だとただの友人だが、映画では同じ偵察機に乗っていた・・戦友だということがわかる。このように原作では省略されてることが説明されてる一方で、ほったらかしの部分もいっぱいある。雨の晩トランクで運び出したのは何?あの悲鳴と何かが割れる音は殺人に関係があるのか。長距離電話の相手は誰?大型のトランクに入っていたのはラーズの妻の服だから、雨の晩のトランクに死体が入っていたのか。処理に使った肉切り包丁などを花壇に埋めるのもおかしい。あんな目と鼻の先に埋めるか?犬を殺された飼い主の演説もわざとらしい。クライマックスでは立場が逆転する。今までは有利な立場からラーズを追いつめていたジェフリーズ。しかし相手に自分のことを知られ、相手が来たのに自分は車椅子。彼のピンチに見ている人はハラハラし、応援するのだろうか。私には、他人にやったことのツケが、自分に回ってきたのだとしか思えない。結局動機は何だったのか。死体はどこに?原作でははっきり共犯の女性(愛人)がいたことになっているが、こっちはあいまいなまま。描きたいことは別にある。でも、ジェフリーズとリザの今後のことなんか誰が気にする?ミス・グラマーのところには夫だか恋人だかが帰ってきた。見かけと違い、彼女は意外と身持ちが固い。絶望して自殺を図りかけていたミス・ロンリーハートは、作曲家の弾く曲のおかげで思いとどまる。これをきっかけに作曲家と仲良くなるのか。こういうまわりの人達の人生模様はうまく描かれていると思う。レイモンド・バーはこの頃からもう太っていたのね。「ペリー・メイスン」は見たことないが、「鬼警部アイアンサイド」はよく見ていた。