エクスタミネーター

エクスタミネーター

これは大昔妹と二人でテレビで見ていて、ラスト、主人公がやられちゃったのではないかと心配して。水面に浮かび上がったのを見て、万歳三唱したんだけど、DVDを見て、あら、こうだったっけ?と。それはまた後で書くけど。ベトナム戦争で危うく死ぬところだったジョン(ロバート・ギンティ)。生還できたのは戦友マイケル(スティーヴ・ジェームズ)のおかげ。今のマイケルには妻子がいて、酒屋か何かで真面目に働いている。ジョンはまだ独身で、市場の肉屋か何かで働いている。あの時自分の隣りで、部隊の仲間が首をはねられた。次は自分の番だった。マイケルが助けてくれなければ・・。明るくふるまってはいるけれど、今もその時のことはトラウマとなっている。ある日、倉庫から商品をくすねているチンピラどもを追い払った二人だが、マイケルは逆恨みした相手に襲われ、全身マヒにされてしまう。それまではどちらかと言うとぶきっちょで気弱そうに見えたジョンだが、命の恩人をひどい目にあわされ、復讐に立ち上がる。後でわかるが、二人がいたのは特別部隊。人を殺す技術、武器の扱いはばっちり。善悪を考えなければ、人を殺すのは簡単。つまり今のジョンには心のブレーキはなし。とは言え自分の利害は考えてないし、快楽のためでもない。市場でさんざん目にするのは、うわまえをはねる組織のやつら。ボスを誘拐し、金を奪うが、マイケルの妻子に渡すためだ。ボスは番犬がいるのを黙っていたせいで、肉ひき機にかけられる。次にひどい目にあわされた娼婦から話を聞き、変態オヤジ(元上院議員)や店主を始末。老女を襲って金を奪ったチンピラどもを始末。頼りない感じだったジョンがだんだんしっかりしてくる。ギンティは目が垂れていて、顔の下半分がゆるんだような感じで、精悍さに欠ける。ちょっとポール・マッカートニーに似ている。あの時代らしく髪は長め。ジョンは顔を隠してないし、すぐつかまりそうなものだが、なかなか尻尾をつかませない。どこと言って特徴のない青年のせいもあるが、追う方も一枚岩ではないのだ。ダルトン刑事(クリストファー・ジョージ)は、まわりのおもわくなど気にしないタイプ。政治家や警察上層部、CIA・・いろいろ利害が絡み合っている。

エクスタミネーター2

政治家は公約を果たさず、治安は悪化するばかり。二ヶ月後に迫っている選挙に不利になるようなことは困る。マスコミはチンピラやギャングを始末する”処刑人”として英雄扱いだが、裁判にはかけたくない。これらのことはダルトンにとってはどうでもいいことで。処刑人がやってることは殺人。だから逮捕するまで。途中で彼は医師のスチュアート(サマンサ・エッガー)と知り合う。出会ったその日にキスまで行くという早業。この映画に出てくる俳優は、ギンティにしろチンピラ役の人にしろ、あんまり演技がうまくないのだが、ジョージは違う。ほんのちょっとした動作、表情で、セリフ以上のものを語ることができる。存在感があるのだ。ちなみにオープニングクレジットではギンティはジョージ、エッガーに続き三番目である。この映画で一番目を引くのは・・首斬り、肉ひき機、丸焼きよりも・・ダルトンが自分のデスクでホットドッグを作るところだろう。デスクランプのコードに切り替えスイッチをつけて、片方は普通に電気をつけたり消したり。もう一つの方はフォークを二つつけて、電気が通ると熱くなるようにする。フォークにソーセージの両端を刺してぶら下げると、そのうち湯気が立ち始める。このシーンが何とも・・特に湯気が・・たまりませんわな。おいしそうとかじゃなくて、映像的にね。ダルトンはパンやらソーセージやらマスタードやらをデスクの近くに常備しているんだわ。仕事人間なんだわ。体育の教師みたいな服装も、刑事らしくなくていい。エッガーの出番は多くない。作り手も、あまりきれいにうつそうともしていない。ジョンはマイケルの呼吸装置をはずし、死なせる。回復の見込みはないし、金を渡したから妻子の生活の心配はない。病室を出て、エレベーターに向かうが、急患用個室にスチュアートとしけ込んでいたダルトンにばったり。「(ズボンのチャックが)あいてるぞ」と、ジョンは親友を逝かせたばかりなのに平然としている。この対面のせいで、ダルトンはジョンが処刑人だと確信する。それまでは容疑者が多すぎてしぼり込めていなかった。ジョージはこの映画の数年後52歳で病死。まだ若いのに惜しいことだ。若い頃は「エル・ドラド」や「チザム」など悪役が多かった。

エクスタミネーター3

テレビの「ラット・パトロール」で有名になり、映画だと「グリズリー」がたぶん代表作。頼りがいのあるタフガイって感じ。エッガーは「コレクター」で有名。キャサリン・ロスに似ていると私は思っている。ギンティは2009年に60歳で病死。こちらも惜しいね。知ってる人はこの三人くらいかな。暗いシーンが多く、見づらい。場面と言うか、話が飛んでるし、説明も不十分。うつし方は単調で、全体的に野暮ったい。つまり欠点ばかりが目につくのだが、それでいて不思議に引き込まれる。処刑を重ねているうちに、ジョンは手際がよくなってくる。弾に細工をするシーンでは、音楽もなくたんたんとうつす。ダルトンが銃を用意するところも音楽なし。でも、作業の音だけってのがいいのだ。ジョンはベトナムでは感じていたであろう恐怖や迷いを、今では感じていない。他の映画・・「ブレイブ ワン」とか・・だと、始末するごとに悩みや迷いが深まっていくものだが、彼は違う。ダルトンもベトナムではいろいろ経験したようで、ジョンの心理は理解できる。残念ながら二人は心を通わせるヒマもなかったが。クライマックスはややあっけない。ジョンはダルトンを呼び出して何をするつもりだったのか・・自首するつもりだったのか?しかし二人は狙撃され・・。ダルトンは防弾ベスト、着ていくべきでしたな。狙撃したのはCIA?で、冒頭書いたラストだけど、私の記憶では水中に沈んで、見ている者を心配させといて、水面にプカッと浮き上がり、生きていたのだバンザイバンザイとなるのだと。でもDVD見たらプカッとはなしで、何かにつかまって海岸に漂着し。う~ん、私の記憶違いか。ダルトンとは違い、彼はちゃんと救命胴衣着けていた?じゃあ自首する気はなし?DVDには予告編・・しかもナレーションなしの・・しかついてない。コメンタリーでもつけて欲しかったぞ!え?ブルーレイにはついてる?他の特典も?ギャッ、何でそんなことするんですか。最初からつけてよ!てなわけで出来は決してよくないけど、でも不思議と心に残る映画なのでした。今の映画は洗練されすぎて、かえって心に響かない。サミュエル・L・ジャクソンがエキストラで出ているらしいが、気がつかなかった。「2」も作られたようだが、どっかで放映してくれないかな~。