エニグマ

エニグマ

「パニック・トレイン」を見たついでに、「エニグマ」も再見。これは最初WOWOWで見た。その後DVDを入手。原作があると知り、古本屋で入手して読んだ。静かで美しい音楽が気に入ったので、サントラもゲット。今回感想を書くためいろいろ調べたのだが、ダグレイ・スコットは「X-MEN」のウルヴァリン役をやっていたかもしれないんだそうな。「M:I-2」の撮影が長引いたため実現しなかったらしいが、もしやっていたら彼の役者人生も変わっていたことだろう。と言うか、彼ってウルヴァリンというタイプじゃないように思うけど。どっちかと言うと情けない男系だし。マシュー・マクファディンも出ていて、「プライドと偏見」を見た後は、彼に注目して見た。眼帯してるし、顔半分がヤケドしたみたいになってるしで、顔がよく見えない。でも、もう一つの目は美しく澄んでいて・・声もステキだし。ニコライ・コスター=ワルドーも私のごひいきだ。かなりの儲け役だけど、彼って地味だから、さして印象に残らない。「ニュー・アムステルダム」というテレビシリーズに主演したらしく、いよいよ彼の時代が到来したかと喜んだが、8話で終わっちゃった。視聴率不振で打ち切られたのか。DVDは出てないのか(見てみたいよ~ん!)。その後「ゲーム・オブ・スローンズ」とかいうのにも出たらしい。こっちは好調なのか。彼は前にしゃしゃり出るタイプじゃないので、早く有名になって欲しいとカゲながら応援している。「エニグマ」を見るのは三回目か、四回目。前回見たのは感想書くためだろうけど、結局書かなかった。書けなかったと言った方がいいかも。一番印象に残るのは、ぽっちゃりとして健康そうなへスター役ケイト・ウィンスレット。丸メガネをかけて野暮ったい服装してるが、シミもシワもないきれいなピンク色の肌が輝く。対するクレア役サフロン・バローズは183センチの長身。元モデルで9頭身というスタイルのよさ。流行の服に華やかな化粧。出会う男をみんな虜にし、さんざん振り回す。享楽的で人生を楽しむことしか考えていない。それでいて何を考えているのかわからない、謎めいたところも。

エニグマ2

映画は時期があちこち飛ぶので、最初見た時は何が何やらわからなかった。心を病み、暗号解読センターのあるブレッチリー・パークを離れていたトム(スコット)が呼び戻される。大事な仕事があると言うのにクレアの面影を追い求め、抜け殻状態。しばしば回想にふける。列車の中での出会い、恋に落ち、真剣に結婚を考えるが、なぜか彼女は冷たい態度。最後の方は戦争も終わり、へスターと結婚し、もうすぐ赤ん坊が生まれるという頃。トムは人込みの中にクレアを見つけ、懐かしさに浸る。でも、追いかけたりしない。目で追うだけ。相変わらず美しいけれど、幸せそうにはとても見えない。彼女は自分とは住む世界が違うのだ。一時彼女は殺されたかのように思えたが、あれは偽装だったのだ。「エニグマ」という題名から、暗号解読をめぐるあれこれがメインに思えるけど、実際は三角関係とか手ひどい失恋とか。暗号だけではお客はついてこないと?私が一番ひどいな・・と思ったのは、トムがクレアの心を引き止めようと、暗号のことでも何でも話す・・と、追いすがるところ。国家機密をこんな女のために漏らしていいのかよ!さて、トムが呼び戻されたのは、暗号シャークが解読できなくなったため。おりしも大規模な輸送船団がアメリカを出発し、大西洋を横断している。それを狙ってUボートが集結。攻撃されたら大打撃だが、実はその攻撃は暗号解読の手がかりをつかむ絶好のチャンスでもある。トムは以前シャーク解読に成功したことがあり、今度も彼ならできるのでは・・と、期待されている。しかし彼の頭の中は、なぜクレアは自分を捨てたのか、今どこにいるのか・・そればかり。彼女が行方不明なので、どうしても彼女の同居人へスターと話す機会が多くなる。最初は迷惑だと態度が硬かったへスターだが、クレアが自室の床下に盗み出したとおぼしき暗号を隠していたとあっては、トムに協力せざるをえない。それに彼女は女だからというだけで重要な仕事をさせてもらえないことにあきあきしているのだ。こんな興味のある事件に関われるなんて、そうめったにあるものではない。

エニグマ3

情報部のウィグラム(ジェレミー・ノーザム)は、ブレッチリー・パーク内にスパイがいると思っている。クレアがそのスパイなのだろうか。しかし後でわかるが、クレアはウィグラムの部下だった。スパイが誰か探るため、次々に男を誘惑。男どもは自分がクレアを誘ったのだと思っているが、実際は彼女の方から近づいたのだ。深い仲になり、男の財布のなかみや手紙などを調べる。ただ、トムが彼女と交際していた時点では、まだ暗号の変更は行なわれていない。パック(ワルドー)はまだドイツ側には通じていない。してみると予防の意味も込めてウィグラムはクレアに探らせていたことになる。列車で会って心を引かれた美女に再会したのは野外コンサート。トムの足元にハイヒールが片方転がっている。拾い上げた彼の前に突き出された形のいい足。それがあの美女・・クレアだった。「靴を拾ってくれた王子様」というクレアのセリフが笑える。だってスコットは「エバー・アフター」で王子様の役をやっていたではないか。クレアはここで働いているうちに、ある重要な機密を知る。時々ドイツ軍が死体を掘り出しているシーンが挟まれ、意味がわからないが、そのうちこれがカティンの森の虐殺の現場なのがわかる。数年前ソ連軍が多数のポーランド兵を殺して埋めたのが発覚したのだ。ドイツが公表してもソ連は認めず、かえってドイツが虐殺したのだと主張。連合軍側としては、ソ連は味方だから黙殺するしかない。アメリカにはポーランドからの移民も多い。反ソムードは困る。アメリカの豊かな資源・・食料、燃料、爆薬がなければドイツには勝てない。まああれこれ思わくがあって、この件は・・つまり暗号の解読は中止される。クレアが盗み出したのはこの暗号。犠牲者のリスト。彼女は解読チームの一人パックに、この件を伝える。なぜならポーランド系のパックは、行方不明になった弟を捜していたから。クレアはトムの後はパックと関係していたが、自分の任務より彼への同情の方が勝ったようで。パックはイギリスが虐殺を黙殺するのが許せず、ドイツに寝返ることを決意。

エニグマ4

まず、ドイツの暗号がすでに解読されていることを伝える。そのせいで向こうは暗号を切り替え、解読ができないという今の事態に。映画を見ていただけではよくわからないが、ドイツはエニグマに絶対の信頼を置いているので、新しいのに切り替えたとは言え、基本的なことは変えるつもりはない。第一パックの情報は、もしかしたら連合国側の仕組んだ罠かもしれない。それをはっきりさせるにはパック本人をドイツに連れてくるしかない。で、スコットランドのある場所にUボートを迎えによこす。ウィグラムは虐殺のこともパックのこともすでに知っていて泳がせている。何も知らないトムはあちこち嗅ぎ回り、頭を突っ込み、余計なことをして手間を増やす。邪魔でしょうがないが、と言ってこっちの計画をパックに気づかれても困る。結局Uボートは撃沈され、パックは死ぬ。ドイツ側は「ああ、やっぱり罠だったのか」と思い、「エニグマは解読されてないから使い続けても大丈夫なのだ」となる。まあ何回も見て原作も読んでやっと流れがつかめるけど、一回見ただけじゃ何が何やらだ。他の出演は「プライドと偏見」にも出ていたトム・ホランダー、「シャーロック・ホームズの冒険」のワトソンでおなじみのエドワード・ハードウィック、「ポアロ」や「ミス・マープル」に出ていたロバート・ピュー(あるいはパフと読むのか)。製作者の一人ミック・ジャガーがクラブのシーンで後ろにちらりとうつる。これを機会に原作も読み直した。文庫で600ページ以上ある。映画はいろんなことをそぎ落とす一方、へスターの役割を重くしてある。そりゃあウィンスレットだもの、重いでしょうよ。撮影時妊娠中だったらしいから、ラストはまんまってことか(詰め物不要)。原作のトムは小柄で26歳。クレアは20歳・・ええッ?へスターは30に近く、黒髪でやせている。あッ、書き間違いじゃありませんよ。ちゃんと「ごつごつにやせている」って書いてあるんです。カティンの森の件の暗号を解くのは原作ではトム。映画ではへスターで、そのせいでトムはちっとも有能な解読者に見えない。また、原作にはアラン・チューリングがちょこっと出てくる。彼はすでにアメリカへ渡っていて、向こうが主導権握るのも時間の問題。それがイギリス人にとってはシャクで。向こうが設計中のスーパー・ボンブは”コロッサス”という名称になるらしい。たぶんソ連でも対抗して”ガーディアン”を設計中でしょう!!