悪魔の恋人

悪魔の恋人

今は有名になっていい人の役が多いけど、昔はこんな役もやってましたシリーズ第一弾(第二弾がいつになるかは知らんが)は、マーク・ウォールバーグです。16歳のニコール(リース・ウィザースプーン)は、両親が離婚したため母親と暮らしていたが、一年ほど前から父親スティーヴ(ポール・ピーターセン)と暮らし始めた。スティーヴには後妻ローラ(エイミー・ブレネマン)と、ローラとの間にできた幼い息子トビーがいる。スティーヴは建築家だろうか。海辺の豪邸、広大な敷地、入口には警備員が詰めている。ニコールはまだ父親や新しい家族との暮らしに慣れない。ずっと離れていたせいで、どうやってすきまを埋めていいかわからない。それはスティーヴも同様。お互い手探り状態。ニコールにはマーゴ(アリッサ・ミラノ)、ゲイリーといった親友がいる。マーゴとクラブへ行った時、ビリヤードをしていた青年と目が合う。マーゴはその青年の連れらしいローガンとすでにいちゃいちゃしていたが、内気なニコールは一人でうじうじしているだけ。その晩は家族揃ってコンサートへ行く予定だった。しかしスティーヴの仕事の都合で計画はおじゃん。腹を立てたニコールは、マーゴに誘われていたバンドの演奏を聞きに行くことにする。そこであの青年にばったり。なぜか話が合い、好意を持ち合う二人。ニコールは彼デヴィッド(ウォールバーグ)を家に招く。夜遊びしたというので心配していたローラやスティーヴだが、彼らの想像と違い、デヴィッドは好青年に見えた。礼儀正しく真面目で人当たりがいい。トビーや犬ともすぐ仲良くなり、ローラの仕事も気さくに手伝う。恋に落ちた二人は、スティーヴとローラが家を留守にした晩、とうとう結ばれる。その際ニコールはデヴィッドに玄関を開ける暗証番号を教えていた。学校でニコールが幸せいっぱいでゲイリーにのろけていたその時、現われたデヴィッドはいきなり彼を殴り倒す。あまりのことに泣き出すニコール。デヴィッドはなぜこんなことを?・・ストーリーは何度も使い古され、カビが生えていそう。多感で孤独な少女が恋に落ちる。ハンサムでやさしい王子様。まわりはバラ色、幸せいっぱい。でもある日突然恋人は正体をあらわす。二人の間には一時的に距離ができる。しかし恋人は弁解し、少女は彼を許す。あれはちょっとした間違い、何もかも私を愛するが故の行為。

悪魔の恋人2

彼を疑ってはいけない。まわりのみんなが疑っても私だけは彼を信じてあげなくちゃ(つまりゲイリーは殴られ損ってことですな)。まわりの大人・・特に父親・・は、早い段階で危機感をいだく。あの男と会うのは許さん。娘と会うのは許さん。それを知った少女は猛烈に反発する。親より恋人の方を信じているから。こうなると何を言ってもムダだが、そのうち娘も真実を知る。自分はだまされていたのだ。私は何てバカだったの!その頃からまわりで犠牲者が出始める。ヒロインを殺すわけにいかないから、それ以外の者・・例えばニコールをなぐさめてくれるゲイリー、家族の危機にかけつける警備員が殺される。彼らの命は驚くほど軽く扱われる。・・ね、カビが生えてるでしょ?クライマックス、ヒロインは逆襲に出る。この場合ニコールはデヴィッドの背中に火かき棒か何かをぶすり。とどめはスティーヴが窓からほうり出す。二人の初めての共同作業はケーキ入刀ではなく、デヴィッドを殺すことでした・・って何のこっちゃ!デヴィッドは死に、父娘は抱き合い、めでたしめでたし。撃たれた警備員のことなんか当分思い出さないんだろうなあ(例え今は生きてても、そのうち手遅れになりまっせ)。さて、私がこのDVDを買ったのはモチ、マークが出ているから。リースは「連鎖犯罪」でおなかいっぱいになるくらい見たからもう見たくない。できれば別の女優さんで見たかったな・・って、今更ムリですけど。アリッサは16歳というのはちょっと・・だいぶ・・すごく・・ムリがあるんじゃないの?ニコール、ローラ、マーゴの各キャラにはあんまりおもしろみはない。今までどちらかと言うと優等生的な人生を送ってきたニコール。それが人生最初の大失敗をやらかす。ローラは、私ならニコールとうまくやっていけると思っている。何たって女どうしだし、自分は年上だし・・と、訳知り顔。マーゴは16歳にしてクスリ、男でボロボロ。先が思いやられるが、若い子の常として将来の心配なんかしない。それにくらべると男性陣は興味深い。この頃のマークはまだ若く、粗けずりな感じ。ちょっと眠そうな顔つきがういういしい。時々猿みたいな顔になる。鼻の穴が広がるので怖くない。笑っちゃう。デヴィッドは小さい頃から里親や施設を転々とし、苦労したぶん異常になっちゃった。

悪魔の恋人3

自分がどういうふうであるよう期待されているかわかるから、演技するのがうまくなった。何の苦もなく好青年を演じることができるし、その反対も。里親や施設とおさらばしたい時には悪党を演じればよかった。彼はすべて自分中心だから、ニコールと一緒にいたというだけでゲイリーを殴り倒す。二人が何でも話せる親友だとか、そういうのが理解できない。恋人である自分以外の男と彼女が話すのは、男に強要されているからとしか思えない。だからニコールを助けるためゲイリーを殴った。スティーヴに対してもデヴィッドはすぐに本性をあらわす。彼にとっては父親は最大のライバル、障害である。だから汚い手を使ってでも蹴落とす。彼はまた自信家でもある。何かあってもニコールは自分を信じてくれると思っている。こっちがヘマをしても、弁解すれば元通りになると思っている。ウソをついたり、人をだますことを何とも思っていないので、しらじらしく思えるような弁解も心からのようにやってのけることができる。相手が信じればそれに乗じるし、信じてくれなくたって平気。また別のウソをつけばいい。・・で、見ている我々にはそれがわかっているので、そういうどうしようもないやつとしてデヴィッドを見る。でもニコールにはわからない。恋に目がくらんでいるし、自分の始末は自分でできる、ほっといて・・のお年頃。で、そういう怖いものなしの悪党であるデヴィッドだけど、全く同情できないかというとそうでもない。家族とか恋人を心のどこかでは求めている(その求め方は普通の人とは違っているけど)。車を壊されたスティーヴは、仕返しにデヴィッドとその仲間が暮らす家に押し入り、中をめちゃめちゃにする。デヴィッドの部屋にはニコールの写真や、彼女の持ち物(スティーヴがニコールにプレゼントしたもの)が置いてある。明らかにデヴィッドはニコールを(彼なりに)愛しているのだ。それでいて彼はマーゴと関係を持ってるし、他にも相手はいるだろう。彼の中ではそれは矛盾しない。両立できることだ。もちろんニコールにとってはそんなことは許せない。マーゴとの仲を知ったニコールは、今度こそ目が覚める。まあとにかく、デヴィッドが自分だけの聖域(自分とニコールの世界)を作ろうとしているところはいじらしく感じた。

悪魔の恋人4

次にゲイリーだけど、何とも気の毒な役回りだ。大人しくてやさしくて害のない子。こういう子こそ、ニコールにはぴったりなのだが、世の中そううまくはいかない。ニコールのようなタイプは、ちょっぴり危険なタイプに引かれるのだ。デヴィッドのような・・。でも女って抜け目がないから、いざという時戻ってこれる場所も確保しておくのだ。ゲイリーが自分に引かれているってことを見逃すニコールではない!都合のいい男ゲイリー。でも彼はいいやつだから、そのことで何か思ったりしない。何かあったらいつでも戻ってきてね、ボクがついててあげるから・・ってそういうタイプ。殴られて痛い思いしたけど、自分のことよりニコールのこと心配する。あれは彼女が悪いんじゃない。デヴィッドの頭がおかしいんだ。そんなデヴィッドがまた現われ、ニコールに迫る。ゲイリーは勇気をふりしぼって間に立つ。ナイトぶりを発揮する。でもデヴィッドはただの悪党じゃない。彼はその気になれば簡単に人も殺す。ゲイリーは彼の手にかかって・・気の毒に・・。あんな女(ニコールのことよ)のために若い命を・・。ゲイリー役トッド・何とか君は目がキラキラしていてなかなかのイケメン。さて、一見リースとマークが主人公のように見えるこの映画だけど、よく見るとスティーヴにもかなり比重がかかっている。あれこれ複雑なのだ彼は。ニコールの母となぜ離婚したのか不明だが、もしかしたら彼は若い頃は女グセが悪かったのかも。今はローラにラブラブだけど、それでいて若い女性がいるとついついそちらへ目が行ってしまう。例えそれが娘の親友マーゴであっても。つまり心の中にムズムズをかかえている煩悩だらけのおっさん。一方で彼はニコールに対し、父親としての責任と愛情を感じている。今までさびしい思いをさせた埋め合わせをしたいと思っている。愛情を注いでやりたいが、それが時には過干渉となってしまう。最初デヴィッドと会った時には、こんなにいい青年が娘と?・・と、ちょっと信じられない感じ。素直に喜ぶべきなのに、逆に心配になってしまう。こいつ信用できるのか?娘をまかせて大丈夫なのか?その後の誤解されっぱなしの彼には気の毒になってしまう。娘を取られたくない・・と不当に辛くあたっているヤキモチ焼きの父親。娘を束縛しようとする疑心暗鬼のかたまり。家庭内のごたごたに加え、彼には仕事もある。

悪魔の恋人5

一家は普通の家庭よりリッチだ。しかしそれはスティーヴが一生懸命働いているからだ。収入の多さにはそれだけの犠牲も伴う。急に人と会わなくてはならなくなる、急ぎの仕事がある・・などで家族の楽しみがふいになる。ローラやニコールはそれが不満だ。と言って彼らは貧乏でもいいとは思っていないだろう。やっぱり今のままリッチでいたいはずだ。家庭と仕事の板ばさみになっているスティーヴは気の毒だと思う。さらにニコールが持ち込んだやっかいなトラブル。・・さてカビの生えたようなストーリー・・と前に書いたが、クライマックスではちょっと新味を出す。思いがけないものが前に出てくる。それは家。それまでは人間中心にストーリーを展開してきた。冒頭スティーヴがジョギングするシーンがあるが、そうやって走り回れるほど屋敷は広い。森や林がある。しかも警備員が門を守っている。何でそこまでするのか・・と思う。でもニコールやらデヴィッドやらが登場すると、家は背景になってしまう。でもクライマックスでは家がまた前面に出てくるのだ。スティーヴは家にかなりのものをつぎこんでいる。いざという時のための防犯設備。攻撃されても大丈夫なような頑丈さ。半分は彼の趣味、仕事を反映しているだろう。でももう半分は・・彼の家族への思いがそうさせたのだと思う。家族を守りたいという並々ならぬ責任感。そしてちょっぴりは、この世は誰も信用できない、自分で守るしかないという疑り深さ。一番肝腎な玄関ロックは、バカ娘ニコールのせいで暗証番号が知られてしまっていた。それでも家族は力を合わせ、敵(デヴィッド、ローガンおよびその仲間)と戦う。もちろんそのうち彼らに侵入されてしまうが、それでもこの家はよく耐えた。たった一つ疑問に思ったのは、助けを呼ぶのにケータイが使われなかったこと。1996年だとまだ普及してないのかな。さて戦うにしても中心になるのはスティーヴである。ニコールやマーゴは悲鳴を上げるのに忙しい。黙って隠れていてくれた方がよっぽどいいが、16歳じゃ無理か。スティーヴは家族のために大奮闘。何たっていざという時頼りになるのは父親なのだ。てなわけで悪魔のような恋人マークを見るのが目的だったのに、お父さんのがんばりに拍手!の映画でした。彼のことだから今回の経験をふまえて、よりいっそう防犯に心血を注ぐと思うわ!