アサルト13 要塞警察

アサルト13 要塞警察

見ていて感じたのは「スズメバチ」激似ということ。「アサルト13」はジョン・カーペンターの「要塞警察」のリメイクで、カーペンターはハワード・ホークスの「リオ・ブラボー」を現代風にアレンジしたらしい。「スズメバチ」の監督フローラン=エミリオ・シリはカーペンター、ホークスに影響を受けているから「スズメバチ」が「要塞警察」に似ているのは当然で、「アサルト13」にも似ていると・・。シリの「ホステージ」もそう言えば家が要塞になってたな。ある設定が好きで、いろんな映画でくり返し使う監督っているのだな。私は「要塞警察」は見ていないので「アサルト13」とは比較できない。今回見に行ったのは、あまり大っぴらに宣伝されているわけでもないし、上映期間も短いだろうし、要するにかわいそうだったから。「ナルニア」とかああいうのは大々的に宣伝しているから、ほっといたってお客は入る。でもこういう映画は私が見に行ってあげなければだめなの。どうせお客はパラパラだろうから、枯れ木も山のにぎわいということで・・。二週目になるとどうせ回数減らされて隅っこに追いやられるだろうから・・と、公開三日目の朝一番に行きましたよ。お客は八人で、女性は私も含め三人。私以外の二人はイーサン・ホーク目当てだろうな。かわいそうだからなんていう不条理な理由で見に来るのは私みたいなオバさんだけでしょう。チラシを見て、内容よくわからないながらもちょっぴりそそられたことは確かなのよ。顔ぶれがいちおうあれこれ取り揃えてみました・・って感じで、静かににぎやかでしょ?ホークは見るの初めてです(たぶん)。何か・・いいですよねえ、ハンサムだけどちょっと。ちょっと何よ・・って言われそうだけど寒天みたいな人。つるんとしている。頼りなさげ。でも固められた寒天は崩れない。弱そうに見えて強い。トム・クルーズやマット・ディロンに似ていると思うけど、これと言って強烈さも迫力もない。その代わりここが嫌いというところもないのよ。「アサルト13」のいいところは、変にラブシーンとか入らないこと。アクションで押し通したところが潔くてよかった。心理カウンセラーのアレックスに引かれているんだけど、何もなくてよかった。こういう映画は寄り道しちゃだめなんです。ちょっと頼りなさそうなジェイク(ホーク)に対して、ビショップはローレンス・フィッシュバーンだからもう!

アサルト13 要塞警察2

もう!・・何なのさって言われそうだけど、悪人なのにふんぞり返っております。逮捕されたのに、彼の命狙って殺人集団がわらわらと出現したのに、絶体絶命のピンチなのに・・偉そうにかまえております。こういう人が機長だったら、さすがのカイルも首根っこつかまえられて土下座させられていたことでしょう!さっさかさーとジュリアを見つけ、犯人の企みもぶっつぶしていたことでしょーって何のこっちゃ。とにかくフィッシュバーンは貫禄ありますな。ビショップのいいところは黙っているところ。できる男はべチャべチャしゃべったりしないんでーす。仏像みたいなもんです。そこにいるだけで存在感がある。その場の空気が違う。「マトリックス」とか「ミスティック・リバー」とか、全然いいとは思わなかったけど今回はよかったです。あのギョロッとした目、閉じた唇・・仏像チック~。どっしりかまえたビショップに対し、ジェイクはジタバタしている印象。その一方で無気力。それは心に傷を負っているせいで・・。冒頭麻薬のおとり捜査に失敗して、同僚二人を失うシーンがある。お定まりの設定だと思う。余計な描写だと思う。でもだからこそマッチ箱に入れた鎮静剤にじーんとしてしまうのかな。カウンセラーの存在もお約束。向こうって何でもかんでも弁護士、そしてカウンセラーなのよねえ・・。アレックス役はマリア・ベロ。「シークレット・ウインドウ」でデップの奥さん役やってた。老警官ジャスパー役はブライアン・デネヒー。「ランボー」では出てきたとたん、そのはみ出したおなかに目が行ってしまったっけ。敵役ガブリエル・バーンは・・出番があるようなないような。見せ場があるようなないような。何か中途はんぱな感じがしたな。まあ設定のせいもある。なぜ敵が襲ってくるのか説明不足。あんなに犠牲者出す必要あるのか説得力不足。いかれた犯罪者役のジョン・レグイザモ・・最初彼だかどうだかよくわからなかった。口曲がってるし、似ているけど別の俳優さんかしら・・って。こういう一癖も二癖もある役やって、脇役なのに目立っちゃう人だ。キャプラ役のマット・クレイブン(「タイムライン」などに出ている)は、最初ちょこっと出て後で再登場。再登場しなかったら彼が出ていたことたぶん完全に忘れたと思う。あんまり見せ場もなくもったいない。最後も生き残れたのかどうかはっきりしないし。

アサルト13 要塞警察3

アイリス(ドレア・ド・マッテオ)は、何なのこの女・・って感じでめんくらったけど警察秘書らしい(何それ?)。色っぽい上に好色そうで淫乱でセクシーで(同じこっちゃ!)、一番最初に犠牲になるかと思ったら最後までしぶとく生き残っちゃった。ケバくて第一印象悪かったけど、だんだんよくなってきます。あとヒップホップか何かの歌手が出ていたようですがどうでもいいです。出演者はこのように豪華なんだけどストーリーは「ありえねー」です。何しろ犯人側が○○ですから。いいのかなー、苦情来ないのかなーデトロイトから。○○の他にAVも応援に呼んでいたけど、AVって何ですか?あれも一味なんですか?何だかよくわからないので、こんなに犠牲者出しちゃっていいの?・・と見ていてふと疑問がわきましたぜ。さてジェイクはビショップら犯罪者と助け合って殺人集団に立ち向かう。電話も無線もケータイも役に立たないし、13分署は人里離れた孤立したところにあるし。「スズメバチ」の時も思ったんだけど、外部に気づいてもらう手段が一つだけあるのよね。それは火事を起こすこと(おいおい)。灯油か何かまいてたから、起こそうと思えばできるのよ。建物を燃やすのがいやなら車とか護送用トラックとかじゃんじゃん燃やせばいいじゃん。とにかく炎を立てて誰かに見つけてもらうのよ。例え大晦日でも雪が降っていても消防署は機能しているのだから。少しくらい視界が悪くても人里離れていても火は見えるはず。「スズメバチ」だって工場の一部を燃やせば外部に見つけてもらえたのよ。すぐ近くの道路を車がひっきりなしに走っているのだから。少しくらいそこらへん焼けたって人の命には代えられないと思うんだけど・・やらないのよね、映画だから?でもってどんどん人が死んでいくわけ。「アサルト13」もそうで、出て行ってはやられるからだんだん人数少なくなる。誰も出て行かなくてじっとしていたのでは映画にならないから何だかんだ言っては出て行くんだけど、それにしたってみんなムチャをしますな。あといくら大晦日だからって、いちおう勤務中なのに何やってんのかしらね。音楽、ダンス、酒・・呆れちゃうわ。攻撃されてからもあんまり・・。特に呆れたのは窓に背を向けて平気で立っているところ。普通なら撃たれまっせ。映画だから撃たれないだけ。こういう時って建物の構造利用するとか、ありあわせのもの工夫して対抗するとかさ。

アサルト13 要塞警察4

いくらでも話をおもしろくできるのに、その努力が足りないように思える。「スズメバチ」がおもしろかったのはいろいろ工夫があったからだ。「アサルト13」でやったことって・・犯罪者に銃を持たせたことだけ。見ていて気の抜けるようなところもあったし、ストーリーには全然新味がなく何もかもありきたり。心に傷を負い、酒や鎮静剤に頼り、現実から逃避していたジェイクも、ピンチを切り抜けることで一皮むけます。絶体絶命のピンチでは「生きたい!」しかないから、他のことは大したことではなくなるのです。夜が明けて生きのびたことを実感した時、ジェイクは過去と訣別し、一歩を踏み出している自分に気づくのです。いやーどうです、ありきたりでしょ?じゃあ見ていてつまんなかったのかと言えば、そうでもないのよ。そこが不思議なところなんだけどさ。銃撃戦は迫力あるし(その前に見た「ジャーヘッド」が少し影響していると思う)、ホークもフィッシュバーンもよかったし、見てよかったと思っているの。だいたいこういう映画に崇高さとか完璧さとか期待していないもん。映画史上に残るような傑作でなんかありえない。きっとごく普通の使い捨て映画だろうと思って見に来て、思った通りだった・・それだけの話よ。私が見なくて他の誰が見るのよ、私だけは見に行ってあげなくちゃと思って見に行って・・そして帰るだけの話よ。そういう映画の見方っておかしい?でも私はよくあるの。みんなと同じはいや。だから本でもベストセラーとか全く読まないの。・・てなわけで「アサルト13」おもしろかったです。欠点いっぱいあるけど楽しめた。CG使いまくりとかそういうのでないのもよかった。こういうのは二回見たいけど、シネコンだから一回でガマンだわ。たった一つ文句言いたいことがある。凄まじいまでにやかましいエンドロールでのラップ。例え本編がどんなに完璧な出来でも、あのやかましさには感動も余韻もふっ飛びます。私は一番最後まで見る主義なのでガマンして座っていましたが、かなり腹立ちました。あんなわめき散らすような歌何で流すねん。勘違いしてる。パンフにはわざわざ主題歌が「作品をより印象深いものにしている」なんてほめていて・・気は確かかよッ!「スズメバチ」のもたもたしたラップもがっくりしたけど、こっちはさらにひどいです。こういう映画にはしみじみとした曲、歌が似合うと思うんだけどなあ。