アルティメットシリーズ

アルティメット

2010年パリ、犯罪多発地域を壁で囲むが、200万の住民の半分は一般市民だ。いくら何でもありえない設定。「ニューヨーク1997」などと似ているが、見ている者を納得させるものがない。出てくる連中はよくしゃべる。みんな頭悪そう。町を牛耳っているのがギャングのボス、タハで、彼から20キロの麻薬を奪って捨てちゃったのがレイト(ダヴィッド・ベル)。クライヴ・オーウェンのフランス版。いちおうハンサムで引き締まった体つき。つかまえたタハを警察へ突き出すが、政府命令でここは閉鎖だと署長は迷惑そう。あろうことかタハを解放、レイトを檻に入れる。妹ローラはタハに連れ去られ、怒ったレイトは署長を殺し、刑務所送りになる。六ヶ月後、タハの手に落ちた核弾頭を取り返すため、ダミアン大尉(シリル・ラファエリ)が送り込まれる。こちらはヴィン・ディーゼルのフランス版。服役中のレイトは、土地勘があるというので一緒に行動することに。ストーリーは出たとこ勝負。だましだまされ、話をするのは殴り合ってから・・みたいな。主演の二人は実によく体が動く。そこが見どころだが、うつす方は自分のテクニックも見せたいから、スローにしたり早回しにしたりあらゆることをやる。落ち着きがなく見づらい。過剰すぎる。本来ならもっと簡潔で美しくなるはずだが。六ヶ月も麻薬漬けだったのに全然影響残っていなさそうなローラとか、核爆弾なのに汚染はないとか、特にフランス映画ってこういうとんでもない描写平気でするよな。だから深みも何もないただのアクション映画ではあるのだけれど、心に残るものがないわけではない。主役二人のバカさかげん。もちろんいい意味での。レイトは犯罪多発地域で生まれ育ったけど、精神は健全。危ないことと承知で麻薬を奪い、タハを警察へ突き出す。自分には何の得にもならないのに。一方ダミアンは法が絶対だと思っている。政府の上層部は彼をだまし、爆発解除どころか起動させようとした。でも彼はそのことで信念を曲げたりしない。二人ともありえないキャラだが、でも観客はそういうピュアな魂の持ち主を待ち望んでいるんだよね。