アンダートウ 決死の逃亡

アンダートウ 決死の逃亡

日本では未公開だし、アメリカでもほんの一部での公開。DVDが発売されたのはジェイミー・ベル君の知名度のおかげ?いちおう製作テレンス・マリックというのも目を引くけど。ベル君の映画は見たことないけど、「リトル・ダンサー」の頃から気になってはいた。「アンダートウ」はサスペンス物だし期待して見た。出来がいいようなら改めてDVD買ってもいいかな・・と。でも・・ビミョー。冒頭とっても痛いシーンがあるのよ。何でこんなの入れるんだろ。内容はわりと単純だし、出演者も少ない。画面が止まったりくり返したり「ステイ」みたいな余計なことやってる。最初にこれは事実だみたいな字幕入るけど、見ていても説明がちゃんとされないのでしっくりこない。ラスト、ティムの風船がいきなり割れるけど、あれと同じですべては夢の中のことでした、起きてみたら・・そんなふうにも受け取れるストーリー。再現ドラマを気取るのならくり返しとか画面停止なんて必要ないじゃん。ベル君扮するクリスは何歳か不明だが、難しい年頃。父親ジョン、弟ティムと三人暮らし。誰ともつき合わず孤立して暮らしている。家は貧しく、豚を育てる仕事はきつい。父親は厳しく、いろんな雑用やらされる。ティムは病身だし母親は死んでしまった。いろんなストレスがたまり、それが他人の家のガラスを割るなどの悪さとなって現われる。ジョンは何度も警察の呼び出しをくう。クリスは別に根性が曲がっているわけではないが、父親とはどうもうまくいかない。愛してくれているのはわかっているが、その一方で父親は自分と距離を置いているような気がする。なぜ誰ともつき合わず孤立しているんだろう。好きな子がいるけど、その子の父親には嫌われている。この少女は「パニック・ルーム」でジョディの娘役やったクリステン・スチュワートだ。もうすぐ公開される「ゴースト・ハウス」に出ている。ジョン役はダーモット・マルロニー。プレーボーイ風の顔立ちの彼だが、ここでは孤独で信心深い中年男。ヒゲも生えてていちだんと濃い。渋くてセクシーだが、シャツとモモヒキがつながったような下着(昼間は暑くて汗流しているけど、夜は冷えるらしい)姿で出てくるので、あちゃーとなる。せっかくの色男が物悲しい男やもめに・・。ある日弟のディールが訪ねてくる。どうやら刑務所に入っていたらしい。人手がなくて困っていたジョンは、ここで働くよう勧める。

アンダートウ 決死の逃亡2

ディール役はジョシュ・ルーカス。彼が何の罪で服役していたのかは不明。最初ジョンがあやまっているようなので、ジョンの身代わりになったのかな・・と思ったが、そうでもないらしい。亡き妻は元々はディールの恋人。それが結局はジョンと結婚。ジョンはそのことで負い目を感じているのか。しかもクリスは実はディールの子供。負い目が裏返しとなって、ついついクリスに必要以上に厳しく接してしまったのか。さて、ディールがここへ来たのは父親が隠していたメキシコの金貨を手に入れるため。ここらへんもはっきりしないが、彼らの父親は泥棒だったのか。ジョンは、金貨は全部警察に持っていかれたと話すが、ディールは信じない。どこかに隠してあるはずだ。半分はオレのものだ。恋人だけでなく金貨まで奪われてたまるものか!家中捜し回ってとうとう見つけるが、ジョンと争って殺してしまう。クリスとティムは逃げる。題名通り「決死の逃亡」・・と言うか、「必死の逃亡」の方が合ってると思うが。ジョンを殺すのに使われたのはクリスのナイフ。今まで何度も警察のやっかいになっているので、自分が犯人にされてしまう。よーく考えりゃそんなことにはならないんだけど、やっぱりそこらへんはまだ子供。とにかく逃げる。後半はだから追いかけっこですよ。クリスは学校へは行っていないようだ。ティムは?彼の病気もはっきりしない。不安症とか何とか・・精神的なものか。普通の食事はほとんど取らず、ペンキや泥を食べたり吐いたり・・そういうのが何度も出てくるので、クリスの痛いシーンとはまた別の意味で痛い。見ているのが辛い。父親が殺されるとか、弟と二人で逃げるとか、空腹とか孤独とか、そういう要素だけでサスペンス映画として十分成立するんだけど、それ以上のものを盛り込もうとしている。クリス一人なら何とかなるが、具合の悪い弟の面倒を見ながら逃げるとなると・・。ただクリスの冒頭の足のケガはすぐ治るし、ティムも何となく生き残る。クライマックスでは金貨を川にばらまき、怒ったディールがクリスを川に沈め・・あら?クリス死んじゃうの?死んじゃったんだわ、だって浮かんでこないもん、あら~そうなの、そうなのねどよ~ん。海辺の幻想的なシーン・・死んでしまったクリスのあの世での姿・・それで終わりと見せといて引っくり返る。あら?生きてたの?まあいいんですけどさハッピーエンドの方が・・。

アンダートウ 決死の逃亡3

ティム役の子は細くて神経質そうで、唇とかちょっとヒラリー・スワンク風。この年頃の少年だとよくあるけど、女の子っぽく見える。さて、子役で売れた子は、成長して顔つきや体つきが変わり、かわいらしさや無邪気さだけではやっていけなくなる頃が難しい。今のベル君の頃がね。色気づいているのを見るのは、前からのファンにとってはちと辛いかも。相手の子にしたって冒頭のクリステンならまだいいけど、後半くらっとなる少女はいかにもすれっからし。こういうのには近づいちゃだめよクリス。中盤あたり、子供のいない夫婦のところで働き、ひとときの安らぎを得る。働こうと思ってもクリスは若すぎて雇ってもらえず、しかも病気のティムをかかえての逃亡だからホント大変なのよ。父親に厳しく仕込まれたから仕事は難なくこなせる。時には父親を恨めしく思ったこともあっただろうけど、仕事に関しては辛い経験も決して無駄ではなかったのよ。クリスが子ヤギを抱いてなでているシーンはとてもいい。夫婦もいい人達だし・・。でもすぐに逃げ出さなくてはならなくなる。ディールがすぐそこまで来ている。クリスはやさしい性格だが、押さえつけられることを嫌う。これはディールの性格を受けついでいるのだろう。ジョンはクリスを見る度弟を思い出し、その弟に自分がした仕打ちを思い出し、さぞ辛かったことだろう。弟の手にかかっての死は、重荷からの解放でもあったことだろう。まあそうは言っても内容的にはさして目新しいわけでもない。変に凝った映像もわずらわしい。ただ出演者はそれなりによかったし、特にベル君には感心した。演技のうまい子はたくさんいるから、そのことで感心したわけではない。彼の特徴は肉体にあると私は思う。特に上半身が発達していて、後ろから見ると「ん?大人?」と思うくらい。重労働の中で形成された肉体。頭はさほどよくないし、子供だし、孤立して暮らしていたから世間のことよく知らない。でも農場の仕事・・大工仕事とか動物の世話ならよ~く知ってる・・そんな感じ。廃物利用してねぐらこしらえたり、ディールの出現に備えて鳴子しかけたり・・サバイバルはお手のもの。こういうのってみんな父親から習ったはずなんだよな。生きている間はうまく接することができなかった二人だけど、父親を思うシーンがあってもよかった。そういうのがないので、何を伝えたいのかあいまいな映画になってしまった。残念。