エージェント・ゾーハン

エージェント・ゾーハン

アメリカではおバカコメディーを次々ヒットさせているアダム・サンドラーだけど、相変わらず日本では人気出ない。イスラエルの対テロ兵士ゾーハン(サンドラー)は無敵の戦士だが、本当はヘア・スタイリストになりたい。人々をサラサラの髪に、ステキなヘアスタイルにしてあげたい。パレスチナのテロリスト、ファントム(ジョン・タトゥーロ)との戦いを利用して、自分は死んだことにし、アメリカへ渡る。いくらファントムつかまえたって捕虜交換ですぐ釈放されちゃうから戦いはいつまでたっても終わらない。これからは自分の人生歩むぞ。・・とは言えアメリカへ行っても彼を雇ってくれるところなどない。あちこちで断られた末、ダリア(エマニュエル・シャーキー)が経営する美容院になかば強引に雇ってもらう。床に落ちた髪のそうじからスタート。そのうち中年・高年女性相手に腕を(腰を?)ふるい始め、評判が評判を呼んで店は大繁盛。いつしかゾーハンはダリアに恋をしていたが、彼女は拒絶。実は彼女はパレスチナ人でファントムの妹だった。ダリア自身はゾーハンがイスラエル人であることもファントムとの関係も知らないが、兄がテロリストであることは知っているのだろう。さて美容院へのお客を乗せたタクシー運転手のサリム(ロブ・シュナイダー)は、ゾーハンが店にいるのに気づき、ファントムに連絡。今はレストランチェーンの経営で儲けているファントムは、やつは死んだはず・・と相手にしないが、証拠を見せられアメリカへ。おりしも美容院付近はウォルブリッジ(マイケル・バッファー)による地上げが進んでいた。立ち退こうとしないダリアの店などに対しいやがらせが始まり・・。アメリカは移民の国だ。戦っている国出身の者がアメリカの下町では同じ通りに店を出していたりする。同じ境遇(移民である、アメリカでお金を稼ぎたい、家族で幸せに暮らしたい)だし、元々は同じような文化、歴史を持つ者どうしである。仲良くできないことはないのだ。「互いへの憎悪は仕組まれたもの」なのだ。・・地球から戦争がなくならないのは、戦争がなくなると困る人がいるからだと思う。ある人にとっては戦争は商売である。地球を滅ぼしかねないような兵器もただの商品。商品だから敵にも味方にも売りつける。高くたくさん売れればいい。他にも平和になってもらっては困る人がいる。そういう人は常に国民に不安感いだかせるよう企む。

エージェント・ゾーハン2

不安材料がない時は捏造してでも・・。あと商売や職業に関係なく、人々を争わせ憎み合わせて喜ぶ根性の曲がった人もいるよな。この戦いは本当に必要なものなのか、誰かにあやつられているのではないか、人々が立ち止まって考え、状況をよく見きわめれば、今起こっている戦いのほとんどはやむと思うよ。誰だって幸せに暮らしたいと思ってるはずなんだからさ。ゾーハンが暮らし始めたこの町でも小さないさかいはある。でもたいていの者は争いたくないと思っている。それに彼らにもわかり始めた。戦うべき相手は別にいる。過激な白人至上主義者や、自分達をここから追い出そうと企んでいるウォルブリッジこそ真の敵だ。ファントムだって本心はテロもチェーン店もどうでもよくて、靴屋になって大好きな靴に囲まれていたい。ゾーハンとファントムは力を合わせ、ウォルブリッジ達と戦う。とまあこういった内容なので一見真面目な・・笑わせてほろりとさせて最後は感動の上質なコメディーと思うかもしれないが、そんなことは全然ない。とにかく下品、下ネタ満載。ゾーハンは中年・高年女性キラーである。自慢は茂みだが、英語だとブッシュだから、そのネタが出る度当時大統領だった人の顔が思い浮かぶこととなる。これって意図的?夫人達の品定めもする。ちゃんとオバマ夫人の名前も出てくる。おバカな中にもきちんとしたメッセージを持ったコメディーと評するか、せっかくのメッセージもおバカのせいでだいなしと評するか・・まあ、たいていのお客はゲラゲラ笑って終わりだろうけど。サンドラーの映画らしくゲストが豪華。中には知らない人もいるけど。目についたところではクリス・ロック。ケヴィン・ジェームズは「モール★コップ」の人か。アメリカでは大ヒットしたけど日本ではDVDスルー。あら?もう発売されてるの?おもしろそうなので見てみたいと思ってるんですけど。テニスのジョン・マッケンロー、ヘンリー・ウィンクラー、ラスト近くでジョージ・タケイ。怪しげな集まり・・彼はゲイ?極めつけはマライア・キャリー。メイキングではみんなして特別な人とか女神とか持ち上げていたけど、歌はともかく演技はドヘタだな。表情はぼんやりしてるし動きはとろいし。ヒール高すぎて歩けない・・みたいな。きつすぎるドレスのせいでゆっくりとしか動けない・・みたいな。

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どてっとしていて体全体がもたついていてコメディーらしい軽快さがなく、彼女がうつってると他の者まで動きが鈍くなる・・みたいな。彼女に合わせてるとそうなる。せめて歌でもばっちり聞かせてくれればほほ~ってなるけど、ほんの一節だし。一曲歌うとものすごくお金取られるのだろう。あとは誰がいたっけ。オーリ役イード・モッセリ(危ない名前だなあ)はネーヴ・キャンベルによく似ている。ゾーハンが下宿する家のマイケルは「俺たちフィギュアスケーター」のニック・スウォードソン。関根勤氏そっくりだ。母親役の人は「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」に出ていたな。私はジョン・コーベット目当てで見たけど、あまりおもしろくなかった。サンドラーはヘアスタイルやヒゲのせいでいつもと感じが違う。髪やヒゲはイスラエル人という設定のせいもあるけど、スタントマンにやらせる時顔がごまかせるという利点もあるな。ゾーハンには超人的な力があるので、そういうシーンではワイヤーを使ったり別の人・・水泳や体操やハッキー・サック(地面に落ちないよう足で何回も蹴り続けるスポーツらしい。何を蹴ってるのかは見ていてもよくわからなかった)の選手に入れ替わったりする。ファントムのボートを追ってイルカのように泳ぐシーンではワイヤーを使っているし、水泳の選手の時もあるけど、サンドラー自身もやっている。何しろスローモーションでちゃんとうつすからね。このシーンは今まで見たこともないような傑作で、私の中では「ゴーストライダー」のガイコツライダー砂漠疾走シーンと双璧だな。まあとにかくサンドラーはよくやっていたと思う。顔のしまりのなさもヒゲのせいかいつもほどではなかった。ベン・アフレックに似ている。ゾーハンは幾多の修羅場をくぐり抜けてきたし、もう争い事とは縁を切ったと思っているから、たいていの場合無表情である。そういうところもよかった。あとは・・あッそうだ、これを見たのはシュナイダーが出ていたからなんだわ。どうせカメオ出演だろうと思っていたら違った。昔ゾーハンにヤギを取られてずーっと恨んでいるサリム。でもゾーハンはその後もちゃんとヤギを世話していて・・という暖かいエピソードに見ていてホッ。最近シュナイダーの「アニマルマン」や「ホット・チック」を見たけど、こちらもサンドラー作品同様下ネタが多く、家族揃って鑑賞とはいかないのが残念だ。一人で見るぶんにはいいけどね。