ウィッカーマン(2006)

ウィッカーマン(2006)

ウギャッ、何だこの映画は後味悪い・・。こんな映画は久しぶりだな。あまりにも気分がよくないのでよっぽど一回で帰ろうかと思ったけど、思い直して二回見ましたよ。すぐ公開終了だと思っていたらけっこう長くやってくれて・・。実家に帰っていたりしたので、見れないかな~と半分あきらめていたんだけど見ることができてよかった。お客さん入ってるとも思えないのに長くやってくれてありがとう!とってもうれしかったでーす。そう、うれしかったんですの。後味が悪いとかそういうこととは話がまた別なんです。見たい映画を見れる環境に自分がいるってことがうれしい。この映画はWOWOWの「ハリウッド・エクスプレス」で見た時から気になっていた。ニコラス・ケイジが何やら調査しているのを見てそそられたんですの。「8MM」風だな・・って。リメイクらしいがオリジナルのことは全然知らない。題名だけは聞いたことあるけど。もっといろんなところでやるかな(ケイジ主演だし)と思ったら全然。仕方ないから新宿まで。お客は一回目は12人くらい、二回目は20人くらいか。途中で入ってくる人もいるのでちょっとあいまい。クライマックスで入ってきた人もいて、あと5分かそこら待てないのかよ~先にクライマックスと結末知っちゃって映画楽しめるのかよ~って思っちゃった。まあいいんですけどね人のことは。この映画あんまり評判よくない。ラジー賞にも多数ノミネートされたらしい。最初いい感じで始まる。真面目でやさしい白バイ警官のエドワード。走っている車から道路に人形を投げ捨てた少女。ひらあやまりの母親。その母娘の乗った車が追突され炎上する。何とか娘だけでも助け出そうとするが車が爆発。ふっ飛ばされたエドワードは意識を失う。ところが現場には死体なし、車は無登録。いったいなぜという疑問と、母娘を助けられなかった後悔とで精神をやられ、休職中。そんなある日、同僚が見舞いがてら、署に届いた手紙を持って訪ねてくる。昔の婚約者ウィローからの手紙。二週間前から娘が行方不明になっている。捜して欲しいという内容。その手紙の文字の美しさが印象的。まるで結婚式の招待状みたいな流麗な筆跡。いや、確かに一種の招待状だったんだけどさ、後でわかるけど。手紙には消印なし。誰が届けたのか。ウィローが住んでいるのは個人が所有するサマーズアイルという島。電話なし、ケータイ通じず、住民は女ばかり。

ウィッカーマン2

しかもみんな態度がおかしい。少女が行方不明になっているというのに非協力的。ウソはつくし、人を小馬鹿にしたようなうすら笑いを浮かべてるし、とにかく感じが悪い。男どもは無気力でろくにしゃべらない。うまくいっていたのにある日突然理由も告げず姿を消したウィロー。久しぶりに再会してもあいまいな態度。じれったく思うがほれた弱みがある。頼られれば何とかしてあげたいと思う。ウーム、何でこんな映画に出たの?ケイジ。はっきり言ってアホ映画ですよ。なのに「ゴーストライダー」もそうだったけど、ケイジはあっちのガイコツライダーもこっちのしょぼくれエドワードもちゃんとやってる。しかも楽しそうに熱演している。毎日新聞の批評に「出演作選びのセンスが憎めない」と書いてあったけどホントその通り。大スターなのにこんなのにもホイホイ出ちゃう。だけど考えてみりゃケイジって昔はこういう変ちくりんな映画に好んで出ていたのよね。「バンパイア・キッス」とか「タイム・トゥ・キル 愛と勇気の戦場」とか題名からしてわけわからん映画。ウィロー役はケイト・ビーハン。どこかで見たような・・と思ったら「フライトプラン」の浅丘ルリ子さんでした。ちょっとジェニファー・ロペスも入ってる。大きな目で見つめられ、ぼってりした唇すぼめられ・・懇願されりゃ・・そりゃ断れませんわな。突然ポイされた時にはエドワードもショックだったはず。そのせいで今でも恋人いなさそう。女性不信か?休職中の彼を見舞いにきた同僚警官・・手紙を渡すんだけどどうも態度がぎこちない。一回目見ている時は(ぎこちないのは)一時はこの二人恋愛関係にあったのかな、その後別れて・・何て思ったりしたんだけど、そうではないことが後でわかる。サマーズアイルへ行く船の中、エドワードはコロンか何かつけちゃったりして、久しぶりに元恋人に会うので落ち着かない。そこが微笑ましい。一方で悪夢や幻覚に悩まされ、薬を飲む。あの事故のことが頭から離れない。車に乗っていた少女と、行方不明だというローワンのことが重なって見える。あの少女は助け出せなかったけどローワンは助け出したい。真面目で親切で人を助けたいという気持ちの強い、いい人なのよエドワードって。ところが島の人間はいやな人間ばかり。さすがのエドワードも頭にきて、協力してくれないのならこっちもちょっと強気に出てやれ・・と、警察の権力振りかざす。

ウィッカーマン3

彼はカリフォルニアの警官で、ここはワシントン州、しかも個人の所有地。そんなに高圧的な態度取れないと思うが・・。本当に少女が行方不明になったのなら、こっちの警察に正式に届け出して捜してもらった方がいいのに・・と見ながら思っていた。それにウィローの態度もおかしい。娘がいなくなったにしては態度が消極的。ジュリアン・ムーアやジョディ・フォスターの母親キャラ見慣れているせいか、ウィローは何もしなさすぎ。調べていくうちにだんだん熱くなっていくエドワードとは対照的で、ウームおかしいぞこの女。この島で権力握っているシスター・サマーズアイル役はエレン・バースティン。私は「エクソシスト」見たことないし、この人見るの初めてかも。声は「レッド・ドラゴン」のダラハイドの祖母役で聞いているけど。もう70過ぎてるけど60代に見える。他に教師シスター・ローズがモリー・パーカー。宿のメイド、シスター・ハニーがリリー・ソビエスキー。宿の主人シスター・ビーチ役の人は男かと思うほどがっしりしていて声も太い。キャシー・ベイツといい勝負どすこーい!ところで個人の所有で他人が来るの喜ばないのに何で宿泊設備があるの?医師のモス役の人は「キャットウーマン」に出ていた。その昔、この島にたどり着いた人々が、他との接触を断って独自の生活営んで今日に至っているわけだが、最初の頃はこんなふうではなかったと思う。虐げられていたり魔女狩りにあったり苦難の日々を送っていた女性達が、人間らしく生きる権利を求めて作ったのがこの共同体だと思う。つつましく仲良く暮らしていたはずだ。それが数百年たつうちに妙な方向へ行ってしまう。集団の中心は女で、男は隷属的な存在。力仕事や子孫を残すためだけに必要とされる。学校へ行けば生徒は女ばかり。男は教育受けられないのか。男の子が全然いないのは生産調整されているのか。偏った教育受けているから少女達はみんな性格がねじ曲がっている。つんとすまし、平気でウソをつき、演技をし、エドワードをバカにし・・。いったいどうなっているのだこの島は・・。この島では凶作になるとウィッカーマン(枝男)に生け贄をささげる。若い男、あるいは女。エドワードはローワンがこの生け贄にされるのでは・・と確信する。そうなる前に何とか救い出さなくては。もちろん途中でウィローはローワンがエドワードの娘だとわざとらしく打ちあける。

ウィッカーマン4

今更びっくりしないでよエドワード。全然思いもしなかったのならアンタうっかりしすぎもいいとこ。父親でなきゃアンタに助け求めるわけないでしょうが。困ったオッサンだね。さて熱くなってきたエドワードは思考も行動も空回りし始める。ちょっと立ち止まって「待てよ」と考えればいいのだが「そうに違いない」と思い込んじゃってる。いろいろひどい目に会うけど(蜂に刺されたり一晩中水につかったり)何とか生きのび、ローワンを見つけ、助け出し・・さあ逃げろ・・って、あれ?さあ後味の悪いクライマックスに突入ですよ。まあ私オリジナルは見てないのでストーリーとか知らないからあのどんでん返しにびっくりしたのは確か。どたん場で助けが現われるのではないか、ヘリでも飛んでくるのではないか・・とはかない望みをいだいていましたの。でもだめ・・。「みんなみんな生きていたんだグルだったんだ~」と言う歌が聞こえたような気がしたのは私だけでしょうか。一回目見ている時はそのシーン見逃した。でも二回目気がつきました。島の女達にまじって、あの車に乗っていた母娘、そしてエドワードの同僚の女性警官の姿が・・。みんなグルだったんです。手紙に消印がなかったのも道理、あの手紙運んだのは同僚。ウィローは実はサマーズアイルの娘。生け贄はローワンではなくエドワードだったんです。ちゃんとほら前に言ったでしょう若い男か女って。別に女でなくていいんですよ。この男が最適・・と目をつけられ、本人も知らないうちにあれこれ御膳立てされる。「悪霊喰」と同じですな。ただ・・わかってみるとこういう結末に持っていくために必要なことだったんだろうかあれやこれやのことは・・と思ってしまう。つまりあの母娘の車が炎上する必要なんかどこにもないでしょ。島へ呼んで危ない目に会わせる必要もない。ローワンを行方不明に仕立てる必要もない。今まで黙っていたけど実はあなたの娘を産んだの。ぜひ一度顔を見に島へいらしてねウフ・・と手紙で(祭りの)頃合いを見計らって連絡すりゃ、人のいいエドワードはホイホイ出かけてきますぜ。半年後ハニーとウィロー(だよね、暗くてよくわからんけど)が都会へ出てくる。美女二人に引っかけられた男二人はでれでれ。彼女たちの目的はもちろん・・。したたかな女達、それにくらべ男は・・。

ウィッカーマン5

うわべにだまされ、裏にあるものに気づかない。てなわけでこの映画エドワードを始めバカな男どもを笑うべきなんでしょうか。一回目は後味が悪いなあと口がへの字になっていた私だけど、二回目はこれってブラックコメディー?なんて思ってみたり。まあ誰も書いてませんけど私としてはサマーズアイル島は去年にも増して大凶作だったんだろうと・・。だから美女二人が次の生け贄求めてやってきたんですよ。そうでなきゃいけません。人助けをしたいと思っているやさしい男をだまし、おびき寄せ、あげくの果てに・・。しかも自分の娘に・・。これで豊作になったのではアンタ・・神も仏もないってことになりますがな。あれで正しかったなんてことにしちゃいけません。ちゃんと生け贄をささげたのにまたしても・・と言うか前にも増しての大凶作。効果がなかったのはなぜ・・と、シスター・サマーズアイルの威光がゆらぐ・・迷信から目覚める・・ってそういう方向へ行かなくちゃ。女性の権利を尊重し、助け合って生きる。上下関係もないからお互いをシスターと呼び合うんでしょ?それが今ではウソをつき人をバカにし、人まで殺す(エドワードを島まで運んでくれたパイロットまで殺す)。こんなねじ曲がった人間ばかりの島で豊作になるわけないじゃん。作物や蜜蜂までおかしくなっちゃうに決まってるわ!でもこんなこと書いたって何にもならないんだけどさ。とにかく私は島では困窮していて、フンざまぁみろ!とそう思いたいわけよ。ラストのでれでれ男の一人はハンサムで、こんなチョイ役にはもったいない。誰かに似ている・・と思っていたら・・えッ、ジェームズ・フランコ?さすが~ほんのチョイ役でも断然光ってますな。スターは違うね!あとアーロン・エッカートが出ていたらしいが、カットされたのかな。こんなアホ映画二回も見る私もアホだよなあ。でも見てよかった。やたら画面をゆらすとか、ホラー映画にありがちな小細工せず、ちゃんとカメラ固定しているのがいい。「ブラッド」見た後だから余計そう思った。こういうのが映画本来の姿じゃないの?落ち着きのあるうつし方、美しい景色、しっかりした演技・・。ただし音楽はちょっとうるさかったな。てなわけでぜひフランコ君で「ウィッカーマン2 リベンジ編」作ってください。