インストーラー

インストーラー

WOWOWで見た。「ブルー・レクイエム」のアルベール・デュポンデルが出ているとあっては見ないわけにはいかない。彼の出演作ってあんまり見る機会ないから。私は彼は「フランス版健さん」だと思っている。まだ二作しか見てないけどね。奥さん(あるいは子供)を愛し、無駄口はきかず黙々と行動する。めったに笑わず過酷な運命も耐え忍ぶ。一匹狼。人生には不器用。ダヴィッド(デュポンデル)は任務の途中妻サラをなくす。夫婦で犯人追っかけ、銃撃戦というのは・・だって、相手のことが心配でミスとか出ないのかな。愛し合ってるのならなおのこと。とにかく悲しみに沈むダヴィッドだが(奥さんに子供ができて喜んでいたようにも見えたが、だとすると悲しみも二倍・・)、ある殺人事件を担当することになる。被害者タチアナの妹エレーナは行方不明だ。新しいパートナーとしてマリー(マリー・ギラール)が配属されるが、最初のうちはうまくいかない。マリー役の人は口やほっぺのあたりが幼い男の子のようで、なかなかよかった。どこかあどけない感じで、誰かに似ているんだけど・・パブリート・カルボとか。これとは別に、交通事故にあい、整形手術で顔は何とか元に戻ったけど、記憶に欠落があることに悩むマノン(メラニー・ティエリー)が出てくる。医師の母親ブリューゲン(マルト・ケラー)が世話をやくが、マノンはどこか違和感を感じている。ダヴィッドが所属しているのは欧州警察機構(ユーロポール)。いちおう刑事?連続殺人事件の犯人で、サラを殺した仇でもあるニコロフを追うが、ニコロフには別の顔もあるらしい。国土監視局のベッケン(マリーの伯父)によると、ニコロフはクリサリス(これが原題)という機械を盗み出し、高く売りつける気らしい。クリサリスは記憶をあやつる機械で、売りつける気らしい・・と言いつつもうブリューゲンが私用に使ってるし。彼女は何とか娘を元通りにしたい。事故にあったマノンが記憶障害に悩む・・と見えるが、エレーナが行方不明という時点で「はは~ん」となる。マノンは実はエレーナで、クリサリスを使ってマノンの記憶を移植しようとしているのだ。記憶障害のあたりは「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」風味。フランス映画ってこういうの好きだなあ。サスペンスアクションにSF風味、オカルトホラー風味をつける。「ストーン・カウンシル」もそうだった。

インストーラー2

あと無意味なファイトシーンくっつけるのも好きだなあ。「クリムゾン・リバー」のヴァンサン・カッセルのファイトシーンとかさ。必要以上に長くて、そのせいで単なる見せびらかしに見えてしまう。「インストーラー」のファイトシーンも洗面所とかバスルームとかブタ箱とかわざと狭い空間選んでる。カメラをゆらすなど小細工してるが、ハリウッド映画にくらべればカットは長め。細切れにしなくても本人達はちゃんとできるんだぞ~と言わんばかり。そりゃ私だって細切れはいやだけど、ファイトシーンの執拗さにはちょっと引く。そりゃスポーツでもゲームでもない、殺すか殺されるかのガチンコ対決だから、あんなふうで当然なんだけど、当人達の必要性(戦わなきゃならないんだ!)より、作り手の欲望(見せたいんだ!)を感じる。迫力に感心すると言うより「アンタもスキねえ・・」と引いてしまうのだ。デュポンデルの方も、一見そんなふうに見えないけど、必要とあらばアクション見せますぜ、用意整ってますぜという感じ。それでいてブルース・リーとかセガールみたいに無敵ではなく、けっこうやられてのびていたりね。時代設定は不明だが、近未来ってやつだろう。近未来的なことはCGでクリアーできる。画面は白と黒とブルー主体。要するに寒色系。しかも暗い。近未来はエネルギー不足で節電社会なのか。いやいや、ただスタイリッシュを気取っているだけ。デュポンデルは「ブルー」より少しやせ、若く見える。いや本当に細くなったのかどうかは不明だが・・画面いじってあるし、クローズアップもなし。途中でダヴィッドがクリサリスで記憶喪失にさせられたりするけど、彼だけ記憶失ったってまわりの者(マリーとか)はニコロフのことみんな覚えているのだから、こんなことしたって無意味だと思うが・・。無意味の他に意味不明もある。妻を殺された後、なぜかオフロで息止める練習するダヴィッド。ニコロフに襲われた時、フロの水につけられ、溺れたフリして油断させ、水の中で目がパッチリ。逆襲だ!ああ、こういう時のためにあらかじめ潜水の訓練してたのね。でも風呂場で襲われるってなぜわかったの?自分の部屋で7/4って日付メモるんだけどなぜ?ダヴィッド君予知能力でもあるんですか?さっぱりわからん。

インストーラー3

マリーはニコロフ(の弟)尋問するけど、成果ゼロってのもなあ・・。近未来なら尋問の仕方も今とは違うと思う。今はやりのiPadとかみたいに、タッチするだけでペンもノートもなしで記録できるとか、ページめくれるとか。遠隔操作で手術するくらい技術が進歩しているのなら、薬使ってちょちょっと自白させられるでしょ。変なところがアナログなんだよなあ。エレーナはクライマックスで自殺しようとするけど、ダヴィッドが(簡単に)思いとどまらせる。同じ記憶を失った者どうし・・あっと言う間に心がつながるらしい。流れから見るとダヴィッドにはマリーがお似合いだが・・彼はエレーナと仲良くなってしまう。年の差なんて!ダヴィッドは記憶失ってるからサラのことは問題じゃない。ティエリーは相変わらずこういうキャラが多いな。不思議な運命をたどる・・けがれを知らない純粋な存在・・。「バビロンA.D.」もそうだったし。こういうキャラは彼女にはぴったりだ。でもいつまでもこの路線でいくのは無理だろうし・・。「海の上のピアニスト」の頃とほとんど変わっていなくて・・人間ばなれしている。マノンの世話をするクララ役の人がよかったな。ウルスラ・アンドレス風。マノン(実はエレーナ)のこと心配していて、とうとう事実見せる。ブリューゲンは何とかエレーナをマノンにしようと施術の間隔を短くする。交通事故で重体のマノンは、いつ死ぬかわからない。その前に記憶の転移を終わらせたい。でもやっぱりこんなこと無理で・・。でもやってしまう人間の愚かさ、悲しさ。なまじ装置があるだけに・・。見かけは白黒ブルーで冷たい感じだけど、中はドロドロみたいな・・。いつでもアクションOKという勘違いムードもたっぷり。あんまり出来がいいわけじゃないが、別に嫌いじゃない。たまに見返したくなる作品。それにしても・・もうちょっと筋の通った運びにしようとは・・誰も思わなかったのかなあ・・。さて今年ももうすぐ終わり。10月以降映画館には行ってないし、レンタルビデオ店にも行ってない。引越しの最中なので日記の更新もままならない。毎日の荷物運びと整理に疲れもたまっている。雪は降ってくるし・・ああ!てなわけで新居に移ったらまたせっせと書きますので来年も読んでくださいませ。