オーロラの光る地球に生きるということ

講師:片岡 龍峰


ー講座概要ー

地球でオーロラが光る理由、私たち地球に暮らす生き物と宇宙との関係について、研究の紹介を交え解説します。オーロラの映像の上映もお楽しみに。



ー講座内容ー

オーロラはなぜ光り、地球の生き物とどういう関係があるのでしょうか。国立極地研究所准教授でオーロラの研究をされている片岡龍峰さんに、多摩六都科学館のプラネタリウムで映像を交えながらお話ししていただきました。


【オーロラは宇宙であり、地球である】

つまり、宇宙と地球の間にあるのがオーロラです。

オーロラは地上100kmから国際宇宙ステーションのある地上400kmのあたりで光ります。

太陽風、地磁気、大気の3要素がオーロラを生みますが、これらは宇宙放射線から生命を守る3つのバリアでもあります。

地球に吹きつける太陽風(灼熱のプラズマの風)が地磁気(地球内部から発生する磁気)を避けると北極と南極に電力が発生し、そのエネルギーを受け止めた大気の原子や分子が発光するのがオーロラです。

……という説明を聞いても言葉だけではわかりにくいので、全天周プラネタリウム番組『オーロラの調べ』の一部を特別に上映していただきました。多摩六都科学館のプラネタリウムは「最も先進的」としてギネスに登録されている世界最大級のもので、宇宙から見るオーロラの映像が大迫力! まるで宇宙船に乗っているかのような浮遊感でワクワクしました。

【オーロラ4Dプロジェクト】

なんとなくオーロラのイメージがつかめたところで、さらに時空をこえて人間社会との関係を探る「オーロラ4Dプロジェクト」のお話へ。11年周期の太陽活動、千年単位の地磁気変動、億年単位の大気変動の視点からオーロラを見ていきます。

太陽活動が弱まるとオーロラはほとんど見られなくなりますが、活発になると日本でも見られたり、磁気嵐で停電が起きたりします。

『名月記』(鎌倉時代の藤原定家の日記)には1204年に京都で連日オーロラがみられたことが記されており、その年の太陽活動がどうだったか、古木の年輪を測定して調査中とのこと。このように、天体活動が記録された古文書も研究の大事な手がかりになっています。

大気の変動について見ると、地球に生命が誕生し、植物が酸素を大量に放出して大気の20%を占めるようになりました。この酸素は、緑色のオーロラを発生させます。緑色のオーロラは生命の証なのです。

肉眼で見る明るいオーロラは世界観が変わるほど美しいそうですが、現在は太陽活動が弱まる時期に向かっているため、美しいオーロラは間もなく見えにくくなるようです。行くなら今年来年がお勧めだそうですよ。

「オーロラの光る地球に生きるということ」

片岡龍峰 × 関野吉春 × 三浦均

関野さんからシベリアで満天のオーロラ爆発に遭遇した時のお話。

片岡さんからは晴天率の高いアラスカで観測を続ける中で出会った最高のオーロラ爆発のお話。キラキラと高速で光るため記録は難しく、肉眼でしか見ることができないそうです。

なお、普通のオーロラは常に出ていますが、暗くて晴天でないと見ることができません。

このオーロラが教えてくれるのは、地球には磁場と大気があるということ。大気のない水星、磁場のない金星や火星、大気も磁場もない月ではオーロラは光りません。そして、磁場があり、大気があるおかげで太陽から爆発的に強いエネルギーが届いてもカットされ、私たちは生き続けられます。

もし火星に住もうとするなら、数年で病気になるレベルの放射線への対策を考えなくてはなりません。

そのように考えていくと、太陽系の中での地球という星の位置、大きさ、自転スピード、月の存在といった条件がいかに絶妙なバランスで生命を存在させているかという奇跡を思わずにはいられません。「だから地球に住み続けたい」という関野さん節を今回も聴くことができました。


(構成:足達千恵子)



ー講師紹介ー

片岡 龍峰

国立極地研究所准教授。宇宙空間物理学。2015年文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞。著書に『オーロラ!』(岩波書店)、『宇宙災害』(化学同人)がある。


この講座は2017年1月21日(土)に多摩六都科学館サイエンスエッグ(プラネタリウム)で開催されました。