研究活動

研究内容

(以下の文章はまだ作成途中です。)

解けない関数方程式から新しい関数を発見する

世の中の現象の多くは諸科学の法則に則って数式に翻訳でき、関数を解とする方程式(関数方程式)で記述できます。中でも時間や空間に対する連続的な変化を記述する微分方程式は、純粋数学の研究対象として盛んに研究されています。 諸科学の法則から導かれた “由緒正しい” 微分方程式の研究が重要なのはもちろんです。 さらに諸科学の将来を見据えて、必ずしも法則に由来しない微分方程式を自由に研究することも、 諸科学を先導する学問としての数理科学の使命だと考えます。 いずれの場合も、陽に解けない微分方程式には未知の関数が潜んでいる可能性があり、数学的手法でこれを『解かずして解く』こと(解の存在証明)ができれば、それは新しい関数の発見です。当研究室では汎用性のある関数の発見と応用を目指しています。

非線形性の主な研究方法

当研究室では関数方程式の中でもとりわけ非線形の微分方程式を研究対象としています。非線形の微分方程式を解析するための様々な数学の理論や手法が開発されています。以下ではもう少し具体的に説明してみます。

まず線形という性質は平たくいうと、入力が2倍になれば出力も2倍になることをいいます。 線形ではない、すなわち入力に出力が比例しない性質を非線形といいます。 線形な現象というのは明快なのですが、 実際に世の中で起こりうる現象はそれほど単純ではなく非線形であることがほとんどです。 非線形な現象は結果がどうなるのかが線形ほどすぐにはわかりません。 それゆえ、興味深い現象が生み出される可能性を秘めているのです。

非線形の問題に対するアプローチには、例えば次のようなものがあります。

曲線を局所的にみるとほとんど直線(接線)に見えるように、 非線形なモノは局所的に見ればほとんど線形とみなせます。 したがって非線形なモノの解析には、局所的に線形と考えて情報を取得し(微分、線形化)、 そこからモノ全体の情報を再構成する(積分)のが有効だと考えられます。 線形に関する膨大な結果を利用できることが大きなメリットです。

また凸性という性質を利用した凸解析も、 非線形問題を解決する強力な理論です。線形という性質が直線的であることに対し、  凸性は集合や関数に対してふくらみやへこみの概念を与えるもので、 真っ直ぐではなく「反り線」的であることを意味します(全体的にはクネクネしている場合でも局所的には反り線とみなせます)。 線形ではないがそれに近いことから、最大点や最小点の存在定理など多くの定性的な結果を得ることができます。

これらのアプローチの方法を通常の関数にとどまらず関数空間上の非線形作用素にまで拡張し、 関数解析学(線形理論)を基礎として発展させた解析手法を非線形解析または 非線形関数解析といいます。

日本数学会においては非線形微分方程式の研究者は主に函数方程式論分科会に所属し、竹内もそこに所属しています。線形の方程式はある程度統一的に扱えますが、 非線形の方程式はその非線形性の性格によってまったく性質が異なるため、 方程式あるいは同種の方程式のクラスごとに研究されます。 方程式やそのクラスごとに大小様々なコミュニティが形成されており、 コミュニティ間の交流も盛んに行われ大変活気のある分野です (各人がどれか一つのコミュニティの属しているわけではなく、 それぞれが複数のコミュニティに属し横断的に活動する場合が多いようです)。 その中で、竹内は主に放物型・楕円型といわれるクラスの方程式を研究しており、 特に p-Laplacian とよばれる非線形拡散の微分作用素を含む方程式を中心に研究を進めています。

最近は p 楕円積分なるものを考えて、 ヤコビの楕円関数の p-Laplacian に向けた一般化に取り組んでいます。

テーマⅠ.退化特異型拡散方程式の力学系理論の構築

退化特異性をもつ非線形偏微分方程式は、画像処理、レオロジー、 数理生物学などの分野に現れる非線形現象を記述する際に用いられ、 その数理が近年盛んに研究されています。ここで退化特異性とは、 偏微分方程式の主な項が解の値や勾配によってゼロ(退化)または 無限大(特異)となる性質のことです。 退化特異性をもつ非線形放物型偏微分方程式が生成する力学系の構造を解明することを全体構想として、 その定常状態を記述する楕円型偏微分方程式の解集合の構造,特に個々の解の自由境界が形成される仕組みを数学的に解明し、 その応用として放物型方程式の解の漸近挙動を調べる方法を開発することを目的としています。 

キーワード:非線形拡散、p-Laplacian、退化特異性、無限次元力学系、分岐理論、変分法

テーマⅡ.ヤコビの楕円関数と楕円積分の一般化

単振子方程式を含むいくつかの非線形振動の方程式の解は ヤコビの楕円関数を用いて表されることがよく知られています。 これらの方程式に含まれる2階微分作用素を p-Laplacian に一般化した場合、 対応する解がヤコビの楕円関数の(p-Laplacianに向けた)一般化を与えると考えられます。 こうして定義したのが一般化されたヤコビの楕円関数と完全 p 楕円積分です。 この新しい関数と積分は特殊なケースとしてそれぞれヤコビの楕円関数や一般化三角関数、 そして完全楕円積分や一般化された円周率を含んでいるので、 これらがもつ性質を統一的に研究できる可能性を秘めています。 開拓されたばかりの未知の分野で問題が山積しています。 

キーワード:一般化三角関数、ヤコビの楕円関数、完全楕円積分、ガウスの超幾何関数、特殊関数、算術幾何平均

研究論文(researchmap/論文)

講演(researchmap/講演・口頭発表等)

プレプリント、レビュー等(researchmap/MISC)

書籍等出版物(researchmap/書籍等出版物)

論文引用(Google Scholar/Google Citations)

科学研究費採択(KAKEN/研究課題)

学生の研究発表

関係する研究会

数理科学科主催の談話会です。 幅広い分野から数理科学研究者を招き、異分野の方にも理解できるように話をしていただく場です。

共にさいたま市にある芝浦工業大学と埼玉大学と、その近隣の解析系研究者による共催セミナーです。 主に函数方程式論と応用数学の分野から研究者を招き、最先端の話題を話していただく場です。

その他

2017年度RIMS共同研究「実領域における常微分方程式研究の継承と革新」

2013年度RIMS共同研究「異常拡散の数理」

2012年度RIMS共同研究「非線形拡散の数理」