ヴィドック

ヴィドック

最初に見たのはWOWOW。その後DVDを買った。似たような作品に「ジェヴォーダンの獣」があるけど、こっちの方が感想書きやすいかな。ヴィドックは実在の人物で、フランスでは有名らしいが、日本ではどうなんだろう。DVDの特典でライオンのような・・と形容していたけど、ジェラルド・ドパルデューがやると熊だよな。雑誌等で水着姿の彼を見ると、本当に心配になっちゃう。こんなに太って大丈夫なの?いつ新聞に訃報が載っても驚かない。でも・・息子の方が先に逝っちゃうんだから世の中わからない。1830年のパリ・・今にも市民の反乱が起きそうな騒然とした雰囲気。そんな中、奇妙な殺人事件が起きる。ベルモンとヴェラルディが落雷で死亡。三人目ラフィットは落雷は免れたが、やっぱり死んじゃった(心臓マヒ?)。先の二人の事件を調べていたヴィドック。ガラス工房で怪人と対決し、死んでしまう。酒浸りの相棒ニミエの前に現われたのが自称作家のエチエンヌ。ヴィドックの伝記を書いている。犯人見つけて伝記を終わらせたいと言う彼に、ニミエ、続いて踊り子のプレアが話を聞かせる。ベルモンの従僕やプレアには金を添えた手紙が届いていた。その指示で従僕は衣服の火薬の粉をはらわず、プレアは彼らの帽子に(雷を誘導する)櫛を入れた。彼女は誰かの企みとわかっていて、三人はただのお客、どうなろうが関係ない・・と、彼らの死も気に止めない。ドライな女だ!最初警視総監ロートレンヌは政治的陰謀だと思っていたが、調べていくうちにそうではないことがわかってくる。プレアによれば、三人は永遠の若さに執着している変態。新聞社のフロワサールやラフィットの妻によれば、三人は処女を買い集めていたらしい。彼らの前に鏡のマスクをつけた怪人が現われ、永遠の若さを与えるから処女を集めろと取引を持ちかけたらしい。だが八人ほど集めたところでラフィット達は疑い始め、集めるのをやめてしまう。殺されたのはたぶんそのせいだ。処女の生血で鏡を作るとか、鏡で魂を吸い取り、怪人はいつまでも若さを保つとか、人体のパーツでできているようなおぞましい建物内部とか、うさんくささ、いかがわしさ満載の内容。

ヴィドック2

作り手は絵画のような画面を意識。光の当て方に気を配り、赤や緑といった特定の色を浮かび上がらせる。血走った目や汚い歯、やたら顔のどアップを連発する。CGが多用され、カメラがゆれる。町は汚く、人心は荒れ、活気にあふれる一方阿片窟など退廃的なムードも。混沌としていて、何でもありの状態だから、妙な怪人が跋扈していてもちっともおかしくない。最初見た時はエチエンヌの正体にびっくりしたけど、そうとわかって見ると・・最初に現われた時の、探偵事務所の壁に貼られた殺人事件の資料を見る目つきも・・。たぶんほとんど彼自身の仕業で・・。でも・・くり返すけど最初見た時は、彼は彼の言ってる通りの人物なのだと思っていて。それがぐらつくのは、警察の手から逃れるため窓から飛び降りるシーン。あそこで初めてアレ?もしかして・・となる。エチエンヌ役はギョーム・カネ。私はこれを見るといつも「ゴーストシップ」を思い出してしまう。若く美しい青年が実は・・という共通点。アメリカ映画にしろヨーロッパ映画にしろ、こういう役をやる人は、美しさだけでなく演技力もあるから安心して見ていられる。これが日本だと、顔はまあまあだけど演技は学芸会・・つまりはずれの場合多し。カネはライアン・ゴズリングとかニコラス・ケイジに似ている。眉と目が垂れていて、鼻が大きい。ゴズリングだとちょっと甘ったれた感じ入るけど、彼にはなし。DVDの特典で見る素顔の彼は、ボーッとしたそこらのアンチャン風。錬金術師ということで、宗教絡みの悪魔とはちょっと違う存在。昔からの言い伝え、迷信、ガラス工房には幽霊が出るといううわさ。人間あるいはその土地の持つ邪気が固まって、形となって現われたのが、あの怪人なのだろう。一種のホラ話だから感想も書きにくい。考証やつじつま合わせをする必要もない。見て楽しめばいいだけの映画。でもなあ・・ヴィドックは冒頭ガラス工房で戦った際、怪人の素顔見たんだから、エチエンヌが現われた時、銃で撃つなり何なりすればいいじゃん。何もしないで泳がせるからフロワサールやラフィット夫人・・さらにはニミエまでが殺されてしまったぞ。