市民にとっての地球永住計画

講師:林家たい平


ー講座概要ー




ー講座内容ー

「笑点」でお馴染みの落語家・林家たい平さんは武蔵野美術大学出身で、現在芸術文化学科の客員教授でもあります。今回のテーマは「市民のための地球永住計画」。ほんの一部ですが、こんな対談でした!


【火星で美大生が大活躍?】

関野「地球永住計画は、火星に行くより地球に永住したいというプロジェクトなんです。15年後に人類は火星に行くでしょうけど…だれが行くかが問題です」

たい平「火星まではどれくらいかかるんですか?」

関野「2年です。火星に着いても穴蔵に入らないといけない。紫外線が強すぎるので」

たい平「じゃあ、楽しくないじゃないですか」

関野「でも最近すごい洞窟が発見されたらしくて、ぼくも帰って来れるなら行ってみたいけど」

たい平「そしたら最初に美大生を送るべきですね。洞窟に壁画を描いてくればいい。5浪くらいしている人いっぱいいるわけですから、4年くらい棒に振ったって大丈夫でしょう(笑)」

関野「ですね(笑)」


【落語はAI時代にもなくならない商売】

たい平「落語に出てくるのは、一番人間が人間らしく生きていて、楽しかった不便な時代なんです。それを生き生きと描いていて、日本人てこうだよな、人間てこうだよな、けんかして殴り合うけど、やっぱり隣に住んでいることが幸せだって感じる瞬間もあるよなとか、愚かなやつ多いなとか。ちょうどいい具合の不便さと人との間合いを落語の中に見出せる。若い人たちはそれを探しているんじゃないかと思うんですよね」


【昔の「もの」にはかなわない】

たい平「今の作家さんには悪いけど、古九谷とか昔のものにはかなわないと思う。昔は人生でひとつだけいいものを作ればいいと思っていた。ものと対峙する時間の長さ、豊かさが違いすぎます」

関野「たたら製鉄をやった時に出会った東吉野の山奥の刀鍛冶がかっこいいんですよ。弟子にハンマーで叩かせるのは、機械を使っちゃうと弟子の体調や心遣いがわからないから。わざと非効率的なことをしているんです。ものづくりによって人のつながりもできるんですよね」


【ふん育】

たい平「今は便所が進化しすぎちゃって、自分のうんこに出会えないですよね。見たくてもちょっと腰を浮かした瞬間にジャーっと流れちゃう(笑)ほんとは自分が出したものをちゃんと見て、ありがとうございましたっていうぐらいのことがあっていいのに。食育だけでなく、「ふん育」も大事」

関野「ぼくが小さいころはまだ肥桶でした。小学校に上がるころからバキュームカーになった」

たい平「すごい!」

関野「先月対談した写真家の伊沢正名さんは、連続3000日以上野糞を続けているんですよ。うんこは他の生き物にとってごちそうですから」

たい平「子どもたちには不便だった時の楽しさを教えなくちゃ。温故知新。うんこ知新じゃないですよ(笑)」


【目標】

関野「人間の特徴は目標をもつことだけど、今、たい平さんの目標は何?」

たい平「笑いがぼくの生業ですから、笑っている中で、人間に生まれてよかったと思うことですね」

関野「ぼくも人間でよかったとは思うけど、ちょっとのさばりすぎじゃないですか」

たい平「そうですね。反省を込めて何ができるかですよね。大学でも言うんだけど、美大生は大量のゴミを出します。ムダなものをたくさん作るけど、出した分だけ愚かさに気づいて、ゴミじゃないものに変えていけばいい。それはゴミを出さない人にはできないことなんですよ」

関野「ゴミは循環しますからね…この対談もまとめる必要ありません。話したことをもとにしてみんなが考えてくれればいいんだけど、あんまり役に立たないかな(笑)」

たい平「くだらない時間がとても大切なんです。それがある日突然役に立つこともある。それが生きていること!」


【玉川上水】

会場からの質問「たい平さんが学生時代に玉川上水をテーマにした新作落語を作られたと聞いたのですが…」

たい平「もうどんな話だったか忘れちゃったけど、下水処理水で清流復活の話をしていた時です。ぼくは玉川上水の近くに住んでいて、歩いて武蔵美に通っていたから玉川上水が大好きです。

美大生でも木の名前ひとつ知らない人がいるけど、友達ができなくても木々の名前を知っていれば、毎日木に声かけて歩けばぜんぜん寂しくない。東京中の人にもっともっと玉川上水を歩いてほしいと思います」


笑いに包まれた楽しい2時間でした。

たい平さん、ありがとうございました!

(写真:青木計意子 豊口信行 報告:足達千恵子)



ー講師紹介ー

林家たい平(はやしや たいへい)

埼玉県秩父市出身。1964年12月6日生まれ。

昭和62年武蔵野美術大学造形学部卒業。

昭和63年林家こん平に入門。平成12年真打昇進。

平成22年武蔵野美術大学芸術文化学科客員教授就任。

日本テレビ「笑点」大喜利メンバー。


この講座は2018年4月9日(月)に武蔵野美術大学三鷹ルームで開催されました。