アレキサンダー

アレキサンダー

チラシやパンフには製作費200億円なんて書いてある。IMDbだと1億5000万ドルで、ちょっと違うけど、まあどっちにしろものすごい金額なのは確か。成績は・・アメリカでは大コケってことになるのかな。こんな企画よく実現したものだ。「グラディエーター」や「トロイ」が成功したのでこれもイケル!と思ったのかな。同じ映画とってもCG使いまくりで100人を1000人にも10000人にも見せるとか、そういうとり方をする監督だっていただろうに。そのぶんキャストにお金をかけてさ。コリン・ファレルみたいなぱっとしないアンチャンじゃなくてさ。あッコリンファンの方怒らないで最後まで読んでね。オリバー・ストーン監督のことは全然知らないが、ちょっとクセのある作品が多いらしい。そういう人がぱっとしない俳優主役に据えてお金いっぱい使って思い通りにとって、モトが取れると(出資者は)思っていたのかな。成績がどうであれ、後世に残るような傑作ができれば本望だ・・なんて思うわけないよね。ビジネスなんだから儲からなくちゃ。儲かると踏んで作ったけどあにはからんや・・ってことなのかな。最初この映画のこと知った時、金髪のコリン見て思ったのよ、似合わねー!金髪がおかしいだけでなくヘアスタイルも似合わない。英雄アレキサンダーって感じ全然しなくて顔つきしょぼいし。時間は・・3時間?なげー!そのうち内容がポチポチわかってくる。ホモホモムードたっぷりみたいだぞ、うげー。・・で、今週で終わりというところまで迷っていたわけよ、例によって。何だかマイナス要因ばっかりでしょ、ラジー賞最有力候補とか・・。でも・・見に行った!近くのシネコンへね。最初から二回見ることは考えてなかった。3時間二回はムリ(私もトシだし・・)。さてしょぼいコリン・ファレル以外の顔ぶれは・・。アンジェリーナ・ヘビジョリー(オリンピアス)、アンソニー・ギャライクラモラッタノホプキンス(プトレマイオス)、クリストファー・マダイキテタノネプラマー(アリストテレス)、ジャレッド・ナマエマチガッテオボエテイテゴメンネレト(ジャッジド・レトだと思い込んでいたの。「ジャッジ・ドレッド」のせいかな。へファイスティオン)、ジョナサン・イロッポイネリース・マイヤーズ(カッサンドロス)、ヴァル・ダレダカワカンナカッタヨキルマー(フィリッポス)・・そんなところですかね。

アレキサンダー2

内容は・・NHKの大河ドラマみたい。それも総集編。私はもう大河は卒業しちゃったけど、ダンナは何を血迷ったのか毎週「義経」を見ているわ。・・で、静が出てくると「エッ、義経と静御前ってこんな小さい時にもう出会ってたの?」なんてびっくりしているわけよ。「作り事に決まってるじゃん、信じちゃだめだよ」って、私の方がよっぽどびっくりよ。子供じゃあるまいしテレビでやること全部事実だって信じちゃだめでしょーが。しかも・・アンタ社会のセンセーでしょーが。・・とまあそれは置いといて、毎回のように連発しているでしょ、チチウエー、ハハウエー、アニウエー、シャナオー・・。昔「新・平家物語」だったか、総集編見てたら泣くシーンばっか!男も女も老いも若きもまあよく泣くのよ。何でだー?と不思議だったけど、一年間やったうちの見せ場をつなげると、どうしてもそうなっちゃうのよ。・・で、そういうのにある意味では慣れてるから「アレキサンダー」を見てもさほど何だこりゃとは思わなかったのよ。憎み合う父と母、子供のアレキサンダーはどうしてもそれに影響される。父と子、母と子の間にも複雑な感情がある。好きだけど嫌い、愛してるけど憎んでいる、尊敬してるけど軽蔑している、仲がいいけど仲が悪い。どっちか一方はありえない。あるシーンによって仲良くしていたり反目していたり、ちぐはぐな印象を受けるが、まあそれが家族ってもんだ。それにしてもホプキンスのシーンは長いな。最初すっごくいい感じ、超大作!って感じで始まるのに・・。いい音楽かかって、アレキサンダーの彫刻とか出てきて、ワシが飛んできて・・ああそれなのに。いつまで続くんだよー、何か心配になってきたぞ。別にホプキンスでなくたって、若い時のエリオット・コーワンでいいじゃん。ホプキンスが出てくる度にもっとお金の節約できたのに・・なんてしょーもないこと考えちゃう。さてアレキサンダーの両親見ていて思い浮かべたのは藤原兼家と青大将・・じゃない右大将道綱母。有能で色好みの夫と美しく賢く気位の高い妻。男はねー若くてきれいで強情っ張りな女性は好きだけど、あんまり度がすぎると嫌気がさすものなのよ。一時的な興味がうすれると、あんまり頭はよくなくても、とびきりの美女じゃなくてもいいからホッとできる女の方に興味が移るわけ。競争社会で生きてるから癒されたいのよ。

アレキサンダー3

道綱母にしろオリンピアスにしろ、自尊心が強すぎて自分の方から折れるということがない。満たされない心のはけ口は息子へと向かう。愛情だけでなく夫への恨みの念まで注ぎ込むのだ。息子の身にもなってみろっちゅーの!自分の姪がフィリッポスの子を生むというので有頂天になり、アレキサンダーを侮辱するアッタロス。ここらへん平安時代の藤原氏と同じだよな。娘を入内させ、男御子を授かることを願う。ところでこの姪エウリュディケをやった人、初め見た時男の人かと思ったよ。誰かに似ているなあとずっと思ってたんだけど、さかなちゃんにそっくりじゃん。それにしても孤軍奮闘のオリンピアス、彼女には腹心とかいなかったのかな。いろいろやるには(フィリッポスの暗殺とか)手下が必要だけど、彼女とそういう手先とのつながりって全然出てこない。アンジェリーナは大熱演だが、いつも一人なのであんまり権力があるようには見えない。いつもヘビを体に巻きつけているのは不気味とか妖艶と言うより滑稽だった。彼女のやることと言えばアレキサンダーを叱咤することだけ。オリンピアスにはアレキサンダーしかいなくて(アレキサンダーには妹もいるようだが全く出てこない)、あとは何もなし。フィリッポスへの憎しみの裏返しである愛情をすべてぶつけてくるから、そりゃアレキサンダーだってそのうちいやになるわさ。いちおう遠征を続けるのには彼なりの理由があるけど、そんなの誰も信じない。ボクチャンどっか遠くへ行ってママの支配逃れたいのー・・つまりはこういうこと。遠征・戦いにしてもその描写はさほど英雄的ではない。特に後半は落ちぶれムード。何たってほらコリン・ファレルだもん。華がないとかブサイクとかスケールが小さいとか、まあけなされていて、それはまあそうなんだけど。「若さと美しさを誇るアレキサンダー」にはとても見えない。ミニスカートだし金髪のカツラかぶって女装しているヒゲの濃いアンチャンにしか見えないんだってば。やってることも前半のクライマックスと後半のクライマックス、両方ともあと一歩のところで敵の首領討ち損じるでしょ。見ている方も「あ~あ」となる。一人で敵陣へ乗り込んでいくところは上杉謙信思い出すよなー。こちとら新潟県出身だからさ。川中島での謙信と信玄の一騎討ち。でも失敗しちゃう、あ~あ。・・さてと、ここらへんでホンネ言っちゃいます。

アレキサンダー4

その前に・・今日までやっている上野まではるばる見に行ってきた。ガラガラかと思ったらお客さんすごくたくさん入っていてびっくり。都内ではここしかやってないからね。隣りのオバさん途中から靴脱いで正座してた。そのうち眠り始めた。ガウガメラの途中で目を覚まして椅子の上に立ったりもぞもぞしていたかと思うと前の席の背にカカト乗っけていた。曲げたりのばしたり忙しいこっちゃ。まあそれくらい見るのは大変なのだ、長いから。・・で、ホンネだけど・・私が三回半も見に行ったのは・・ずばりコリンのせいなんですの!題材のせいでも監督のせいでもなく。コリンは出演作が続々と公開されているけど、いずれも見逃しちゃっていて、見たのはWOWOWでやった「ジャスティス」だけ。ここでの彼もぱっとしない役。スポットライトが主演のブルース・ウィリスにばっか当たるような作り。何でもかんでも隠していてストイックで、でもりっぱに成功させて、一人で責任負ってみんなの前で殺されて、ああ何というりっぱな英雄!彼のことは決して忘れません、感動しろこら!・・という強制的な映画。「K-19」もそうだったな。こっちはハリソン・フォード。悪役に見えるけど実はりっぱな人でした。ハリソン・フォードなんだから善人の英雄に決まってるだろーが、感動しろこら!・・という押しつけがましい映画。あーやだやだ。私こういうの大嫌いなのよ。コリンが出てるから、ジョンが(レックスと言うべきか)出てるから見るのであって、さもなきゃ見ないわよこんなアホ映画。「ジャスティス」でのコリンはそういうわけでスポットライトが誰かさんにばっか当たってるので(くり返すけど)ぱっとしなかった。でもそこが心に残ったのよ。アレキサンダーも似たようなもので、あんまり英雄には見えない。一時的には見えるけど。家庭的な暖かさも知らず、やることなすこと挫折続き。これで美しくも心やさしい伴侶にめぐり合えたというなら少しは救いもあるけど、ロクサネじゃあねえ。この映画ロクな女性出てこないっていうのが特徴。ダレイロスの娘とかエウリュディケとか。普通もっときれいな人出てくるでしょ。コリン自身しょぼい顔してるから、いくらまわりのセット豪華に作ってもあんまり伝わってこない。まあいくら本物らしく作ってあってもこっちにはCGだってわかってるから、素直に感動できないってのもあるけど。

アレキサンダー5

アレキサンダーをもっと華のある人が演じていたら・・というのは誰もが思うことだろう。そしたらもっとヒットしたろうに・・とかさ。でももしそうだったら私は見に行かなかったな。私が行かなくても映画館はいっぱいになっただろうからさ。私はコリンだったから見に行ったのよ。見に行ってあげなくちゃ・・って思ったの。けなされていたらううんそんなことないわよって弁護してあげたかったの。だからしょぼいアレキサンダーでも平気。人物の掘り下げが浅いとかいろいろ言われていても平気。それを補ってあまりある美点・見どころがあるから。さて家族にめぐまれず東征には失敗、彼の考えはまわりには理解されず、苦難の道を歩むアレキサンダーだけど、心の支えとなるへファイスティオンがいつもそばにいてくれた。最初はどの程度まで描写するのかと期待・・もとい、心配していたけど何もなかったな(残念)。別に克明に描写しろとは言わないけど、何がきっかけでお互いを大事な人と思うようになったのか、そこらへんは知りたかったな。アリストテレスの講義が影響しているのは確かだけど。幼なじみで一緒に学んだり取っ組み合ったり・・そんな中でアレキサンダーが唯一負けたのがへファイスティオンの太腿なんだそうな(プトレマイオスじいさん談)、何のこっちゃ。腕力じゃなくて腿力かよ。へファイスティオンはいつもアレキサンダーのそばにいて、決してでしゃばらない。容姿もアレキサンダー以上に美しく(子供の頃はアレキサンダーの方が勝ってたのに・・コリンはたいていの者には負ける)、気品がある。恋人どうしと言ってもそれはほとんど純粋な友情でもある。アレキサンダーがダレイロスの娘を家族同様に遇すると誓った時、へファイスティオン(何でいつも屁ファイって変換されるのかな)の方を見るでしょ。へファイスティオンが目で「いいよ」ってうなずいて・・。そこが何とも印象的。ロクサネと結婚すると言い出した時も二人の友情は変わらない。たださすがにへファイスティオンは涙ぐんでいて、それでもアレキサンダーを祝福しようとけなげにふるまう。指輪を贈って・・こらプトレマイオス、何でアンタがへファイスティオンとアレキサンダーの大事な指輪しとるねん。持ち主と一緒に葬ってあげんかったのかい。ガウガメラの戦いの前夜話をするシーンもよかったな。お二人さん、何でテントの中に入らないの?

アレキサンダー6

あの話の流れなら当然・・「あたしこんやはひとりではいたくないの」って言ってるんでしょ?あら?違うんですか?「ひとりでいたくないこんやだからこそこんやはひとりでいなくてはならないのである。なぜならこんやはさいごのよるではなくてはじまりのよるなんだからである」あのねーアレックス、もっと自分に素直になろうよ。へファイスティオンがかわいそうでしょーが。アレックスったらボクを誘っているのだとばかり・・そんな顔してましたぜ。前にも書いたようにこの映画出てくる女性はぱっとしなくて、ヤマネコイモネエチャンロクサネにケショウオトシタシェールフウスタテイラだもんね。そのぶんどうしてもへファイスティオンが魅力的に見えるのよ。この映画女性の美女は出てこないけど、男性の美女は出てくるので目の保養になりますわ。一番の美女はカッサンドロスでありんす。カッサアランドロンスに改名したら?彼もへファイスティオンも、美しいだけでなく、強い武将であるというところがまたいいんどす。ジャレッドは「パニック・ルーム」しか見たことなくて、あれってほとんどキレっぱなしの役だからそんなに興味もわかなかったんだけど、今回はステキだった。ロングヘアーに整った若々しい顔立ち。ジョナサンの方は色っぽいとか妖艶な美しさだけど、ジャレッドはそういうのとはちょっと違うな。純粋で控えめで・・。彼今なら「クロウ」のエリックいけますぜ!タウンゼント様がだめならジャレッドさん、アンタお願いしますがな。ロングヘアーに黒ずくめの衣装、哀愁をおびた澄んだ瞳。似合うと思うわー・・彼を見ながらそんなことばっか妄想しておりましたとさ。さて男と男がじっと見つめ合い、君の首を傾げるクセ好きだよ(アレキサンダーは実際首が左に少し傾いていたらしい。クセだったのか斜頚だったのか)・・だの、君の瞳にラブ・・だの、君が死んだらボクも死ぬだのオトメチックな言葉かわすんで、居心地の悪い思いをしたお客もいたと思うが、私自身はそうでもなかったな。それ以上の描写がなかったことで、かえって二人の間に通う純粋な友情が強調されていたと思う。少年時代からの愛馬ブーケファラスと、心の支えへファイスティオン、その両方を失った時、アレキサンダーは生きる気力をなくしたのでありました。彼32歳にして人生に疲れきっていたんですよ。

アレキサンダー7

子役は二人ともかわいくてよかったな。コリンになったとたんありゃーとは思ったけどさ。とても18には見えん。最初に登場した時から人生に疲れていて、見てくれもやることもみーんなしょぼくれている。でもそこが何とも言えないのよね。共感できるってゆーか。私も含め、たいていの者はさえないしょぼい何やってもうまくいかない毎日を送っているわけで・・。映画の中でまでそんなの見たくないよって人はこの映画に失望するだろうし、ご同類様は「わかるよその気持ち・・」となるわけね。美貌の英雄が戦いに勝利して財宝と美女を手に入れてハッピーエンドってのとは違うからさ。勝ったと言っても厖大な死傷者が出たわけで、そこらへんもしっかり描かれていた。兵士の間にくすぶる不満もね。インドでの戦いで重傷を負ったアレキサンダーが姿を現わした時、兵士達が歓呼の声を上げるのが不思議だった。戦う前は不満ばっかたれていたわけでしょ。もう反乱すら起きかねないような。みんな故郷へ帰って家族に会いたいわけよ。でも何だかんだ言ってもリーダーが死んでしまうのは困るわけ。リーダーが死んで負け戦ということになると自分達は殺されるか捕虜になるか異国の地におっぽり出されるか。それにくらべりゃ多少不満があったってリーダーがいて給料もらえた方がまだマシ・・そういうことなのかしらね。戦闘シーンは二回あるけど、前半のガウガメラの戦いの方がすばらしかったな。何もない砂漠、乾燥した砂の世界。それに対してインドの方は密林、湿った泥の世界だ。ワシの目で全体を見渡すような描写と、木々が邪魔をして決して全体は見ることのできない閉塞感の感じられる描写。かなり対照的な戦いなのよね。密林の方がとるの大変だったろうな・・とは思う。戦うのに邪魔な木々は撮影にも邪魔だったことだろう。・・で、ガウガメラの戦いだがまず演説から始まる。さっさと戦闘シーンやればいいのに何ちんたらやってるんだという批判もあるようだが、私はそうは思わない。リーダーの資質として重要なのはもちろん勝つための戦術を考えるアタマとかそういうのがあるだろうが、兵士をいかに戦う気にさせるかというのもある。誰だって命は惜しいから戦いの前にはびびる。突入してしまえばもうパニック状態になって無我夢中で戦うが、そこまでどうやって持っていくか。兵士には言葉で士気をあおってくれる人間が必要なのだ。

アレキサンダー8

この戦いがいかに正当なものであり、それに対し敵はいかに邪悪なものであるか。天は正しい自分達に味方し、敵には鉄槌が下り、戦いが始まったとたん胡散霧消するであろう。味方の勝利は間違いなし!普段そんなこと聞いても「ケッ!」と思うはずなのに、こういう時は何の疑いもなく受け入れてしまう。ダレイロスの方だってハッパかけてたし、みんなやってるのよ。時代が変わってもね。「タイムライン」では「神のご加護を!」とかさ。日本だったら「神仏もご照覧あれ!」とかさ。・・で、演じている人の役者としての力量がはっきりするのもこういうシーン。馬に乗って声を張り上げ、兵士だけでなく見ている我々をも納得させるとしたら・・いい役者ってことになるわけよ。・・で、コリンが選ばれたのもそのせいだと思う。見てくれはしょぼいが演説には説得力がある。いちだんと声を張り上げ「グローリー!」なんて言った時にはこっちの胸まで熱くなりましたぜ。コリン見事!見てくれじゃない、ハートだぜ、ガッツだぜ!演説は後半にもう一度ある。兵士の不満を何とかなだめようとするシーン。この時はアレキサンダーも落ち目だから、声を張り上げれば張り上げるほど空しさややけくそ感が漂う。それでもなお自分の意を押し通す。とにかく演説は戦いの一部なのよ。演説からすでに戦いは始まっているわけ。決して余計な描写ではないのよ。・・で、そういうのろくさいことから始まって、兵士がそれぞれ動き出して、しまいには乱戦になって何が何だかわからないような狂乱状態となる。スピードがだんだん速くなって、しまいには手がつけられなくなる・・そんな臨場感がすばらしかった。このシーンをテレビで見たとしたらここまでの迫力は感じなかったと思う。映画館で見てホントによかった。入場料のモトは十分取れたぞ!ラクダが出てくるのは「アラビアのロレンス」を思い出す。ロレンス達がアカバ攻略に出発する時、女達が岩の上から歌みたいなので送り出すけど、ガウガメラの戦いのシーンでも音楽とともに女性の声が聞こえてきて、何だか似てるなーって。あっちは一直線に攻め入ってきたけど、こっちはああなってこうなって。二回三回と見ているとどういう作戦なのかわかってくる。双方がにらみ合って真ん中で激突し、肉弾戦というのなら「ハム2」があるけど、あれってCG使いまくりでハデではあるけどリアルさはない。やっぱ本物は違いますって!

アレキサンダー9

砂煙で何がどうなってるのか見えない。馬がこっちに向かってドドドッって走ってきて、地震みたいに画面がゆれる。・・こういう時にカメラゆらすのが正解なのだ、わかったか!いやーもう私まで渦に巻き込まれているようでおたおたしちゃいますわ。その一方で上空からワシの目を通じて全体像を見せる。人間達の愚かしい行為。命のやり取りもワシから見ればただの風景。でもアレキサンダーにはワシが勝利の象徴に見える。人間は何かしら心のよりどころを求める。アレキサンダーにとってはワシ、兵士にとってはアレキサンダー。すばらしい戦闘シーンであると同時に、いろいろ考えさせるところのあるシーンでもある。馬から下りて切り合うところもよかったよコリン。戦いが終わって損害の多さに泣いてるところもよかったよコリン。インドでの戦闘は象を使ったのが異色。密林の中だし狭さを表現するのにカメラは大ゆれだし、よくとったなと感心する。・・でも目は疲れたな。馬に矢が刺さるところは血がピューッと吹き出てリアルー!エンドロールで「いかなる動物も殺傷してません」とか何とか断り書きが出なきゃ、ホントに殺しちゃったんじゃないの?と思うくらい。いやー馬も象も、ついでに人間もご苦労さん!この戦いでひん死の重傷を負ったアレキサンダー、彼を助けようとして象の鼻に引っかけられて落馬したへファイスティオン、戦っているうちに腿の内側あたりを切られてこっちも重傷。えッ彼死んじゃうの?って心配したけど・・よかった、助かって!あッアレキサンダーが助かったのもよかったけどさ。アレキサンダーボロボロじゃん。後はもう話はかけ足。バビロンに戻って数年後(?)心の友へファイスティオンが病の床に。やっぱ花の命は短くて・・佳人薄命、へファイスティオンも例外ではありませんでしたのじゃ。続いてアレキサンダーも・・。ただこの二人、プトレマイオス達によって毒殺されたかのように描かれている。アレキサンダーはロクサネがへファイスティオンを毒殺したのではないかと怒り狂ってたけどさ。ロクサネはアレキサンダーの死後第二夫人のスタテイラを毒殺したそうだ(プトレマイオスじいさん談)から、こういうシーン入れたのかも。宴会の席でアレキサンダーは明らかに毒と知りつつワインを一気飲みして倒れる。へファイスティオン亡き今、ボクだけ生きててもしゃーないもんね。

アレキサンダー10

ロクサネにやっとこさ子供ができたけど、ボクもう世継ぎなんてどーでもいいのよ。フィリッポスとオリンピアスの間でボクが苦労したように、生まれてくる子も不幸になるだけなんだもん。ボクは誰にも邪魔されることのない天国でへファイスティオンと仲良く暮らすんだもん。彼が待っててくれるからボク死ぬのちっとも怖くないんだもん。早く行きたいくらいなんだもん。力を合わせて戦った仲間達だが、次々に裏切りやら何やらで減っていく。考え方の小さな相違がだんだん修復不可能な溝へと発展していく。酒の席でのちょっとした言葉。そこでやめときゃいいのにさらに言いつのる。これ以上言ったら取り返しがつかなくなる。それがわかっていて止まらない。最後には血が流され、嘆いたとて死んだ者は帰ってこない。そういう言葉の応酬によるエスカレートぶり、ある時点でがらっと態度が変わるアレキサンダー、その瞬間の表情、そのセリフ、コリンうまい!スケールが小さいだの何だのと言われるコリンだが、決してそんなことはないのよね。私はけっこう感心したよ。さてアレキサンダーが後継者を決めずに亡くなったため、その後はお定まりのお家騒動。アンタらアレキサンダーを毒殺した後のこと相談しとらんかったのかい。毒を飲むシーンでのそれを見つめるプトレマイオスの表情。バレバレでっせ。この人わりとハンサムな人だけど、ヘアスタイルのせいでどうしても「3ばか大将」思い出しちゃうの。なぜか美しく化粧したカッサンドロス。いやージョナサンきれいですねー。鼻や口のあたりはキーファー・サザーランドに似てますな。あいまいさを感じさせる口元。ジョナサンはこの映画ではちゃんとした男らしい武将演じていて、でも化粧すれば(しなくてもだけど)どんな美女もかなわないような美しさで・・。男性として見ても女性として見ても美しい・・そういうところはとてもよかったな、何だかヘンな表現だけど性を超えた美しさと言うのかな。彼の作品は「メイカー」しか見たことないけど(「マン・オブ・ノー・インポータンス」はほんの端役だった)、うまく成長したな・・って感じ。カッサンドロスはオリンピアス、ロクサネ、アレキサンダーの息子、みんな殺しちゃう。美しき悪役カッサンドロス、美しき野心家カッサンドロス、脇に置いとくのもったいないキャラ。

アレキサンダー11

それにしても・・まだ暖かいであろうアレキサンダーの遺骸のまわりでいがみ合うプトレマイオス達の醜さよ・・。せめて隣りの部屋でやれ!それに対してすべてから解放され安らかなアレキサンダーの死に顔よ・・。どっちが幸せかは一目瞭然。・・と言うわけで見る前はさほど期待してなかった「アレキサンダー」、まあ確かにいろんな欠点はあるわさ。いちいち書かないけどさ。でも・・私ははまったな。一般公開の最後の週になってやっと見に行ったせいで、三回半しか見ることができなかったけど、もっと早く見に行ってれば・・。四回見たとか五回見たとかそういう熱心な人もいて、偉いなあ。けなす人がいる一方ではまり込んでいる人もいるってことね。わかる気がするわ。音楽もとってもよくて早速サントラゲット!「オペラ座の怪人」のサントラいっぱい並んでるけど、こんなのいいから「アレキサンダー」のサントラ買いませう!!担当は・・ヴァンゲリス?やっぱりねえ・・格が違うわさ。「ロクサネのベール」という曲が好きだ。結婚式でのロクサネはベールをかぶっているから表情はわからない。情熱的な黒い大きな瞳は何を思っているのか。式の翌朝「母上のような女性でないといいのだが・・」とつぶやくアレキサンダー。眠っていると思われたロクサネは片目だけ開けてじろりとアレキサンダーを盗み見る。あーだめだ、かわいそうなアレキサンダー、ロクサネじゃ癒してくれないよ。この曲はへファイスティオンがアレキサンダーを訪ねてきたことを怒るロクサネに、アレキサンダーが君のことも愛してるんだと説得するシーンで流れる。アレキサンダーのロクサネへの愛情を表現しているのだろう。哀愁をおびたメロディーには胸がキュンキュン!ただし私にはこの曲はへファイスティオンの心境を表わしているように思えてならない。結婚を祝しながらも涙ぐんでいるところ、大事な指輪を贈るところ、はーロマンチック!この曲を聞く度に思い出すことでありませう!へファイスティオンの清らかな涙を!・・てなわけでコリンとジャレッドにポーッとなってる私。アーロンにポーッとなってたと思ったら。シネコンで一回、Sムービルで一回、上野で一回半・・自分でもわかってるのよ、効率の悪いことやってるなあって。時間とお金かけてさ。あーでもいいの、これが私のやり方。不器用ですから・・(健さん風)。DVD出るのいつかしら(アホ)。