神経情報システム研究室は、脳がどのように「考え」「学び」「創造する」のかという謎に理論的に挑んでいます。
現代の人工知能、ディープラーニングを代表とする技術は驚異的な能力を誇ります。しかしその代償として、膨大な電力を消費し、地球規模でエネルギーを逼迫させています。一方で、人間の脳はわずか1日400kcal(チョコレートケーキ1切れ分)のエネルギーで、想像を超える情報処理を成し遂げています。この圧倒的な効率と知性の秘密を解き明かすことを目指しています。
私たちが日常的に使うコンピュータは、ノイマン型アーキテクチャに基づいて設計された「論理の機械」です。一方、脳は無数の神経細胞がダイナミックに相互作用しながら情報を生み出す「生命の計算機」です。その計算原理はいまだ完全には明らかになっていません。それでも、脳は柔軟に学び、適応し、時にコンピュータを凌駕する知的能力を発揮します。
「脳は何を“計算”しているのか?」「なぜ細胞の集合体が、ここまで高度な知性を生み出せるのか?」
この根源的な問いに答えるために、私たちは強化学習・情報理論・非線形ダイナミクスの視点から脳の情報原理に迫ります。
現在のAIは人と同じくらいの知性を発揮するようになりつつありますが、そのメカニズムは脳とは全く異なります。我々は脳を研究する過程で得た脳の構造と情報処理メカニズムをベースに、脳と同じ情報処理様式を持つAI(ニューロAI)を研究します。それにより、省電力で人との親和性の高い新たな情報処理機械を実現します。
生体実験によって脳を理解することは重要ですが、そこには多くの制約と限界があります。そこで私たちは、人工知能モデルを「脳のデジタルツイン」として扱い、TransformerやAutoEncoder, ReservoirComputingといったモデルを解析することで、知性や認知がどのように創発されるのかを探求しています。
いま、世界ではCPUの代わりに生きた神経細胞で計算を行う「バイオコンピューティング」が注目を集めています。培養神経細胞が情報を処理し、学習し、適応する。そのエネルギー効率は、現代のスーパーコンピュータを遥かに凌駕する可能性を秘めています。私たちの研究室では、他大学との共同研究を通じて、データ解析を軸にバイオ計算素子の基盤技術を築いています。