インセプション

インセプション

フゥ・・やっと見てきましたよ。一日一回夕方からしかやってない。日本では超大ヒットというわけでもないのかな。私はクリストファー・ノーラン、レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙・・いずれもどうでもいいです。びっくりするような映像も・・と言うか、びっくりしました?だからパスするような作品なんだけど、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが出ている。彼のことは何回か書いたけど、注目している。彼が出ているなら見たい。そのうちトム・ハーディの名も・・えッ!彼も出ているの!こりゃ見なくちゃ・・となって。お客は五人ほど。トム目当ては私だけでしょう(ぐふふ)。たいていの感想文はノーラン、レオ様、ケン・ワタナベ、超映像で占められるんでしょうが私は違いますよ。まわりに目が行きます。何から行きましょうか。最初の方で設計士がヘマをしますね。あの設計士はルーカス・ハース。「刑事ジョン・ブック/目撃者」のかわいい坊や、「BRICK ブリック」のピンです。何であんな・・出番少ないんでしょう。しかもあんまり顔はっきり見せない。多くの人は印象にも残らず通り過ぎるでしょう。調合師ユスフ役でディリープ・ラオが出ていたのもうれしかった。「スペル」はほめてる人多いけど、私はあんまり好きじゃない(理不尽で・・)。でもラオが出ているシーンはあったかくてよかった。今回は出演シーンの半分が車の運転だったけど(←?)、でも彼の暖かさは伝わってきた。でもって偽造師イームスがハーディなんだけど、まあ変わっちゃって・・。彼のことは「リーサルドーズ」で書いた。他に「レイヤーケーキ」にも出ている。色が白く肌がすべすべで、ぼってりした唇が印象的なカワイコちゃんだったのに、ここ数年ですっかり変わってしまった。体つきがっちり、顔つきにふてぶてしさが加わり、ごついアンチャンに変身。よくわからないが「ブロンソン」という映画あたりから変わったようだ。日本では未公開でDVDも出ていないが、チャールズ・ブロンソンの伝記映画。と言っても「ウーン、マンダム」のブロンソンじゃなくて、実在の囚人。あだ名がチャールズ・ブロンソン。あと他の映画でボクサーやってるみたいだし、役のために肉体改造したってことかしら。私としてはずっとカワイコちゃんでいて欲しかったけど、これからはタフガイ路線?それも仕方ないかも。「マッドマックス」の主役もやるようだし(実現して欲しい!)。

インセプション2

今回は銃やら肉弾戦やらホント男性的だった。クライマックスで”キック”の直前彼が一人でうつるけど、その時の彼はやっぱりぼってり唇でカワユイ~ン!!何だかとってもうれしかったのだ(ムヒヒ)。ジョゼフのポイントマン、アーサーは・・もっと活躍するかと思ったらそうでもなかったな。後半ほとんど無重力の変な状態で・・大変だったと思うし珍しい設定だとも思うけど、こういう彼を見てたってなあ・・。アーサーは若くて体も顔つきも線が細いけど仕事に関してはプロに徹している。集中してるし冷静。コブをしっかりサポート。まあ彼に限らず他の者もしっかりしているんだけど、肝腎のコブ・・抜き取り屋(レオ様)が不安定。チームのリーダーとしては明らかに失格。レオ様は例によって眉間にシワを刻み、死んだ妻に悩まされている。・・たまには違う役やりなよ。彼を見ていてもカッコいい!とか、セクシー!とかならない。何となく心配になっちゃう。孤高の名優でいることよりもっと別の人生あるはず。いい年なんだからいい人見つけて結婚して子供作りなよ。幸せな家庭築きなよ・・って思っちゃう。新しい設計士アリアドネ(エレン・ペイジ)は明らかにコブに引かれているけど、恋とはちょっと違うと思う。彼の過去への好奇心。他のメンバーには興味示さないけど、コブのことは知りたがる。言い訳も用意してある。リーダーが問題かかえていたのではこっちにとばっちり来かねない。彼のことは知っておく必要があるのよ!アリアドネという名前はなかなかステキだ。アガサ・クリスティーのポアロシリーズにはアリアドネ・オリヴァーという女性探偵作家が時々出てくる。さて、コブの妻モル(マリオン・コティヤール)は、夢の中にしばしば現われ、ミッションの邪魔をする。モルとアリアドネは対照的だ。コティヤールとペイジも対照的だ。コティヤールはいかにもフランス女性らしくしゃれた感じ。顔が小さく、やせているように見えてつくべきところにはちゃんとついている。ステキな曲線の持ち主。美貌とスタイル両方兼ね備えているなんてうらやましい。もちろんその上に演技力。ペイジの方は若く、平凡でイモっぽい。それでいて顔立ちは整っているし、演技もうまい。「X-MEN:ファイナル・デシジョン」くらいしか見てないが、これからますますうまくなっていくのだろう。その可能性を感じる。

インセプション3

彼女が我々観客に代わっての質問者、代弁者なわけだが、セリフや行動によっては憎まれ役、でしゃばりにもなりかねない。コブを批判したり、彼の内面にずかずか入り込んだり。でも前に書いたようにコブは不安定であるから、情報を集めておきたいという彼女の気持ちもわかるのだ。彼女はとても頭がよく、野心家・自信家でもあるが、この仕事は初めてであるから普通っぽく、ういういしい。アーサーやイームスは明らかにこの仕事に染まっている。あと・・トム・ベレンジャーが出ていたけど、見てると悲しくなるから詳しくは書かない。だってどうしても「山猫」の一作目のイメージあるじゃん。あと「メジャーリーグ」とか。普通の人は「プラトーン」思い出すんだろうけど。ピート・ポスルスウェイトも出ていたな。彼やベレンジャーにくらべるとマイケル・ケインは若いよな。もうけっこうな年なのに。コブは彼の教え子らしい。義父でもあるらしい。・・てことはモルの父親か。コブはモル殺しの容疑で指名手配されてて、アメリカへ入国できず、子供達に会うことができない。それで今回の仕事引き受ける気になった。依頼人・・旅行者サイトー(渡辺氏)は報酬としてコブの犯罪記録の抹消を約束・・ってそんなことできるんですか?と言うか、この仕事引き受けさせるために、サイトーがコブを陥れたんじゃないんですか?精神を病んだモルはコブの目の前で自殺したけど、夫に殺されるという手紙を出していたらしい。医者は三人ともモルは正常だったと鑑定。おかげでコブは犯してもいない罪を着せられ・・。医者達はきっとサイトーに買収されていたのよ。でなきゃ三人揃ってとんでもないヤブだったのだ。コブがアメリカへ帰れないのなら、子供達を出国させればいいのに。おじいちゃんのいるパリへ・・。それともおばあちゃんがモルのことでコブを恨んでいて、子供に会うのを邪魔しているのか。きっとこの人モル似の執念深いババアに違いない。コブは子供達の顔を思い出せない。子供の顔を見せないのでややホラー風味。あと標的ロバート役でキリアン・マーフィ。私にとってこの映画ジョゼフ、ハーディ、キリアンです。あたしゃコブよりロバートに同情してました。サイトーにとって目ざわりなのがフィッシャー(ポスルスウェイト)の会社。どんな手を使ってでもつぶしてしまいたい。フィッシャーが今にも死にそうな・・死んだばかりの今が絶好のチャンス。

インセプション4

親子の間はうまくいっていない。ロバートに会社つぶすような潜在意識植えつけたい・・インセプションしたい。偉大な父の元で多くのことを耐え忍んできたであろうロバート。彼に関しては我々はあまり情報をもらえない。結婚しているのか、実業家としての才能はあるのか。ブラウニング(ベレンジャー)との関係もよくわからない。すごく信頼してるのか。ブラウニングもフィッシャー亡き後はどうするつもりなのか。ロバートを盛り立てていくのか、自分が会社を牛耳るのか。これらのことは映画に提示されていた?私が見逃したのかな。ここで映像について書いておく。パリのカフェでのまわり爆発シーンとか予告で何度も見せられるわけだが、びっくりしたりワクワクしたりしました?建物が上にのびて、こっちへ折りたたまれるとか斬新だ!・・とたたえるべきなのかな。私ちっともびっくりも感心もしませんでした。「ダークシティ」でビルがニョキニョキ生えるシーン見てるからどうしてもくらべてしまう。あっちを最初に見た時は本当にびっくりしたんですよ何だこれは!って。今考えりゃすごいことしてたんだな。水のシーンも・・サイトーの御殿みたいなのが水で崩れ・・これだって「ダーク」の海を作っちゃうシーンにくらべりゃあなた。作っちゃうんですよ海を!無重力だって・・プカプカ浮いたまま寝ている連中をアーサーがヒモでくくって・・真面目にやればやるほど変だよな。橋から落ちる車の中ではみんな管つけて眠ってるし・・点滴集団。しかも延々時間引き延ばされるし。変てこシーンは「ラブリーボーン」で食傷ぎみ。もういいですってば。変てこシーンは「ダーク」での壁の向こうは宇宙空間で決まり!あんな変てこシーン他にありませんてば。特撮さんざん見せつけておいて、それでいて雪山でのシーンは妙にリアル。厚着してるから誰が誰やらわからない。イームスがどれだかわからないのではちっともおもしろくないんだってば!ええ、私イームスがやられませんように・・ってそればっか心配してました。重傷のサイトーなんかどうでもよろし、イームスさえ無事なら!!依頼人が日本人である必要はないし、渡辺氏である必要もない。彼がしゃべる度に、あんまり長いのはしゃべらせないでくださいボロが出るといけませんから・・って思ってた。見ていても演技の前にまずセリフとちらないように、ちゃんと発音できるように・・って余計な心配しちゃう。

インセプション5

でもって要するに私はこの映画見てもさしてびっくりも感心もしなかった・・と。改めて「ダークシティ」の偉大さを感じた・・と。もっとも「ダーク」と比較している人はいなくて、「うる星やつら」等アニメ挙げてる人多し。夢の中でまた夢を見るとか、かなり複雑な構成で、途中でわけわからん・・となるのでは・・と心配したが、意外とわかりやすかった。2時間半近い長さも気にならない。で、わかりやすかったじゃん・・と油断していたら(←?)ラスト・・。モルへの思いを断ち切り、子供と再会してめでたしめでたし・・と思わせておいて、コマの回転で気を持たせる。夢の中では回り続け、現実世界では止まるコマ。回り続けているからこれは夢なのか。コブの願望の現われか。でも回転にかすかに乱れが出始めたようにも見える。見てる人の大半はころがれ!止まれ!と心の中で叫んでいたでしょうなあ(私もです)。ネットでの感想見るとこれもやはり夢・・という意見が優勢のようで。私が気になったのは、入国審査をパスしてホッとして、マイルズ(ケイン)に連れられて子供達のところへ行くところ。彼らは今までのような顔なしではない。まあよかったわねえとよろコブ。でも・・あの・・ここ空港でしょ?でも食堂かレストランみたいな・・空港じゃないみたいな。間が飛んでるみたいな。映画ではコマがどうなったのか見せずに終わる。こういう宙ぶらりんは気にくわないけど、まあ分析などせず「あッそう」とやり過ごそう。これが夢ならその前の犯罪歴抹消も仕事の成功も・・いや、仕事の依頼そのものが、コブの存在そのものが現実かどうか。それじゃあ2時間以上真面目に見ていた私達がバカみたいじゃん!だったら額面通り受け取っておけばいいのよ。コブがコマを見ていないってことは、モルとは完全に決別したってこと(コマは元々モルのもの)。それが重要なこと。クライマックスはあっちでもこっちでもいろんなことが並行して起こっていて。でも中心はやっぱり二人の世界。二人の愛はどうのこうの。愛してるとか離れないとかぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ。ノーラン監督さえこの呪縛からは逃れられないのか。モルがただのしつこい、自分かってな、はた迷惑な女にしか見えないってのがイタイ。本人は死んでるんだからこれは彼女のカゲ。コブの潜在意識の投影。

インセプション6

コブから見たモル。こうなんだろう、こうであって欲しいというモル。何か「ソラリス」のレイアみたい。モルがコブの延長線上にしか現われないのはそのせいか。いつだって二人の間。子供との間に存在する母親としてのモル、マイルズとの間に存在する娘としてのモルは出てこない。コブにとって重要なのは自分とモルの関係。自分と子供の関係。だから彼の夢にはそういうモルが出てくる。何でも邪魔するモル、自分を解放してくれないモル。まあ切りがないからもうやめよう。多くの人が感じているようにこの映画は「ダークナイト」大成功のごほうび。儲けさせてもらったから好きなことしていいよ~。「ラブリーボーン」と似たような感じで、まああちらは興行的には成功しなかったようだが、でもこちらは大ヒット。さすがノーラン、好きかってにさせてもちゃんと稼いでくれる・・と。見終わってから誰かと話し合って欲しい・・というのが作り手の願望らしいが、何も残らない。なかみは充実しているように見えるが・・ハデな映像見せられるが・・哲学的・ハイレベルな内容に見えるが・・結局最後そこにあるのはただの痴話ゲンカ。相手しか見てなくて、しかもその相手はもう死んでいて、つまりは自問自答。他の場所ではアーサーが、イームスが必死に仕事してるのに。おまえら何ぐだぐだやってるんだあ~!尻を蹴飛ばしたくなったのは私だけではありますまい。まあこの映画で一番感動的なのはロバートとフィッシャー親子の和解ですよ。例えこれがコブによって植えられたニセの情報であったとしてもね。コブとモルのぐっちゃぐちゃな関係よりずっとシンプルで共感しやすい。あの風車なんか・・ほろりとさせられましたぜ。自分自身の道を歩み始めたロバート。彼はフィッシャーが築き上げたものを(サイトーのもくろみ通り)壊すかもしれないけど、別のことでサイトーの強敵になるかもね。そうなるとサイトーは何のためにこの仕事させたのかわからなくなるけど。とにかくこの映画を機にジョゼフやハーディ、ラオの知名度がアップするといいな。ハースが何となく置いてけぼりくってるのが、彼らしくていいんだけど。そのうちブレイクするよねハースも。何かまとまりのない感想文になっちゃったけど皆さんハーディに注目ですよ。「リーサルドーズ」もぜひどうぞ!バカ映画ですよ!「ダークシティ」もお勧めです!傑作です!