・研究テーマ
1.金属アレルギーにおける免疫担当細胞の病理組織学的検討
金属アレルギーは、歯科材料や医療用インプラント、装飾品などに含まれる金属を原因として発症する接触皮膚炎の一種であり、近年その患者数は増加傾向にあります。しかし、その発症機構や病態形成に関わる免疫担当細胞の詳細な役割については、未だ十分に解明されていません。
本研究室では、ニッケル(Ni)およびチタン(Ti)を用いた金属アレルギーモデルを構築し、それぞれにおいて誘導される免疫応答の違いに着目した研究を行っています。Ni は比較的強い炎症反応を誘導する一方、Ti は生体適合性が高いとされながらも特有の免疫応答を引き起こすことが報告されており、両者では関与する免疫細胞の種類や活性化様式が異なる可能性があります。
これらの違いを、免疫組織化学的染色を中心とした病理組織学的解析および分子生物学的手法により詳細に検討し、金属ごとの病態形成機構を明らかにすることで、より安全な医療材料の開発や金属アレルギーの新規治療戦略の構築につなげることを目指しています。
2.梗塞モデルマウスに対する天然化合物Bangleneの影響
脳梗塞は、脳血管の閉塞により神経細胞が障害され、運動機能や認知機能に重篤な後遺症を残す疾患です。現在の治療法は発症直後の血流再開療法が中心であり、損傷した神経組織を修復・再生する治療法の確立が大きな課題となっています。
本研究室では、インドネシア産ショウガ(バングル)由来の天然化合物である Banglene に着目し、脳梗塞モデルマウスを用いてその神経保護作用および神経再生促進作用の解析を行っています。特に、脳虚血後に活性化するミクログリアの機能変化や炎症反応の制御機構、ならびに神経幹細胞の増殖・分化との関連に注目し、免疫組織化学的手法および分子生物学的解析を組み合わせて検討しています。
これらの研究を通じて、Banglene を基盤とした新たな脳梗塞治療・予防戦略の創出を目指しています。
通常食(左)と高脂肪食(右)摂食させたメタロチオネイン欠損マウス
メタロチオネイン欠損マウスに高脂肪食を与えると著しい肥満や脂肪肝が生じます。
メタロチオネインは、亜鉛や銅などの金属イオンの恒常性維持や、酸化ストレスから細胞を防御する働きをもつ低分子量タンパク質です。近年、メタロチオネインはこれらの機能に加えて、エネルギー代謝や炎症応答の制御にも関与することが報告されており、生活習慣病との関連が注目されています。
肥満、脂肪肝、糖尿病は、脂質代謝異常や慢性炎症、酸化ストレスの亢進を背景として発症・進展する疾患です。本研究室では、これらの病態におけるメタロチオネインの役割を明らかにするため、メタロチオネイン欠損マウスを用いた解析を行っています。特に、脂肪組織や肝臓における脂質蓄積、炎症反応、糖代謝異常の変化に着目し、分子生物学的および生化学的手法を組み合わせて検討しています。
これらの研究を通じて、メタロチオネインの機能異常が生活習慣病の発症に及ぼす影響を解明し、肥満・脂肪肝・糖尿病の新たな予防・治療戦略の基盤となる知見の創出を目指しています。
s-Vizの脂肪細胞分化促進作用
マウス前駆脂肪細胞に対して、s-VizはAktおよびMAPK経路を活性化し、脂肪細胞の分化を促進することが明らかになりました。
肥満は、2型糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の発症に深く関わる重要な健康課題です。肥満状態では脂肪細胞の機能が低下し、インスリン抵抗性の亢進や代謝異常が引き起こされることが知られています。そのため、脂肪細胞の機能を正常に保つことは、生活習慣病の予防・改善において重要であると考えられています。
本研究室では、結核菌表層糖脂質誘導体である硫酸化ビザンチン(s-Viz)に着目し、脂肪細胞機能および生活習慣病に対する影響を研究しています。細胞および動物モデルを用いた解析により、s-Vizが脂肪細胞の分化や機能にどのように作用し、肥満や高血糖といった代謝異常に影響を及ぼすのかを明らかにすることを目指しています
ACE阻害活性評価
アオサノリ抽出物がACE活性を抑制するかを確認しています。黄色のままのウェルは阻害なし、色が抜けたウェルはACE活性の抑制が認められます。
高齢化が進む我が国では、高血圧症をはじめとする生活習慣病の患者数が増加しており、日常生活の中で実践できる予防・改善法の重要性が高まっています。特に、食品由来の機能性成分は、安全性や継続性の観点から注目されています。
本研究室では、本学の独自技術により陸上養殖されたアオサノリに着目し、その中に血圧上昇に関与するアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑制する成分が含まれていることを見出しました。さらに、アオサノリの経口摂取により、動物モデルにおいて脂肪肝が抑制されることも確認しています。これらの知見をもとに、アオサノリに含まれる機能性成分の同定と作用機構の解明を進め、高血圧や脂肪肝といった生活習慣病の予防・改善への応用を目指しています。