エグジット・スピード

エグジット・スピード

WOWOWでやったのを録画して、そのまんま。今回やっと見た。録画したのはデズモンド・ハリントンが出ているから。「ゴーストシップ」以来ちょっと気になっている。「クライモリ」のDVDも買った。この人、いろんな俳優をごちゃまぜにしたような感じ。クリスチャン・ベールとかエドワード・ノートンとか。しばらくたつと、あれ?どんな顔してたっけ・・と、ぼやける。今いちインパクトに欠ける。でも・・気になる。冒頭・・ベッドで寝ていたカップルのうち、男の方が目を覚ますと、くたびれた中年のオッサンが立ってる。実はこのオッサン・・アーチー(フレッド・ウォード)は憲兵で、脱走兵・・カップルの女の方・・メリデス(ジュリー・モンド)を追っている。彼女は上官を殴ってそのまま隊を離脱。祖父が議員なので、表沙汰にならぬようアーチーが追っているのか。メリデスは、足や一晩の宿を確保するため、男をうまくだまくらかしたのか。彼女はあっけらかんとしていて、何を考えているのかよくわからない。軍人という部分はこの先十分生かされるが、脱走して逃げ続ける理由はよくわからない。逃げ回ることを楽しんでいるふうもあるが、一生それを続けるわけにもいくまい。非は上官の方にあるようだし、彼女なら法廷で堂々と戦いそうな気もするが。アーチーにも何となくのんびりしたムードがあり、引き延ばしているようなところも。何度も出し抜かれているようだが、カリカリしたところはない。もちろん今回も逃げられてしまう。ここはテキサス。エルパソ行きの長距離バスが出ていて、客が集まってくる。見知らぬ者が、同じバスに乗り合わせ、事件に巻き込まれ、命の危険にさらされる中で反発したり助け合ったりという、よくある流れ。その際にはリーダーが生まれるし、ピンチだと言うのに・・いや、ピンチだからこそカップルも生まれる。たいていの人はだから「スピード」みたいな感じかな・・と。今日はクリスマスイヴ。移動のピークは過ぎたのか、お客はさほど多くない。運転手のダニエルはハンサムで・・私最初は彼がデズモンドかな・・と。ほら、記憶がぼやけてるせいで。でも違った。デヴィッド・リース・スネルとか言う知らない人。早速メリデスに話しかけてくる。彼もイラクにいた。話が合いそう。心が通いそう。どことなく沈んだムードのあるダニエルは、期待の持てそうなキャラだ。地味だがハンサムだし、思いがけない面見せてくれそう。

エグジット・スピード2

何かカゲの部分があったとしても、あっけらかんとしたメリデスの陽の部分が補ってくれそう。共に戦ううちに彼は変身し、メリデスも変わり、ラストではたぶん二人はカップルに・・。走り出してしばらくすると、バイクに乗った一団が現われ、襲ってくる。そのうちの二人ほどが死んだせいで事態が悪化するのだが、ダニエルは撃たれて死亡(早!)。最初から最後まで、連中が何をしゃべってるのかは不明。多くの場合無言、しゃべったとしても聞こえず、聞こえたとしても聞き取れない。何を考えているのか、何をしようと思っているのか不明。介抱しようと駆け寄ったダニエルをいきなり撃ち殺すくらいだから、道理も何も通じない動物以下の連中だってのは一目瞭然。彼らは一般のバイカーグループとは別の存在。クスリ漬けのクレイジーな集団。デジレとデュークは出会ったばかりだが、いちゃつくことしか頭にないバカップル。ただ、デジレはバイカーと付き合ったことがあるから、自分達がとんでもない連中に関わってしまったとわかっている。付き合っていた荒っぽいバイカーでさえ、この集団・・ノマドを恐れていた。デュークは頭空っぽの意気地なしだが、いざとなれば勇気が出せる。この映画はどこと言って新味もないし、スケールの大きさもない。バスやバイク、自動車解体工場でちまちまやっているだけ。それでも何とか見ていられるのは、登場人物のキャラに工夫がされているから。ハリントンとウォード以外は知らない人ばかりだが、それぞれはまり役。ただ、うまく個性を出している反面、こんなことするか?と首を傾げてしまう行動を取るので、その点はバツ。例えばデジレは様子をうかがおうと、首を伸ばしたとたん頭を撃たれて即死。撃ってくれと言わんばかりじゃん!シングルマザーのモーディーは、母も姉も乳ガンで死亡。自身も乳ガンになり、手術を受けた。娘が二人いるので、死ぬわけにはいかない。ガンから生還したように、この窮地からも生還してやると決意している。一つの場所にじっとしているタイプではなく、行動を起こす方を選ぶ。闇にまぎれて一人で抜け出し、助けを呼びにいく。乳ガンのキャンペーンでマラソンに出たこともある。走りには自信がある。途中いろんなピンチに遭遇。襲ってきた女バイカーも殺す。そのうち別のグループ・・解体工場にいる連中が加勢を頼んだグループ・・がアーチーを痛めつけているところに出くわす。

エグジット・スピード3

その、走っている途中・・懐中電灯を振り回していて・・アンタバカか?見つけてくださいと言わんばかり。彼女が助かるのも、アーチーと出会うのも、母の一念と言うより映画だからでしょ。モーディー役リー・トンプソンは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で知られているらしい。ネットで調べると、ほとんどの人は彼女が出ているから見る気になった・・みたいな。で、やっぱりみんなして「老けた」と書いていて。私自身は「バック」シリーズは一作も見ていない。ジェリーはフットボールか何かのコーチだったが、アルコールと暴力のせいで教職を解雇されたらしい。すぐカッとなるし、リーダーになりたがる。バスが襲われ、二人のバイカーを倒した時、相手の銃を手に入れると、それを放さない。軍人であるメリデスに渡せと言われても断る。力の象徴にしがみつき、人の言うことに耳を貸さない。それって実は性格の弱さ表わしている。その弱さを隠すためのアルコール依存、暴力で。ジェリーもデュークも、よい面が現われ始めたところで死んでしまうのはお約束。さて、お目当てのハリントンだが、不精ヒゲを生やし、何となくさえない感じ。普通なら頭がよくて身ぎれいで、他の者を生へと導くリーダー的な存在。お坊ちゃま風に見えて実は軍の特殊部隊にいて、武器とサバイバル技術のエキスパートとか。元軍人でそっちの方へ行きそうだったダニエルは死んじゃったし・・と、彼に期待するのだが・・。サムは見かけ通りの落ちこぼれ組。何をやってもだめとまわりに思われるタイプ。自分ではそれなりにがんばっているんだけど、裏目に出ちゃう不運な男。妻はあいそをつかして出ていって、すでに再婚している。自分の子供にも会わずじまいだったけど、ふと会いたくなって、このバスに乗った。クリスマスプレゼントを買ったけど、うまく包装できない。その不器用さが泣かせるが、こういうタイプは何かきっかけがつかめれば、今の状態から抜け出せそう。彼をこっそりスケッチしているのがアナベル(アリス・グレチェン)。ほっそりしていて、目の化粧のせいでエジプト風な顔立ち。ベジタリアンで、弓矢が得意で、絵も描く。日本にもいそうなタイプ。コミケとかファンタジー系コスプレとかそういうのにはまっていて。定職につかず(つけず)、飢えない程度にアルバイトをし、自分の趣味中心のフリーな生活。

エグジット・スピード4

まわりはオタクやマニアばっかりで、恋の対象にはなかなか出会う機会がない。でもやっぱり心の中ではいつか王子様が現われる・・と夢見ていて。美しいものに敏感だから、サムを見たとたん心を動かされる。内気な性格だから離れたところからこっそり観察して絵にして・・。普通の映画なら、彼女の片思いは実らない。サムはメリデスと結ばれるだろう。彼女は彼に気さくに声をかけ、話を引き出す。何か苦悩をかかえていたとしても、彼女なら消してくれる。美男美女だし、主人公とヒロインだし。でも・・ここでも予想ははずれる。的しか射ったことのないアナベルは、バイカー達を射るよう頼まれても絶対嫌と断る。自分はベジタリアン・・殺生なんてとんでもない。まあバイカー達は人間以下、動物以下の連中なんだけど、それでも決心つかない。でもそれだと映画にならないので、さんざんごねたあげく行動を起こす。そのおかげで何人か倒すことができる。鈍いサムも、彼女の思いに気づいたのかラストではカップル誕生。微笑ましくてよかったけど、その反面サムの子供への思いがいつの間にかあいまいになってしまっていて。始末つけないまま映画終わっちゃったけど、少し遅くなっちゃったけど、これからアナベルと二人して会いに行くとかさあ・・セリフで一言欲しかったな。さて、一行の中に、太って小柄なラモンという初老の男がいる。バス停近くの店で雑用やってるメキシコ人か何か。スペイン語しか話せないので、多くの場合一人で行動する。殺伐とした雰囲気になりそうなところを救ってくれる、息抜き的存在。解体工場へ逃げ込むと、早速そこらにあるもので武器を作り始める。ジャガイモ・バズーカとか言うよくわからない武器だが、それなりに威力はある。なぜ彼がこういうものを作れるのかは不明。言葉が通じないせいで、他の連中の口論とか絶望とかと無縁でいられる。武器を作るという目標に向かって一直線、わめいたりおびえたりしている暇はないというのがよかった。こういうタイプには生き残って欲しいと、見ている者は思う。で、ラストそうなったのでホッ。さていよいよメリデスである。正直言ってこの映画、誰が主人公なのかあいまい。取りあえずサムかな・・って感じ。アメリカ版DVDのカバーの表にはハリントン、ウォード、トンプソンの三人がうつっていて、メリデス役モンドの写真はなし(裏は知らんが)。

エグジット・スピード5

まだ知名度が低いのか。オバサンのトンプソンより若くてきれいなモンド載せるのが普通じゃないのか。調べてびっくりしたのは、彼女「レストストップ2」に出ていたらしいのだ。ニコール役・・と言うことは壊れたトイレに出てきた・・文字通りクソまみれのジャレッドの前に出てきた幽霊の・・。でも顔を思い出せない。こっちの映画では目の覚めるような美女で。白くてすべすべの肌、真っ直ぐでつややかな髪。やや太く、意志の強さを表わしているかのような眉。涼しい目元、きりっとした口元。ゆきずりの男と一夜を共にするようなだらしのない女・・と、冒頭では思えたが、その後の彼女は若さと健康さ、清潔感にあふれている。取れたてのみずみずしい果実のような。見かけだけでなく内面も驚くほど正常。規則にとらわれない柔軟さ、苦境にあっても絶望せず前向き。脱走の理由は不明だが、その美しさ故セクハラに会ったのか。頭がよすぎて上官が無能に思えたのか。軍への不満も怒りも口に出すことはない。人を傷つけたり殺すことに迷いが生じたのか。しかしバイカー達に襲われると、体や頭がすぐに正しい反応をし始める。混乱の中・・しかも自分も腹を撃たれるのだが・・誰が誰を、何発撃ったのか、冷静に把握する。勇敢で有能で無駄がない。こういうヒロインは珍しい。多くのことが説明されないままだが、それを不満に感じない。かえっていろいろ想像して楽しめる。自立しているので、誰かを頼ったり恋に落ちたりしない。だから敵を倒し、やれやれ助かった・・となっても、モーディーのように娘達と再会して涙にくれるとか、サムとアナベルみたいにカップルになるとか、そういうことがない。前一人だったように、これからも一人。前追われていたように、これからも追われる日々。彼女にとって逃亡はゲーム。それがわかっているから、アーチーもわざと脱走の機会与えたりする。いっそのこと今回の事件で死亡・・遺体はどこに埋められているのか不明ってことにすればいいのに。バイカー達はスタントマンがやってるから、セリフとかなしで正解かも。走っているバイクの上に突っ立ってみたり、いろいろ難しい技見せるけど、見事と言うよりオバカ。それに負けずにサム達の方もオバカ。あかあかと電気をつけて工場全体を丸見えにするってどういうことよ!そもそも高速道路からはずれて脇道に入るなんて相手の思うつぼでしょ。バスの方が大きいんだし、ガソリンだっていっぱいだから長く走れる。撃たれてパンクしたとか言うんならわかるけど。でも、走ってる状態ずっとというのは撮影大変だからね。