アウトランド

アウトランド

木星の衛星イオ、次々に起こる謎の事件・・たまたま見たNHKのCMにそそられて見てみましたの。最初はけっこうワクワクしてたけど、途中からあら?西部劇?保安官・孤立無援・殺し屋→まっぴるまのけっとー、げーりーくーぱー?ウーム(ここまで似せるか?)。セットは金かかってるんだろうなー、しっかり作ってあるもの。しかし・・宇宙を舞台にしてサスペンスを盛り上げようと思ったら、人がうじゃうじゃいてはだめなのだよん。あ、これ西部劇だから人たくさんいてもいいんですか。ゴールドラッシュじゃなくてチタン掘ってる。一年前から精神的におかしくなって死亡する者が急増したけど、こんなところにいればおかしくなって当然・・と誰も気にしてない。新任の保安官オニール(ショーン・コネリー)だけは不審に思い、調べ始める。二週間かそこらしかたっていないのに奥さんグレース・ケリー(←ウソ)はもうこんな生活耐えられないわと別れのメッセージ。息子は地球のことも知らないのよ!その気持ちはああもっともだーもっともだ。しかし!男には仕事が・・仕事をしているからこそごはんが食べられるのだよ、奥さんよ。辛いけど(余計な)心配しないですむぶん仕事に集中できる。事件を起こし、射殺された男の遺体が証拠隠滅のために宇宙にほっぽり出される前に血液を抜き取る。もう若くはない女医ラザラス(フランシス・スタンハーゲン)を夜中にたたき起こし、分析させる。ウム、やっぱり頭がおかしくなったのは粗悪な密造酒のせいか・・って違うがな!麻薬・覚醒剤・ダメ・ゼッタイ・・使用すると飛躍的に作業効率が上がるけど、10~11ヶ月たつと脳がやられて人間やめますか状態。元凶は総支配人シェパード(ピーター・ボイル)。仕事がはかどればボーナス出るし、みんな幸せ。今までの保安官はお金で黙らせることできたし、今度のオニールも・・と甘く見ていたのだが・・。隠していた薬を処分され、大打撃を受けたシェパードは腕ききの殺し屋を呼び寄せ・・何だやっぱり西部劇。次の駅馬車・・じゃないシャトルが到着するまでのじりじりするような待ち時間。・・全く2時間待って診察は3分で今度は薬で待たされ・・って違うがな!今は薬は院外処方。西部なら照りつける太陽でもうつすところだが、あいにくここはイオなのでカウントダウンされていく時間表示をうつすのよー。

アウトランド2

オニールの方はそれなりにごそごそ動き回るが、シェパードはその間何してたん?描写省略されてる。シャトル到着近くになると、人の集まる場所(もちろん酒場)へ出てくる。アリバイ作り。あと衆人環視の中ではいくら保安官でも自分を撃つことはできないしぃ。だってオレ丸腰だしぃ(おそらく)。オニールはいちおうまわりに声をかける。「助けて欲しい」・・でもみんな知らんぷり。保安官の仕事だろーが。これを見て思う。こんなヤツらのために何で命かけるのよーって。オニールとシェパードの対立はみんな知ってる。殺し屋が来ることもうわさが流されている。巻き込まれたくないと思うのは当然だ。ただ薬についてはみんなどう思っているのかね。・・と言うか知っているのかね。死者が続出しているのに、その原因が薬なのに何も感じないのかね。ひとごとだと思っているのかね。ここらへんは説明不足だが、この映画のテーマはみんなが不正に対して立ち上がることではなくて、オニールの孤軍奮闘ぶりを描くことだからねぇ。オニールだってみんなの協力期待しているわけじゃない。言ってみただけだもーん。誰も助けてくれなくたっていいんだもーん。だってこれはみんなのためにやっているんじゃなくて、自分のためにやっていることなんだもーん。こういうところへ流れてきているのは、過去に何かしら傷のある者だ。はっきりとはわからないが女医の言葉・・「医療過誤」・・彼女もそうなのかもしれない。シェパードがオニールに言う言葉「クソだめを転々として」・・オニールも過去に何かあったのかもしれない。薬の売人を突きとめるために、作業員の経歴をコンピューターで検索する。犯罪歴のある者がたくさんいるってことは・・この会社、採用にはあんまりそういうこと気にしてないってことで・・。ここは無法者のたまり場なのでござるよ、ニンニン。家族同伴が許されるのは上の者だけだから、下の者には気晴らしのために娼婦が用意され、酒場は大にぎわい。どーせ西部劇気取るなら酒場にはピアノを置いてよ!うじゃうじゃいる作業員はその日暮らしのどーでもいい存在として描かれる。協力してくれない代わりに邪魔もしない。オニールは保安官だから武器はたっぷりあるし、監視カメラだの電話の盗聴だので有利な立場にある。協力してくれるのは女医だけだが、若くないだけに色気抜きでつき合えるし、ケガをした時など頼りになる。

アウトランド3

奥さんは若くてきれいだけどふにゃふにゃしているし、今度の場合そばにいないのはかえって好都合なのでござるよ、ニンニン。シェパードがオニールの妻子人質に取って苦しめるかと思ったらそんなこともなくて・・ゴルフ三昧?オニール対二人の殺し屋、および内通者(電話の盗聴で自分の近くに裏切り者がいることはあらかじめわかっていたのよーん)との「真昼の決闘」。・・イオだから真昼かどうかは知らんけど、とにかく三人ともやっつけて酒場に現われ、くたばれとか言ってシェパードを一発で殴り倒す。「キャ、ステキ!」と女医(および私)は大いに溜飲を下げるのでありました。あー私ももうちょっと若かったらほっとかないんだけど、あんないい男。顔じゃなくて心根のことよ。この年になると男は顔じゃない、髪じゃない、なかみなの!でもねーいい男ってみんな結婚しているのよねー。でもって私も他人の家庭壊すほどバカじゃないしぃ。「これから起こるゴタゴタを見物するのが楽しみ」なんて我ながらカッコいいこと言っちゃった。これホントは「私はあなたを愛しているけど、愛しているからこそ身を引きます・・」っていう意味なのよー。もちろんオニールはちゃんとわかっていて、心からの感謝の言葉を返してくれたのよー。それだけで私には十分。こんなことめったにあることじゃないわー(ラザラス女史談)。この映画エイリアンと戦うわけじゃなし、クライマックスの死闘も宇宙服だから動き鈍いし、殺し屋はアホだし、シェパードは何もしないし。殺し屋の発砲で温室は爆発・・おそらく基地では銃器の所持は保安担当員以外は厳禁でしょうね。一発であんなことになっちゃうんだから。シェパードが何もしないのは安楽な暮らしに慣れて危機感覚がマヒしているせいでしょうね。薬で作業効率を上げて大儲けするなんて、長く続けられることじゃない。いずれはからくりがばれる。だからできるだけ短期間に儲けて、ばれる前に別の探鉱に移ることが望ましい。そのためにも自らが陣頭に立って指揮し、状況に気を配るはずなのだ。部屋に閉じこもってゴルフ三昧なんてありえない。殺し屋が失敗すれば今度は自分の命が危ないんだし。でもゴルフ・・ってことは自分でもどうしたらいいのかわかんなくなっちゃっているんでしょうね。人にやらせることに慣れてしまって、いざ一人きりになるともうお手上げ。

アウトランド4

それにしても会社がシェパードに薬を使わせているのか、彼がこっそり使っているのか、使っているのを会社が見て見ぬふりをしているのかそこらへんあいまい。薬の使用が公になればチタンの採掘権が他の会社に移るようなことを言っていたけど・・。その場合責任は全部シェパードになすりつけられ、反論できないように口をふさがれ・・。だったらシェパードも「座して(ゴルフボールを打って・・かな?)待つ」のではなくて、死に物狂いになるはずだと・・。てなわけで悪役がしょぼいと映画も盛り上がらないのよ。でも熟年カップルががんばったのでそれでよしとしましょうかね。この二人に共通するのは「意地」なんです。それと二人とも過去に傷を負っていて、地位の向上は望めない。今の状況でがんばるしかない。二人に訪れたのはこの状況の中でいかに高潔でいられるかという試練なの。オニールの場合、クソがクソだめに回されてきたわけだけど、つまり会社が自分をここに配属したわけだけど、それは合っているのか。自分は腐った機械を構成する腐った部品なのか。自分が今いるところは確かに腐っているけど、そこにいるからって自分まで腐っていると言えるのか。自分が腐っていないことは自分が一番よく知っている。自分が腐っていないことを証明したい。起こっていることに目をつぶり、シェパードから金を受け取れば自分は腐る。妻子とともにここを去れば、腐っていないことを証明できずじまいとなる。どっちにせよ会社の配属は「正しかった」ことになってしまう。だからオニールはここに残ることを選んだ。結果がどうだろうと、つまり死のうが生きようがそんなこと大したことじゃないのだ。重要なのは自分が腐っていないことを証明することなのさッ!会社が間違っていることを証明することなのさッ!地味でしょぼい映画だけど、こういう根本的なことがはっきりしっかりしているので、この映画には好感が持てますな。最後はハッピーエンドで、オニールは妻にメッセージを送る。列車に間に合いそうだ。切符の手配を頼む。殺し屋達の乗った駅馬車が予定よりも早く到着したおかげですな、きっと。時間通りに着いていたら、あるいは遅れていたら、オニールは地球行きの列車に乗り遅れていたことだろう。え?駅馬車じゃないだろうって?列車じゃないだろうって?いやしかしシャトルは規模から言うと駅馬車でしょう!

アウトランド5

ところでどこから来たの?イオのどこかから?地球行きは規模としては長距離列車でしょう!寝台車(冷凍睡眠装置)もついてるし・・。いちおうこんなハッピーエンドでいいの?という疑問はある。オニールがシェパード殴った後のこと全然出てきませんから。すぐに荷造りしてます。オニールは当然クビになるか自分から辞職するかするでしょうが、彼がいなくなった後、ここでまた同じことがくり返されるであろうことは予想がつく。オニールは会社に薬のことは報告しないだろうし、会社の悪事を世間に公表することもしないだろう。そんなことをすれば相手の力はシェパードの比ではないから、自分や妻子の命が危うくなる。しかも自分達はこれから冷凍睡眠という無力な状態に入るんだし・・。シェパードを地位から引きずり下ろしたことをみんながどう思っているかも不明だ。ほとんどの人は余計なことしやがって・・と思っているかもしれない。次の支配人が来て、また薬を使い始めたとして、自分達の健康を守るためにみんなが団結するかどうかはかなり疑問。でもオニールにとっては、自分が腐っていないことを証明できたんだから、あとはどうなろうと知ったこっちゃないのよ。作業員達が腐ったままでいるか、腐ったままでいることを拒否して自浄に乗り出すか、それは彼ら自身の問題なの。ただオニールは会社に大きな損害を与えたわけで、その点は大丈夫なんですかね。つまり通路とか温室とか、仕事上やむをえないとは言え、また彼一人の責任ではないとは言え、壊しちゃったでしょ。まあいいか。おそらくシェパードの勘定書きにみんなつけて清算されるんでしょうから。さてイオが舞台になっていて、かなり未来の話だと思うんだけど、ちーともそんな感じしませんな。人がうじゃうじゃ→何でロボット使わないの?あれだけの人数養う食料、空気・・大変だと思う。ロボットなら給料いらんし、お酒も女も・・。HALみたいなしゃべるコンピューターも出てこない。「デビルスピーク」あたりのコンピューターと変わらん(何のこっちゃ)。宇宙の果てに人がうじゃうじゃいたり、息子が地球知らないくらい宇宙を転々としているってことで、地球にはもう住めないのかしら・・なんて最初は思ったのよ。人口の爆発とか環境の悪化とかさ。そしたらわりと簡単に地球戻るしさ。何かよくわかんないよなー。まあ西部劇だからいいんだけどさ。それとも星部劇?