水を冷やせば氷になるように,温度や圧力などの条件を変えると,物質の状態は変化します。 また,水も一万気圧程度まで加圧すると,冷やさなくても室温で氷になります。 水が氷になるように,いくつかの物質は冷やすと状態が変化して,電気抵抗が急激にゼロになる『超伝導』を示したり,磁石のように引きあったり反発しあったりする『磁性』を示したりします。 また,全く電気をながさない絶縁体の中には,わずかに圧力を加えたり磁場をかけたりすることで電気を流すことができるようになるものもあります。これらの奇妙な状態変化は,物質の中にある電子が相互作用した結果現れる状態変化です。私たちは,このような電子が原因となって繰り広げられる状態変化について,高圧,低温,強磁場という三重の極限環境を用いて電子間の相互作用を変化させることにより研究しています。 また,このような多重極限環境においても電気伝導度や誘電率,磁化率などの物理パラメータを精度よく測定する技術の開発も行っています。
タンパク質やプラスチックなどの有機物質は,基本的には電気を流したり磁石にくっついたりはしません。しかし,1970年代頃から,電気を流したり磁性を持ったりする有機物質の開発が盛んに行われるようになってきて,超伝導になる有機物質も報告されています。私たちは,このような電気を流したり,磁性を持ったりする不思議な有機物質の研究を通じて,磁性や超伝導のみなもとである物質中の電子のふるまいについて研究しています。 特に,高圧・低温・強磁場という多重極限環境下で材料の性質がどう変化するかを調べることで,磁性や超伝導の発現機構を明らかにしたいと考えています。
ミュオンという素粒子の一種を材料に打ち込むことで,材料の磁気的性質を研究する方法がµSR法です。観測には大量のミュオンが必要であるため,加速器でミュオンを発生させる必要があります。 実験は,主に英国ラザフォードアップルトン研究所,スイスポールシェラー研究所のミュオン施設で行っています。