アウト・オブ・タイム

アウト・オブ・タイム

私はこういうひっそりと公開されている作品を見に行くのが好きだ。確か「ソウ」を見た時予告がかかったのだと思う。別にウェズリー・スナイプスのファンじゃないし、内容もどうってことなさそう。主人公がピンチに陥るありふれたサスペンスものということしかわからない。普通なら気がつかない映画。でも気がついてしまった以上は・・。私が行かなくて誰が見に行くのよ!まあ不条理な感情だけど、そういうことが時々あるのよ。お客は一回目は数人、二回目は十数人。がらがらなのはいつものことだけど、この映画館はそうでなくちゃ困るのよ。床はたいらだし椅子の背は高いしで、すっごく見づらい作りだからさ。さてスナイプスは1962年生まれだからもう40過ぎてる。でも顔つきや体つきにそれが出ない。いつまでこの若さが持つのか、ヘンな話だけどそれが楽しみ。彼は「ブレイド」シリーズで人気があるけど、私は二作ともひどい映画だと思っている。こっちの映画の方がマシ。アメリカのボルチモアという都市が舞台だが、実際にはブルガリアのソフィアで撮影されたのだそうだ。そう思って見ると、青っぽい夜のシーンにムードたっぷりのヨーロッパ風の香りが・・。全編夜なんだけど暗くて見にくいということもない。元陸軍特殊部隊のディーン。ボスニアでの出来事がトラウマとなって、日常生活がうまく送れない。恋人エイミーの勧めでセラピーに出たものの、途中で抜け出してしまう。だってあの連中みんなイカレてるんだもーん。ボクチャンだけ正常なんだもーん。あんなところで自分の悩み吐き出すのいやなんだもーん。早く家に帰りたいんだもーん。エイミーにプロポーズしたいんだもーん。・・と、このディーン君、現実から目をそらしぎみ。そりゃプロポーズされればエイミーは喜ぶだろうけど、現実問題として生活していけるの?エイミーはボルチモア市警の腕きき刑事。バリバリのキャリアウーマン。ディーン君、アンタ仕事は?主夫?彼が悩んでいるのは親友で戦友でもあったエイミーの兄の死に関連したこと。プロポーズより先にかたづけることあるでしょーが。そのためにセラピー行ったんでしょーが。ディーン君心の中に甘えがありますな。ちゃんとセラピーに最後まで出ていりゃあんなモメ事に巻き込まれずにすんだのよ。・・でも何か起きなきゃ映画にはならないのだわん。

アウト・オブ・タイム2

さて自白剤としても使える幻覚剤”XE”、あんまり強力すぎて使えないんだけど、それで一儲けを企んで持ち出しちゃったのがサリバン。CIAやらFBIやらDDTやら(違うって!)が入り乱れていて何だかよくわからんが、もし”XE”の情報がFBIにもれていたら密売は中止しなければならない。情報をつかんでいると思われるFBIの捜査官に間違われちゃったのがディーン君。サリバン達もいいかげん人違いだってことに気づけよ!君達も現実から目をそらしすぎ。自分達に都合のいいように解釈しすぎ。まあこの薬、ちょこっと何か言われただけでたちまちそれに影響された幻覚を見始める。だから悪用されれば誰もが殺人鬼・凶悪犯になりかねない。ディーンも”XE”を打たれるが、ピーターソンというおしゃべりな男のせいでエイミーの兄スコットの死にまつわる幻覚を見始める。FBIのことも”XE”のことも彼には何のことだかわからないし、でもこの連中とは戦わなければならないのだと(だってここはボスニアで、こいつらはスコットを殺そうとしているんだもーん)決心するしで、話がますますこんがらかっちゃうわけよ。このサリバンの手下ピーターソンて、ホントどうしようもないアホで、まあこんなのを雇った時点でサリバンの運命も決まっていたのよ。このピーターソン、ヘマをやって怒られても絶対にしょげるとか反省するとかいうことがない。黙っていろと言われても一言しゃべらずにはいられない(言ったことが全部暗示となってディーンの行動に影響するんだって何度注意されても、性こりもなくべちゃくちゃしゃべるのよ、このバカ)。このやり方で失敗したから次は気をつけよう・・ではなくて、さらにムチャな方法にエスカレートするのよ。しまいには笑っちゃうし、最後にディーンに始末されても自業自得だよ・・ってなもんよ。ディーンはこのようにひどい事件に巻き込まれてしまい、解毒剤を打たなければあと数時間で死んでしまう。FBIやらボルチモア市警には追われるし、自分を信じて孤軍奮闘してくれるのはエイミーだけ。・・でもあんまりかわいそうでもないの。何たって幻覚でフラフラになっているから、本人には悲壮感ゼロ。こういう設定って「コンバット」とか「UFO」にもあって、テレビシリーズの一本としてならいつもと違ったムードを楽しめるけど、映画としてはどうなのかな。

アウト・オブ・タイム3

映画の大部分主人公がフラフラというのは、緊張感保つの難しいよな。さてスナイプスは時々キレのいいアクションを見せてくれて、「ブレイド」シリーズのようなハデさはないけどとてもよかったと思う。苦労して身につけた技術はピンチの時に役立つし、とんでもない状況に置かれたせいで心の傷もどこかにふっ飛んでしまった。時には荒療治の方がきくのよ(でも大勢の目の前で堂々と人を殺しちゃったよ、薬のせいだとは言え・・これが新しいトラウマにならなきゃいいが)。その一方で強力な薬で神経系統がやられているにしては、体が動きすぎのような気も・・。まあパンフに書いてあるほどスリリングな内容でもなく、クライマックスではどうせ助からない命ならばと獅子奮迅の戦いを見せてくれるのが筋なのに、エイミーの膝枕でボクチャンシアワセ・・とふにゃっとなってるし、もうちょっとピリッとして欲しかったな。いちおうアクションスターなんだからさ。どちらかと言うとエイミーの強さの方が印象的だな。精神的な強さ。ディーンがそもそも間違われたFBI捜査官のジュノー(ワン デー シー ソウ ジュノー イン ザ フォレスト・・こんな英文読まされたっけ中学の時。映画のジュノー君はJunoじゃなくてJunodだけど。この人どっかで見たことあるなあと思ったら「ハム2」に出てた)、ディーンのことを「この世で一番運の悪いヤツだ」とか、「あんな男の命なんてどうでもいい」とか、まあ言ってくれるじゃないのよ。そりゃあ”XE”が出回ることによって起こる悲劇を未然に防ごうと努力しているのはわかるけど、それにしたってどうよ。ところがディーンが危機一髪で助かると(それもこれもエイミーのおかげなのだが)、「自分は間違っていた、この男はこの世で一番運のいいヤツだ」なんて言っちゃって、おいおい間違っていたってそういう意味でかよ!大勢の命も大切だけど一人の命も大切なことには変わりはないんだってことに気づけよ!てなわけで、全体的にはふにゃっとしているんだけど、でもまあけっこう楽しめた。それなりにドキドキさせられたし(させられたような気がする)。オイルを満載したトラックが道路から落ちそうになっているところは迫力があった。ヘリコプターからミニ・ガン(名前とは反対に重機関銃なのだ)を撃ちまくるところもよかった。「ブラック・ダイヤモンド」を思い出したよーん。