陰陽師(テレビ朝日)

陰陽師(テレビ朝日)

「陰陽師」だなんてずいぶん久しぶりだ。テレビだと三上博史氏主演でやっていたような。一回くらいは見たような。今回のは「陰陽師 瀧夜叉姫」という原作があるようだ。もちろん読んだことなし。一時夢枕獏作品を何冊か集めたけど、そのうち興味もなくなって。録画する気になったのは晴明役が佐々木蔵之介氏だから。そう言えば似合いそうだな・・って。佐々木氏はジェームズ・スペイダーに似ているので興味はあったが、テレビも映画も見たことなし。だいぶ前「間宮兄弟」というのをWOWOWで見始めたが、数分で挫折。だってセリフ全然聞こえないんだもの。あの頃は字幕なかったし。そんなこんなで今回が初めてどす。ちょっと年食っちゃったけど、原作の晴明だってそんなに若いわけじゃない。とは言えあんまり期待はしてなかった。日本の2時間ドラマってなかみ薄いし、作りがチャチ。演技へたなのが恥ずかしげもなく出てくる。いやホント、そういうのに出会っちゃうと、見ているこっちが恥ずかしくなる。ましてや舞台は平安時代。何を見せられることやら。で、結果は・・思ったよりよくできていて楽しめた。あまり話を広げることもなく、将門の復活一本に話をしぼったのがよかった。途中で虫好きの姫君露子が出てくるが、これは「陰陽師 龍笛ノ巻」にある。「堤中納言物語」の「虫めづる姫君」を元にしたものだろう。脇にそれるのはそれくらい。941年、晴明は兄弟子達からは狐の子とバカにされている。ある晩、師の賀茂忠行(大出俊氏)は鬼の一行と出会うが、術を使って向こうからは見えなくする。鬼の後から黒装束の男達がかつぐ輿が来るが、それには少女が乗っていた。後でわかるがこれが瀧子姫。そこから960年に飛ぶ。博雅(市原隼人氏)が晴明の屋敷を訪れる。市原氏は「陰陽師2」に出ていた人だ。酒を酌みかわしながら小野好古の話をする。好古にしろ他の人にしろ、事件が起きた時は一人なのだが、宮中ですぐうわさになるってことは、自分がまわりに話すのか、隠れて見ていた召使いがいたのか。それはさておき、好古のところに盗賊が入ったのに、何も取らずに出ていった。浄蔵(寺田農氏)からの預かり物があるはずと言っていたが、好古には思いあたるものはない。

陰陽師2

捜し物は結局見つからなかったようで。そこへ晴明の兄弟子賀茂保憲が来る。将門の乱の時、手柄を立てた平貞盛が瘡に悩んでいるが、様子を見てきて欲しいと頼まれる。晴明は気が進まないが、行くことにする。大通りを歩く晴明と博雅。映画とは反対で、晴明の方が背が高いのが妙な感じ。途中で道満(竹中直人氏)に会うが、彼の手にも負えないようで。貞盛のそばには息子の維時がいるが、冒頭出てきた若い時の晴明と顔がよく似ていて、一瞬あれれ?と思う。他にもよく似た人がいっぱい出てきて見分けがつかん。貞盛の治療にあたっているのが医師の祥仙と助手の如月(剛力彩芽さん)。瘡はよくなったり悪くなったりをくり返しているようだが、晴明にはこれは瘡ではないのがわかる。次に露子が登場。彼女は猫ほどもあるイモムシを黒丸と名付けてかわいがっている。この黒丸は実は露子の行動に困り果てた父橘実之が、道満に頼んで作り出したもの。蠱毒というらしい。結局露子の虫好きは治らなかったわけで、実之はたぶんお金取られ損。女房達は虫がいやで困り果てている。だから露子を手伝ってくれるのは男の子。そのけら男役の子はかわいい。「堤中納言物語」の「虫めづる姫君」にはけら男(おけら)の他にひき麿(ひきがえる)、いなご麿(しょうりょうばった)、雨彦(やすで)などの名前が出てくる。この黒丸はさなぎになり、その後美しい蝶に。露子の心が美しいからで、その逆ならえらいことになっていただろう。もちろん「堤中納言物語」には黒丸は出てこない。次に俵藤太(国広富之氏)が忍者軍団(違うって!)に襲われるが撃退。彼の愛刀黄金丸は、斬られると傷口が20年ふさがらないという妖刀。将門の首を斬り落としたのもこれ。他に源経基は毎晩悪夢を見るせいで眠れなくなってるし、右大臣藤原師輔は大蛇に噛まれた。いずれも将門を討った時の関係者だ。20年前、将門を討つよう命じられても、藤太は気が進まなかった。ところが会ってみると将門の様子が以前と違っている。そばには興世王という得体の知れない人物がいる。結局藤太は、将門の愛妾桔梗(笛田優子さん)を殺したという身に覚えのない言いがかりをつけられ、将門と戦うはめに。首をはね、体を切断し、首の方は都へ持ち帰ってさらすが、そのうち消えてしまう。

陰陽師3

後でわかるが、持ち去ったのは浄蔵。二ヶ月もかかって護摩壇で焼くが、ちょっとしたスキに灰の半分を盗まれてしまった。だんだん正体不明の女や黒装束の男達の目的がわかってくる。19年前晴明が見た輿には集められた将門の胴体が乗っていたらしい。少女は瀧子姫で、今は成長して如月になっている。祥仙は実は興世王で、貞盛の治療と称して、盗んできた将門の首の灰をすり込んでいた。貞盛は将門のいとこで、血がつながっているから、灰が半分でも何とかなるのか。瀧子姫達が行動を起こし始めたのは、黄金丸に斬られた傷口がふさがるのに必要な20年がたったから。なるほど、うまく考えられている。将門も興世王によって蠱毒の術をかけられている。露子と違ってこっちは正室とその子供達を殺された恨みでいっぱいだから、術が完成されたら京は魔界と化す。京は恨みやら呪いやらでいっぱいなのだから。それを晴明、博雅、藤太の三人で食い止めるわけだ。でも一番動いていたのは意外にも藤太でした。国広氏と言えば「噂の刑事トミーとマツ」。懐かしいなあ。「麒麟がくる」にもちょこっと出てたし。いつものことながら笛のシーンには目をつぶるしかない。指が合ってない、息つぎが合ってない・・。佐々木氏ははまり役。目つきが独特。あまり前に出てくるシーンがなく、後ろにいることも多いけど、晴明ならそれもありでしょ。柱によりかかっているところとか、酒を飲むシーンとか、博雅にかけるお約束のセリフとかも、いい感じ。欲を言えば陰陽師としての仕事をしているところも描写して欲しかったかな。あれじゃあ遊んで暮らしてるみたいに見えちゃう。剛力さんは野村萬斎氏に顔立ちが似てる。彼女が男装して晴明やったらさぞ似合うことだろう。その場合博雅は誰がいいかな・・なんて考えるのはいい時間つぶしになる。母親桔梗役笛田さんともよく似ている。と言うか、父親に似なくてよかったね。道満はどっちつかずで、勝った方につくというスタンス。そこらへんをうろついてるという感じ。そのうち強力なライバルになるけど、今のところはまだ・・ということなのか。