自発的に起こる吸熱反応は,一見すると不思議な現象である.エネルギーを系外から熱として吸収する変化なのに自発的に進行する,というのは 例えば坂道を自転車がひとりでに上がっていくようなものなので,我々の日常感覚からずれているように思えるからだ.それでも,熱力学を勉強 すると自発的に進行する吸熱反応があってもおかしくないことが理解できるようになる.ヒントはT,P一定の系で自発変化の方向を決める熱力学関 数にある.T,P一定の系ではΔHの符号が自発変化の方向を決めるわけではないのだ.