ドライシッパー 輸送する時は液体窒素を抜きましょう
ドライシッパーは液体窒素を取り除いた状態で、内部のサンプルを安全に輸送できるための容器です。内部の特殊加工により液体窒素を吸着させることで容器内の温度を保ちます。
今後宅配で輸送する際には、必ずドライシッパーの容器から液体窒素を除いて発送してください。
Q: 除けるんですか?
A: そうです。除けるんです。
結晶への霜の付着を心配する方もいらっしゃいますが、正しい手順を踏めば液体窒素を除いても霜は付きません。
ドライシッパーの輸送や取り扱いに関する質問、ご意見等は下記の問い合わせ先までお願い致します。
【問い合わせ先】
SPring-8: bioxtal@spring8.or.jp
KEK-PF: px_office@kek.jp
サンプルへの霜付きに関する実験 (2016年PF研究会での千田美紀氏発表より)
ドライシッパーからの液体窒素の取り除き方について。
ドライシッパーが万一転倒した際に起こりうる状況。
液体窒素を取り除かなかった場合
取り除いた場合
参考
ドライシッパーの取り扱い方について。
CX/CXRの販売元であるWorthington Industriesより
https://www.youtube.com/watch?v=DMTNqk2K35A
ドライシッパー販売代理店でのドライシッパー取り扱いに関するサイト(ワケンビーテック)
ドライシッパーの低温保持能力と確認方法
ドライシッパーによる吸着した液体窒素の保持力はドライシッパーによってまちまちです。Taylor Wharton社のCXR100の場合、カタログ値で最大液体窒素吸着量が約3 kg、蒸発量が約0.2 kg/日です。これらの数値から静止させた状態では約16日間ドライシッパー内を液体窒素温度に保ちます。しかしながら、昔購入したドライシッパーや、気がつかないうちに内部にダメージを負ってしまったドライシッパーなど、各々のドライシッパーの状態により保持力も違います。
そのため、この機に一度、重さを毎日測ってみてはどうでしょうか?
一日の重量変化を記録することで、所有するドライシッパーがどのくらいの期間冷却を保てるか見積もることができます。
下の例はPF MXビームラインにある2つのドライシッパーの重量測定を行った結果です。
ドライシッパーAは1日あたり約0.2 kgの液体窒素が蒸発していくことから、13日程度はドライシッパー内を液体窒素温度に保てることが分かります。一方で、ドライシッパーBは1日あたり約0.5 kgの液体窒素が蒸発してしまうことから6日程度しかドライシッパー内を液体窒素温度に保てないことが分かります。(経年によるドライシッパーの真空断熱の悪化が原因と考えられます。)
上のプロットに使用したデータは以下のようなものです。
SPring-8では完全に液体窒素を吸収させた状態にした後に液体状の窒素を除去してドライの状態にしてシッパー内の温度変化を追跡しました。ドライシッパーは2010年購入の2台、2020年購入の1台でテストしました。(下の図を参照してください)
2020年購入のドライシッパーCは16日まで極低温を保持できました。その一方で2010年購入のドライシッパーAとドライシッパーBは6日までしか極低温を保持できませんでした。PFで行った上記の重量測定と似たような結果が出ていますのでやはり経年による真空断熱の悪化が原因なのだと思われます。