エバン・オールマイティ

エバン・オールマイティ

いつ公開されるのかな・・と待っていたらDVD化されちゃってびっくりしたんだよな。WOWOWで見たらけっこうおもしろかった。スティーヴ・カレルと言えば「リトル・ミス・サンシャイン」と「ゲット スマート」。どちらもすごくよかった。実はこれを見た後「リトル」がまた見たくなって・・。彼、ホントいい演技する。「奥さまは魔女」にも出ていたけど、あの映画は前にも書いたけどあんまりおもしろくないんだよな。ただ、あの映画でのカレルを見ていて、「媚薬」をリメイクするならジャック・レモンがやったニッキー役を彼にやらせてみたいな・・と。何となく彼ってレモンに似ていると思うんだけど。「40歳の童貞男」は見てないし、テレビできわどいネタで人気が出たという、そういうのももちろん見たことなし。・・と言うかそんなの見たら彼のこと嫌いになっちゃうかも。だって私が好きなのは真面目できちんとしてるけどどこかずれていて、善良さや狂気や知性や哀愁が同居しているようなイメージの彼。彼は「ブルース・オールマイティ」にも出ていたの?これもまだ見てないな。公開された時の新聞の批評には(あんまり前のことなので正確かどうかはわかんないけど)、「どんな映画でも品のよさは必要だ」と書いてあって。こんなふうに書かれてるってことは、「ブルース」には品が欠けているのだろう・・なんてその時思ったりして。私がこれを読んで思い浮かべたのは「タイムトラベラー きのうから来た恋人」。私があの映画にほれ込んだのは、内容に描写に登場人物のキャラに品があったからだ。さて「エバン」は製作に1億7500万ドルもかかったらしい。興行成績は1億ドル行ったけど、元がこれではねえ・・追いつかない。結局は大赤字ってこと?何でそんなにお金かかったの?巨大な箱船のせい?CGのせい?そのわりにはクライマックスの洪水はあんまりよくなかったな。たくさん集めた動物にお金かかったのかな。キャスターから下院議員に出馬し、当選したエバン(カレル)。りっぱな執務室を与えられ、有力議員ロング(ジョン・グッドマン)に目をかけられ、新居に引越し・・と何もかも順調。ところがある日”神”(モーガン・フリーマン)が現われる。「箱舟を作りなさい」「理由を聞かれたら洪水が来るからと答えなさい」

エバン・オールマイティ2

エバンはもちろん信じないけど、動物は集まり出すし、髪やヒゲがのびてくる。彼の家族は妻と息子三人。男三人は珍しいなと思ったら、聖書に出てくるノアがそういう家族構成らしい。不勉強でノアの箱舟のことは大まかなことしか知らない。息子のうち末っ子ライアン役はジミー・ベネット。「ホステージ」「ファイヤーウォール」、そして私は見てないけど「ポセイドン」にも出ている。今回はヘアスタイルのせいで、彼だとはわからなかった。奥さんジョーン役ローレン・グレアムは「キャプテン・ウルフ」に出ていた。この映画でびっくりするのは、(洪水じゃなくて)エバンの行動についていけなくなったジョーンが家を出て行くシーン。議員の前で、カメラの前で「洪水が来る」と言ってしまったエバン。家に戻ると妻子は家を出て行く準備完了。向こうの奥さんってそんなに行動起こすの早いの?「シャッター」でも即出て行ったし、普段から家出の準備してるのかな。「ビーン」でも「ザ・チケット/不時着機を救え!」でも「ヒッチャー2」でも、妻が恋人がもうやっていけないわ別れましょと早いこと早いこと。もっとも「エバン」では、途中で食事に寄ったら”神”がウエイターのふりして現われ、ジョーンの話を聞き、アドバイスを与える。それでジョーンは夫を信じようという気になって家に戻るのだ。その時のフリーマンの演技がこの映画での一番の見ものなのだ。見ている我々が全員心をうたれる、そういう状況に持っていくには、どうしてもジョーンはエバンを見限り、家出しなくちゃならない。だから彼女はさっさと家を出たのさッ!さて、登場した時のエバンは、もっと上に行ける・・と自分にはっぱをかけるタイプ。見てくれを気にし、不潔さを嫌う。でもそんな彼がだんだん変わっていく。髪やヒゲがのび、白くなったって、妙な服着せられたって気にしない。水やピタパンを動物達と分かち合う。最初はうまくいかなかった箱舟作りもだんだん進んでくる。子供達や動物達が手伝うところも楽しい。そうやって、一度はピンチに陥った家族とのきずなもしっかり結び直された。家庭内のことはもう大丈夫。でもそれ以外のことは?まあよく考えてみると、この映画さほど緻密じゃない。洪水は実際に起きるけど天変地異ではなく、手抜き工事をしたダムが決壊するから。つまり人災。

エバン・オールマイティ3

しかもカラカラ天気が続いて貯水量減っているはずなのに、ちょこっと雨降っただけですぐ決壊。それくらい弱くなっていたのなら何か予兆あったはず。ダムが決壊したせいでロング議員の悪事がばれるけど、その程度のことあばくのに巨大な箱船作ったり、動物集めたり?裏帳簿でも見つけてネットで公開すればロング失脚させるのに十分なのでは?「鳥なんか空飛べるんだから箱舟に入る必要ない」・・なんて書いてる人もいて、その通りだ・・とおかしくなった。動物にしたって全種類集める必要はない。洪水によって被害受けそうなのが集まった方が説得力あるわな。・・と言うか、洪水の被害受けないところへ避難すると思うが(遠くへ避難するのに十分な日にちもある)。あれじゃわざわざ被害受けるために集まったようなもの。ま、別にいいんですけどね、映画だから。鳥に追いかけられるシーンは「鳥」みたいでちょっと怖いけど、水槽の魚がエバンに寄ってくるところはかわいかった。エバンのスタッフのうち、リタ役の人はワンダ・サイクス。「Gガール 破壊的な彼女」に出ていた。何かあるとすぐ「セクハラ受けてない?」としつこく聞く口うるさいおばさん職員の役で笑わせてくれたけど、「エバン」でもやはり口うるさい秘書役。あとは知らない人が多い。テレビでエバンのことをネタに笑いを取っていたのは、ジョン・スチュワートか。アカデミー賞の司会とかやってる人。さて、箱舟作りの見物人は日に日に増えるけど、誰も手伝わないのはなぜなんだろう。エバンの言動に対し、からかう人はいても、同調したりあるいは徹底的に攻撃する人どちらも出てこない。聖書を読み、教会に通い、私なんかよりずっと神を信じている人が多いはずなのに。人々が笑いを取るためのヤジを飛ばすだけの存在、あるいは傍観者としてしか描写されないのは不思議な気がした。エバンの予言通り洪水が起き、ロングの悪事がばれたことでそのへん一帯(エバンの新居があるあたり)は乱開発がやみ、昔の自然を取り戻すだろう。一件落着。エバンは元通りの姿になり、これからも議員としてやっていく・・という結末にはちょっと?だった。だって彼、神様に会ったんですぜ。神様の声聞いたんですぜ。

エバン・オールマイティ4

彼に対する世間の目は?期待は?扱いは?今まで通りってわけにはいかないでしょ。何をするにも注目され、間違いは許されず・・要するに窮屈になると思うが。家だって洪水で流されちゃったんですぜ。一家で楽しくハイキング・・なんてやってるバヤイではないと思うが。映画だからハッピーハッピーで終わるけど、あたしゃエバンの今後が心配で心配で・・。とまあ、疑問や不満もあるけど、全体的には満足。好感の持てる映画。イチャイチャシーンがないから家族みんなで安心して見れる。子供達がまたみんないい子で・・。ハイキングに行く約束がエバンの仕事の都合でだめになっても、わりと大人しく受け入れる。ぎゃあぎゃあ文句言ったりしない。箱舟作りも興味を持って快く手伝う。たいていの映画だとテレビゲーム漬けの子が出てくる。朝から晩までピコピコピュンピュン。某映画に出てくるガキは子供のくせにすかしたヘアスタイルで、見る度にぞっとさせられた。口のきき方も何様だよって思うくらい生意気で・・。あんなの見たら人類滅亡賛成の方に考え傾くと思うが・・って何のこっちゃ!それにくらべればエバンの子供達はとても普通で、まともで、いい子達だった。ジョーンだって知的で暖かみのある、善良な女性だ。さて、箱舟の完成が近づくにつれて髪もヒゲも白くなり、すっかりノアのようになったエバン。それでも時には心がぐらつき、悟りを開いた仙人、聖人というわけでもないけど、落ち着きは出てきた。カレルは顔立ちがぎらぎらと強烈だけど、その目には悲しみのようなものも漂っている。そのせいでコメディーでありながら、ヒューマンドラマのようにも思えてくる。カレルはその両方を出せる俳優なのだ。ますますレモンを思い出してしまうではないか。これからもカレルには注目だ!前に書いた「品」だけど、この映画にはあると思う。町で上映されている映画の題名が「40歳の処女マリア」というのは、彼の出世作に引っかけた品のないジョークだと思うけど、それ以外は別に・・。この映画のテーマは”神”の言った「相手への愛と尊敬」だと思う。それは見ていてしっかり伝わってきた。今のエバンの場合、その「相手」には動物も含まれると思う。彼は今回の経験で人間的にも成長することができた。