オクトパス

オクトパス

1970年代のパニック映画かな・・と思ったら違った。2000年製作のクズ映画・・と言うかタコ映画。まあ本来なら豪華客船を舞台に大ダコと戦うとか。巨大な船ならなかなか沈まないから時間稼げる。でもそんなお金もないし。ほとんど原潜でちまちまっと。セットとかCGで。水かけてカメラ揺らして。冒頭はソ連の原潜レニングラード号。ケネディの警告無視してキューバへカストロへ何か運ぶ途中、アメリカ軍に攻撃される。ここがけっこう長い。強行する艦長は何考えてるのかね。乗務員全員反対するという珍しい(←?)設定で時間稼ぎ。沈没して海中にこぼれ出すドラム缶。見ている人全員これは放射性物質で、そのせいで小ダコが大ダコになったのだ・・と思う。これが1962年の話で、38年たってブルガリアの首都ソフィアのアメリカ大使館。ヘンリーとロイのCIAコンビ。パン売りの老婆が簡単に中へ入ってきて、爆弾を残していく。あら~そんなに警備ゆるいの。爆発とそれに続く追跡、また爆発。それよりタコはどうなってるんだ!政治経済の分析が専門の新米エージェント、ロイにとっては突然すぎてどうしていいかわからない。老婆に変装していたのはテロリスト、キャスパー。ロイは銃を突きつけたものの撃つことができず、取り逃がしそうになるが、瀕死のヘンリーが撃って車は横転。ロイは車が火に包まれる前にキャスパーを助け出すはめに。ヘンリーは死に、大使館員や、かわいい少女マギーも犠牲に。気の毒だけどタコは?登場してすぐロイは無能ぶりをいかんなく発揮。この後何度も同じミスを犯し、そのせいでほとんどの人はこの映画を酷評しまくる。おかげで少しは大ダコへの非難は減ったとか?さて、キャスパーをアメリカへ護送するわけだが、途中で仲間が救出に来るだろうから、極秘でやらなければならない。で、CIAの長官(たぶん)達が白羽の矢を立てたのが原潜ルーズベルト号。艦長のショウは、よくわからんが厄介者らしい。ロイも畑違いの新米・・現場での経験なしだが、この護送役をやらせろと。ここらへん長官らが何を考えてるのかよくわからない。ぜひ失敗してくれと願ってるとしか思えない。キャスパーやその仲間を一網打尽にするチャンスだから普通なら腕ききを配備するはずだが、護送に失敗してもかまわない、責任はみんなショウやロイに押しつければいいと考えてる感じ。できれば全員死んでくれるのが一番と考えてる感じ。

オクトパス2

さてこのショウだが、どんな変わり者かと思っていると意外とまともで拍子抜け。艦には海洋学者のリサが乗り込んでいる。彼女はいわば映画のお色気担当である。裸をめぐるエピソードはありきたりだが、変に差別だとか言い立てたりしないのがいい。また、こういうのでよくあるのが大ダコが登場してやっつけようとなる時、学者が貴重な研究材料だから生けどりにせよとか反対するものだが、そういうのもなしなのがいい。ところで彼女の調査目的は何だっけ?艦は「悪魔の目」と呼ばれる海域を通るらしい。そこではもう27隻も沈んでいるらしい。一方キャスパー奪還を目論む連中は、豪華客船に客や客室乗務員として乗り込んでいる。家族を人質に取られた船長は彼らの言いなりだ。ただ、よく考えてみると別に豪華客船を乗っ取らなくても・・とは思う。もっと小回りのきく小型船の方が。でもぜひ大ダコに豪華客船襲ってもらわないと・・他に見せ場が。そりゃルーズベルト号も襲われるけど規模が・・。海中でよく見えないし。こういうのを見ていて不思議なのは、潜水艦っていざという時の脱出方法、避難方法がないように思えること。深海にもぐっていると生身じゃ持たない、外に出られないってのはわかるけど、そういうの・・深海時での事故に対応した、船で言う救命ボートにあたるものは全く配備されてないの?話を戻して大ダコにやられたせいで、あるいはキャスパーに殺されたとか自殺とかでクルーは次々に死ぬ。何で死んでるのかよくわからないのも数人いたけどスルーされる。生き残ったのはショウとロイとリサとキャスパーの四人。生き残るかなと思ったブリックマンの退場は残念。客船に引き上げられ、喜んだのもつかの間、今度はキャスパーの仲間につかまる。彼らは船に爆弾を仕かけ、乗務員や客もろとも船を沈めるつもり。テロリストだからさっさと引き上げるなんて、そんなもったいないことはしない。何か爆破して犠牲者出さないと。しかし結局キャスパーを始め、テロリスト達をやっつけてくれたのは、皮肉にも大ダコであった。大ダコが襲来しても船内放送とか全くなしで、客は右往左往するだけ。ロイ達は潜水艇でルーズベルトから脱出したのだが、救出された時点で大ダコのことは船長達に何も言ってない。客船を襲うとは考えてなかった?(甘い!)

オクトパス3

で、大ダコだが、ドラム缶のなかみは炭疽菌。それを摂取したタコが突然変異をくり返すうちにあんなに巨大になったと・・そういうことらしい。もっともネット上の紹介ではみんな放射能と書いてある。炭疽菌はテレビ用?で、大ダコ君は鉄分が不足してイライラしているのだそうで、そこはうなずくべきなんでしょうか、笑い飛ばすべきなんでしょうか。ロイの無能ぶりはその間も続き、見ている人を(鉄分不足じゃなくたって)いらつかせる。何度もキャスパーにしてやられる。キャスパーは仲間のおかげでやっと自由になって、迎えのヘリも来て。ロイは銃を向けるけど、ここに至っても撃つことができない。この映画アメリカではビデオ発売ですか?映画館で公開されてたら怒った客からスクリーンに何飛んできたかわからないね。勝ち誇るキャスパーだけど、そうやってぐずぐずして楽しんでいたせいで、ヘリごと大ダコの餌食に。よかった、よかった。ラストは爆弾入りの潜水艇を大ダコにお見舞いする。潜水艇の存在を知った時には、エッ何でこれで早く脱出しなかったの?とびっくり。でもよく考えてみたらこれはリサの調査用なんだわ。数人しか乗れないから、クルーが次々に死んで四人になってからでないと出してこれないんだわ。でもよく他のクルーがこれを使って逃げ出そうとしなかったわねえ。と言うわけでメチャクチャなストーリーのクズ映画だったけど、私はけっこう楽しめた。ロイにうんざりさせられたのは確かだけど、それでいてわかるのよ。自分の能力以上のこと、しかも専門外のこと押しつけられて、しかも相棒なしの一人きり。それといくら相手がテロリストだと言っても、人を撃つのってそう簡単にできることじゃない。殺そうとする時に体が動かなくて、助けようとする時には(たとえそれが殺してやりたいくらい憎い相手でも)体が動くってのは、ある意味リアル。キャスパーは反対で、人の命なんて何とも思ってない。自分のことしか考えないエゴイスト。ロイの心理を操って喜ぶ。リサのキャラはさっぱりしていておおらか。ブリックマンに気があるのかなと思ってるとロイとキスするし、ラストはショウと。結局ショウが本命?出演者は知らない人ばかり。ロイ役ジェイ・ハリントンはジェイク・ギレンホール似のハンサム。ショウ役はデヴィッド・ビークロフト、リサ役はキャロリン・ロウリー。キャスパー役ラヴィル・イシアノフは「メンタリスト」に二回ほど出ていたらしい。大ダコは口の部分がエイリアン風。画面は大揺れで何が何だかわからない。素人のロイが初めての潜水艇の操縦ができちゃうというのはご愛敬。大ダコをやっつけるのがリサでもいっこうにかまわないのにね。