ヴァンパイア/最期の聖戦

ヴァンパイア/最期の聖戦

なかなか見る機会がなかったが、WOWOWでやっと見た。吸血鬼が相手だから、心臓に杭を打ち込み、胴と首を切り離す。それでやっと退治したことになるのだ。あまりにも残酷なため、放映前に注意(年齢の)が出る。でもテレビだから誰だって見れちゃう。ホラーと言うより西部劇風だが、スカッとするわけではない。暴力と血みどろシーンが続くが、ゲテモノ映画でもない。ヴァンパイアハンターのうち、生き残ったジャック(ジェームズ・ウッズ)とモントヤ(ダニエル・ボールドウィン)の対比がおもしろい。ジャックはヴァンパイアのために両親をなくしているから、冷静に、規則通りに仕事をこなす。モントヤの方はもうちょっといいかげんで、情にもろいところもある。乱暴そうに見えるが、ヴァンパイアにかまれてだんだん自分も吸血鬼になっていくカトリーナ(シェリル・リー)を世話するうちに、情にほだされていく。ジャックの方はあくまでも冷静で、途中から加わった若い神父アダム(ティム・ギニー)を邪魔にする。この神父はよくいる知識だけはあるが、実体験には乏しいという、口数の多いタイプ。彼に対するジャックの態度がかなりアブナイ。際どいことを言う。ところがやっぱり知識よりは経験・・ということで、ヴァンパイアと戦っていくうちに、神父はどんどん成長(人間的には堕落かもしれないが)していく。残忍なことも平気になり(と言っても、退治方法がそうなんだから仕方がないが)、機転を利かしてジャックを救い、際どいセリフもかわすようになる。モントヤとカトリーナが絶望的な未来へ進んでいくのに対して、ジャックと神父はヴァンパイアハンターとして前進していく。この対比がおもしろい。ヴァンパイアの親玉は「クロウ」のトップダラー、ジャック達を裏切る枢機卿は「ザ・クロウ」のノアだとばっかり思っていたら、違う人だった。二人ともそっくりなんだもの。・・と言うわけで、ウッズと親玉ヴァンパイアのおかげで、わりとおもしろい映画だった。・・これを書いてからもう10年以上たった。少し削るか、少し足して、それで感想文でき上がり~としてもいいんだけど、ちゃんとしたのを書きたいという気持ちもあって。

ヴァンパイア/最期の聖戦2

原作があると知ったのはわりと最近。でも本屋にはなくて絶版かな・・と。たぶん古本屋で捜すべきなんだろうけど、見つかるかな・・と思っていたら、運良く見つけることができて。読んでみたら内容かなり違う。ジャックもアダムも死んじゃうし、途中から別のガンマンが主人公みたいになって。省略されたような、わかりにくい文章で。○○し、そして・・。○○した、それから・・。○○した、すると・・。こんな文章ばっか。途中で長い回想入るし、勢いはあるけどあんまりいい小説だとは思わない。映画の方はすっきりさっぱりわかりやすい。いらないこと全部削ってある。ジャックのキャラはほぼ原作通り。この映画見た時はウッズのことよく知らないし(今だって知らないけど)、トーマス・イアン・グリフィスのことも知らず(今だって)。アメリカではヒットしなかったようだし、日本ではさらにいっそうだめだったんじゃないかな。ジョン・カーペンターの映画って、どれもこれもコケてるような気がするんだけど(初期の作品はヒットしたのかもしれないが)。上にも書いたけど、体裁はモロ西部劇。空っ風と砂ぼこり、ガンマンにゴーストタウン。闇に潜むヴァンパイアをおびき出し、ケーブル付きの太い矢を撃ち込み、ウインチを巻いて太陽の下へ引きずり出す。するとやつらは爆発し、燃えてしまうのだ。たまに人形なのが丸わかりだけど、そういうわびしさも一興(お金ないのね~)。映画はもう一人の男なんか出さない。印象が散漫になるから。主人公はあくまでジャック。冒頭のヴァンパイア退治はおおむね成功。モーテル(サン・ゴッド・モーテルというのが笑いどころ?)で乱ちきパーティをやっていると、あいつが襲ってきた。マスター・ヴァンパイア、ヴァレック(グリフィス)だ!チーム仲間、保安官、神父、娼婦・・みんなやられてしまう。生き残ったのはジャック、モントヤ、カトリーナの三人。カトリーナはヴァレックにかまれているので、いずれはヴァンパイアになる。ただ、ヴァレックとテレパシーで通じているので、殺さず連れ回す。そこに新しく神父のアダムが加わる。原作ではなぜヒロインがかまれてもヴァンパイアにならないのか、説明がない。

ヴァンパイア/最期の聖戦3

しかもラストはガンマンと結婚ときたもんだ!うっそー!!映画はそんなハッピーエンドとは無縁。カトリーナと、彼女にかまれたモントヤには明るい未来は・・ない!!ジャックは武士の情けとして(←?)、48時間の猶予を与える。その後は容赦しない。話を戻してジャックは言葉が下品。そのせいでこの映画を嫌う人も。私も最初は嫌だったけど、何回も見て慣れたのか、今では何とも思わない。原作ではかなり苦悩の色が濃いが、こちらは控えめ。とは言え、汚い言葉を吐き、アダムを痛めつけ、ウッズは気持ちよさそうだ。いつものインテリぶったねちっこいキャラとは違う。ワルだけど正義の味方、ヒーロー、タフガイ、聖戦士だもんね。で、ジャックが強烈なら敵のボスも強力で。やっぱ悪ボスは主役以上に強力でないと。ただ強いだけではだめ。美しさ、優雅さ、この世の者とも思われぬ神秘さ、誰にも理解されない孤独さも必要。ザコは何でもいいけど、ボスは汚くてはだめなの。それが鉄則。でも多くの作り手はボスまで汚くする。それで失敗する。カーペンターだって「ゴースト・オブ・マーズ」ではきっちゃなっくらしい悪ボス出して失敗してた。その点グリフィスは合格。まず体が大きい。大きいだけで相手に畏怖の念をいだかせることができる。顔立ちも美しい。ただ甘いのではなく奥行き・・背景を感じさせる。何気なく登場して破格の強さ見せるのもいい。会ったこともないのにジャックの名前知っていて・・(味方に裏切り者がいる予感)。原作では途中から舞台が都会・・ダラスに移るけど、こっちはそのまま。アメリカ南西部・・ほこりっぽい田舎のままでいく。ぶれない(お金がない)。冒頭のヴァンパイア退治、その成功を祝うパーティ、一転して血みどろの惨劇の流れは原作と同じ。クライマックス(儀式)へ行く前の、刑務所でのエレベーターを使ったヴァンパイア退治も、原作とほぼ同じ。それ以外は違う。ヴァンパイアを創り出したのは実は教会だった。600年前に生まれた、最初にして最強の魔鬼ヴァレック。黒十字架を使って、夜だけでなく昼間も行動できるようにするのが彼の目的。そのためには聖戦士・・ジャックの血が必要。

ヴァンパイア/最期の聖戦4

不死を求めてヴァレックに協力する枢機卿。裏切り者は彼だった!カトリーナにかまれ、ヴァンパイアになりつつあるモントヤ。こういうのは原作にはなし。西部劇っぽい単純で善悪のはっきりした内容。それでいてスピード感や爽快感はあまりなく、血まみれなわりには怖さもない。いちおう盛り上げる努力はしてるけど、その前に作り手が楽しんじゃってる。来るぞ、来るぞ・・あれ?来ないぞ。・・構えと言うかタメと言うか、そういうのがありすぎて今いち弾けない。緊張の糸が切れたあたりで弾けてる。儀式にしても、朝日が昇る直前にやらなければならないと説明された時点で、先が読めてしまう。で、その通りになる。ジャックはたぶんカート・ラッセルあたりがやるはずだったんだろう。でもさすがウッズ、彼なりのジャック創ってる。ボールドウィンは太ってボーッとした感じで、何となくもたついた印象。やせて鋭いウッズと対比させるためだろうけど。ギニーは「ミディアム」や「メンタリスト」に出ている。この作品での彼は、ヒゲやメガネのせいで顔立ちがよくわからないが、マイケル・J・フォックスとトム・クルーズをミックスしたような感じ。小柄で身軽なのがいい(昔サッカーをやってたという設定)。最初ジャックにやり込められているのが、いつの間にか対等になるのがいい。リーは大変な役だが、がんばっている。目の表情とかいいが、彼女も太めなので、ボールドウィンと一緒だといっそうもたついた感じに。枢機卿はマキシミリアン・シェル。原作ではローマ法王が出てくるけど、さすがに映画では無理だもんね。他に、給油中モントヤに車かっぱらわれる男性役でフランク・ダラボン。ん?・・監督の?関係ないけどグリフィスは「ブラック・フライデー」以後、テレビにも映画にも出てないようだ。まだ引退するような年じゃなし、どうしたのかな・・ちと心配。・・てなわけで、名作でも傑作でもないけど、何度見てもそれなりに楽しめる作品。私にとってはウッズの意外な役、そしてグリフィスとの出会いという点で、忘れられない作品でもある。それにしてもカーペンター、ここらで一発たのんまっせ。快作、大ヒットを待ち望んでいるファンは多いぜ!