当研究室では、生殖補助医療学を中心とする生殖科学を基盤として、基礎研究と臨床研究の双方に取り組んでいます。生殖補助医療の現場で得られる臨床データ、培養成績、配偶子・胚画像情報などを活用し、現場で生じる課題を研究課題へと発展させ、その成果を臨床へ還元することを目指しています。
生殖補助医療の成績向上には、配偶子、受精卵、胚の質を適切に評価し、既存技術を改良するとともに、新たな技術を開発することが重要です。私たちはこれまで、核小体前駆体の動態解析による非侵襲的胚評価、ICSIの手技が胚発生に及ぼす影響の解析、ヒアルロン酸結合能を用いた新規精子選別試薬の開発、卵子形態と顕微授精後の発生能との関連の検討や反復不成功症例に対する治療戦略の検討などに取り組んできました。今後も、生殖補助医療の質向上と臨床成績の改善を目指しています。
卵子、精子、受精卵、胚を取り巻く環境はその後の発生能や生存性に大きな影響を及ぼします。私たちは、これらの環境要因を詳細に解析し、より安全で有効な生殖補助医療技術の開発を目指しています。特に、がん治療などに伴う妊孕性温存を目的とした配偶子・胚の凍結保存や卵巣組織・卵子の体外培養に関する研究に取り組んでいます。これらの研究を通じて、ヒトの生殖医療に加え、動物生産や種の保全にも貢献しうる生殖技術の発展を目指しています。
重症感染症や全身性炎症の回復後には、QOLに関わるさまざまな後遺症が問題となりますが、生殖機能への影響は十分に解明されていません。私たちは、精巣の生殖細胞、ライディッヒ細胞、セルトリ細胞に着目し、炎症性サイトカインIL-18の関与を検討してきました。その結果、炎症後の精巣において、IL-18は生殖細胞やライディッヒ細胞のアポトーシスに関与し、セルトリ細胞ではそれらとは異なる応答を示すことが明らかとなりました。これらの知見を基盤として、今後は雌性生殖器へも研究を展開し、炎症病態後の生殖機能障害の病態解明と予防・治療戦略の構築を目指します。