シャーロック4

シャーロック(ベネディクト・カンバーバッチ版)4

シャーロック4の1 六つのサッチャー

だいぶ間があいたが、今でもシャーロックブームは続いているのだろうか。私自身は、待ちに待ったという高揚感はない。どうも見ていても心が踊らないのだ。シーズン3の1話目まではよかったのだが、2話目で急降下。何じゃこりゃ・・と、興味がしぼんでしまった。シーズン4の1話目ということで、それなりに作ってあるが、シャーロックに・・と言うか、ベネディクト・カンバーバッチにこれまでのようなドキドキ感を感じない。すべすべの肌に透き通った瞳。神秘的でキラキラしていて、そこにいるだけで、うつっただけで雰囲気が・・まわりと違っていた。今の彼は普通。何と言うか、年月を感じる。肌はくすみ、シワもそれなりに。それでなくてもメアリー役アマンダ・アビストンがシワシワで。最初出てきた時から気になって。そりゃイギリスらしく、見かけよりなかみ・・演技力で勝負ということなんだろうけど。今回ジョンとの間に女児が誕生。幸せいっぱいに思えたが、メアリーにはどこまでも過去がつきまとう。前回殺人を犯したシャーロックだが、罪には問われない。彼はなぜか一人の老女に質問を浴びせるが、ラスト近くの展開を見ると、彼女の裏の顔見抜けなかったのかよ・・と思ってしまう。閣僚の息子の不可解な死の謎解きがメインかな・・と思っていると、そっちはあっさり解決。シャーロックの興味は盗まれ、壊されたサッチャー元首相の胸像にある。こりゃ「六つのナポレオン」だな・・と見る者は思う。黒真珠の事件と繋がってくるのだと。しかし出てきたのはUSBメモリー。で、メアリーの過去と繋がり、彼女は元仲間に裏切り者と恨まれ、命を狙われていることがわかる。彼女には裏切った覚えなどないのだが。で、スモールウッドとかいう女性が疑われるが、演じているリンゼイ・ダンカンは「パニック・トレイン」に出ていたな。で、真犯人は別にいてシャーロックを撃つが、メアリーが身代わりに。彼女の死は予想外だが、ジョンはシャーロックを責め、何やら暗い展開。シャーロックがカウンセリングを受けるのも?だ。シャーロックとハンニバルにはカウンセリングは必要ないんだぜい。まあシャーロックと赤ん坊のやり取り・・一方通行だが・・は微笑ましかった。オモチャが顔に当たるところとか。

シャーロック4の2 臥せる探偵

今回もシャーロックはむさくるしかったな。不精ヒゲに血走った目。入院している時の肩の出た寝姿とか、泣くジョンを抱きしめるところとか、萌えどころも用意されていたけど、私が見たいのはスッキリした、キラキラしたシャーロックなんですってば。「瀕死の探偵」が元になってるのはわかる。向こうは三日間飲まず食わずなのと、メーキャップで重体を演出したけど、こっちは実際にクスリ?それってまずいんじゃないの?シャーロックなら飲んだフリできるでしょうに。メアリーをなくしたジョンは、シャーロックとの付き合いを断っている。カウンセラーの女性、シャーロックに父スミスのことで相談に来たフィリス、そして本物のフィリス・・何やらみんな同じ顔。ラストのカウンセラーはニセモノで、前回ジョンがバスの中で出会い、メールをやり取りするようになった女性が化けていた?今回はカルヴァートン・スミス役で、トビー・ジョーンズがいやになるほど出てくる。ちょこっと出てくるぐらいならいいが、シャーロックと同じくらい出てくる。冒頭の部分とかもったいぶっていて、まわりくどくて、いつまでたっても話が前に進まない。要するに彼は殺人の衝動がおさえきれないのだ。すでに何人も殺している。金持ちで慈善家だから、まわりの者は誰も疑わない。と言って誰にも気づかれないのではおもしろくないのだ。だからシャーロックを挑発する。シャーロックがスミスの真の姿を暴くには、自分を殺させるしかない。今回一番不気味なのは、シャーロックの病室にするりとスミスが現われるところ。何しろ自分が作った病院だから、自分しか知らない・・使えない秘密の通路、出入口があちこちにあるのだ。そうやって殺人を重ねてきたのだ。まあよかったのはそれくらいで、あとはひたすらジョーンズの変顔をがまん。「シャーロック」で忍耐力を試されるとは思いもしなかった。死んだメアリーがやたらめったら出てくるのも鬱陶しかった。作り手の皆さん、どうしたの?カンバーバッチの、フリーマンの魅せ方忘れちゃったの?事件が起きて解決する・・それがなくなって、シャーロックやジョン自身のことがメインになってから、おもしろさが失せた。

シャーロック4の3 最後の問題

これで「シャーロック」は終了なんて書いてる人もいるけど、ホントかいな。もしそうだとしたらずいぶん失速して、ほとんど墜落したようなものだ。冒頭女の子が目を覚ますと、飛行機の中。酸素マスクがぶら下がっていて、他の乗客は意識がない。操縦室のドアが開いていて、キャビンアテンダントが床に倒れている。こんなものすごい絶望的な状態で、遠く離れたシャーロックとケータイが繋がる。命綱なのに、邪魔が入るから通話は切れ切れ。少女は自分の名前も、どこから乗ってどこへ行くのかも言わない。どうやって少女や他の人達の命を救うのか。シャーロックの頭脳の見せどころ・・いや、そんな必要はない。作り手は解決方法をひねり出す必要はない。少女は実在しないのだ。墜落しそうな飛行機も存在しないのだ。名前も地名も出てこない・・その時点で気づけよシャーロック。今回の彼はヒゲも生えてなくてすっきりしている。でも輝きはない。精神を病んだ妹ユーラスが彼を、ジョンを、マイクロフトを翻弄する。次から次へとおぞましいゲーム仕かけてくる。誰かに誰かを殺させる。さあ選べと迫る。こんなのいくら何でもひどい、見ていたくない。それでも後で、実は死者は出ていなかったのだ・・となるのならいいのだが、そうならない。死者が続出する。最後の方でユーラスは自分の中に閉じこもる。その後のシャーロックとの、ヴァイオリンを使った接触のシーンはすばらしいが、かと言ってああやって終わられても困る。母親の怒りにも首を傾げる。犠牲者達が全く無視されている。普通の親なら娘の犯した罪の重大さに呆然とするはずだが・・。ラストのメアリーのメッセージシーンも私には全く理解できない。彼女にとって一番つらく、心残りなのは赤ん坊を残して死ぬことではないのか。シャーロックとジョンの仲よりそっちの方が重要じゃないのか。何度か思わせぶりに出てきたモリアーティはやっぱりちゃんと(←?)死んでいるのか。何ともはや釈然としないシーズン4ではありましたな。もっと回数が多ければこれから挽回・・と期待もできるけど、それもできない。