担当教員について
コミュニケーションの社会学および科学技術社会論の領域で研究・教育活動をしています。これまでやってきたことを分けると、おおよそ以下のとおりになります。まず、(1)科学技術社会論関係では、科学技術に支援された社会生活のデザインについての調査や科学技術コミュニケーションの実施、人とロボットのインタラクションなどのフィールド調査を進めてきました。最近は、スポーツのライブ中継を支えるテクノロジーと実況中継の関係について調べています。(2)コミュニケーションの社会学関係では高齢者介護施設におけるケアワーク、医療診断、視覚障害者の歩行訓練などのフィールド調査を進めてきました。(3)ここ数年はエスノメソドロジーの創始者であるハロルド・ガーフィンケルと現象学者のアーロン・グールヴィッチのかかわりについての社会学史研究も進めています。
私が知りたいことをおおざっぱに述べるならば「社会はどのように成立しているのか」ということになります。社会とは、多様な人びとによって、さまざまな関係のもとで、そして多くの異なった種類の活動によって構成されています。驚くべきことは、その巧拙や善し悪しはともかくとして、協調的・集合的・規範的なやり取りや行為がありとあらゆるところで人びとによってなされていて、それによりその場その場で社会が成立していることです(こうしたことを「秩序立っている」といいます)。ならば、やり取りや行為を成立させるやり方を人びとが実際にやっていることから学び、それに即して研究すれば、上述の「知りたいこと」についての見通しが得られるようになるはずです。このような観点・態度による研究方法をエスノメソドロジーといいます。エスノメソドロジーは社会学に起源をもつ研究方法です。私はこれまでエスノメソドロジーを学び、研究を進めてきました。
そういうわけで、私がこれまでかかわりをもってきたフィールドのいずれにおいても、そこで日常生活を実際に営んでいる人びとが知っていることやっていることに即して、そこで成立している「社会」を知ろうとしてきた点は共通しています。最近は育児に忙しくかつてのような遠隔地・中長期のフィールド調査はできていません。でも、私もまたこの社会のメンバーとして日々生きているわけですから、自分自身の日常生活の半径5メートルのフィールドワークも可能なはずです。こうしたことから(調査・分析能力を鈍らせないようにというリハビリ的理由もあって)私の日常生活で経験したことを題材に、断片的な分析的記述も進めています。