食の安全、衣服の安全

講師:藤田和芳・辻井隆行


ー講座概要ー

藤田和芳さん(オイシックスドット大地株式会社会長)と辻井隆行さん(パタゴニア日本支社長)をお迎えして、「食の安全、衣服の安全」をテーマにした鼎談を行う。



ー講座内容ー


【藤田さんのお話~食の何が心配か】

藤田和芳さんが43年前に「大地を守る会」を立ち上げたきっかけは、有吉佐和子の『複合汚染』だったそうです。農業の発展の裏で、農薬や食品添加物が複合的に働いて食べ物の安全性を脅かしているのではないか。温暖湿潤な日本では雑草との戦いのために大量の農薬を使用し、その結果畑からミミズや微生物がいなくなり、多くの大切なものが失われているのではないか。

さらに1996年に遺伝子組み換えが始まり、文明のあり方がずれているのではないかという問題意識を持ち、有機野菜など自然派食品の宅配を広げようとしています。



【辻井さんのお話~環境にやさしい服作りとフェアトレードにこだわる】

服の素材として欠かせないコットンは不純物が混ざると紡げません。そのため、雑草を枯らす農薬(枯葉剤)をガスマスクをつけて散布しています。インドでは多くの生産者ががんで亡くなっています。その事実を知り、パタゴニアはオーガニックコットンの採用に踏み切りました。

もうひとつのこだわりは「フェアトレード」。安価な服を作るために、縫製工場の賃金が食べていけないほど安く抑えられていたり、劣悪な環境で事故が起きたりしています。

こうしたことは日本ではあまり報道されず、気が重くなる話題として避けられがちですが、実は環境問題というのは人間の問題に他なりません。環境が悪くなれば困るのは人間なのです。



【どこから来たかを知れば大事なことが見えてくる】

「私たちの暮らしの中にあるモノの「元」を探っていくと、思いがけないところとつながっていることがわかります。たとえば、武蔵美のある学生が文庫本の紙がどこから来たかを調べると、タスマニアの森林破壊につながっていることがわかりました」と関野さん。

まず大切なのは「知る」ことで、そこから問題解決の糸口が見えてくることがお話しから伝わってきました。農家との関係なら生産者と消費者が顔の見える関係になれば、効率だけではない食の生産につながっていくでしょう。

この3月には「種子法」が廃止されます。種子を守るための国や都道府県の責任を定めた法律が無くなり、多様性が失われれば、今後どのような問題が起きてくるかわかりません。生き物は多様性の中で強くなり、工夫して生き延びることができるのです。

「消費者には力がある。イギリスでキットカットがフェアトレード認証されたのは、カカオ生産地での児童労働に反対するイギリスのお母さんたちが立ち上がったから。2割ぐらいの人が言えば変えることができる。そうして問題を解決していくことは、結局は自分の利益につながる」という辻井さんの言葉が印象的でした。

(足達千恵子 写真:豊口信行)

ー講座内容ー





coming soon



ー講師紹介ー

藤田 和芳(ふじた かずよし)

大地を守る会代表取締役社長を経て、2017年10月より、オイシックスと大地を守る会が経営統合して生まれた「オイシックスドット大地株式会社」の代表取締役会長に就任。100万人のキャンドルナイト呼びかけ人代表、アジア農民元気大学理事長、ふるさと回帰支援センター理事、食料・農林漁業・環境フォーラム幹事、日本NPOセンター評議員。

著書に「畑と田んぼと母の漬けもの」「ダイコン一本からの革命 環境NGOが歩んだ30年」

「有機農業で世界を変える: ダイコン一本からの「社会的企業」宣言」など。


辻井隆行(つじい たかゆき)

アウトドア用品のパタゴニア日本支社社長。東京出身。早稲田大学教育学部卒業後、日本電装(のちのデンソー)に入社。早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程(地球社会論)を修了。大学院修了後、シーカヤック専門店「エコマリン東京」に入社。アウトドアスポーツに魅了され、国内外を回る。パートスタッフとしてパタゴニア東京・渋谷店に勤務。その後正社員となり、パタゴニア鎌倉店勤務、マーケティング部勤務、ホールセール・ディレクター(卸売部門責任者)、副支社長などを経て日本支社社長に就任。

1994年、パタゴニアは化学薬品を大量に使用するコットンに反対の姿勢を取ることを決意し、製品ライン全体でオーガニックコットンの採用に踏み切った。


この講座は2018年3月28日(水)に武蔵野美術大学三鷹ルームで開催されました。