発表者

講演題目(※順次掲載)

「連続スイッチング式加速劣化試験装置の低電流リプル化を目的とした新たな制御手法の提案

佐々木 凛太郎 

本研究室ではパワー半導体デバイスの新たな加速劣化試験手法である連続スイッチング試験を行う装置を開発している。本試験装置は従来のDC電流を印加するものと異なり,被験素子がスイッチング動作を行うことによりAC電流を印加する。このスイッチング試験では劣化のパラメータを被験デバイスの動作波形により決定する。そのため試験中に被験デバイスに流れる電流波形が変動することを避けなければならない。しかしスイッチング動作に伴い被験デバイスに流れる電流にはリプル成分が発生する。これは一般的なチョッパ回路などと同様にインダクタのインダクタンスを増加させることで低減できるが,インダクタンスの増加はインダクタの大型化を伴うため,浮遊容量の増加によりリンギングが発生する。本研究においては新たな制御手法を提案することでインダクタを大型化することなく試験デバイスに加わる電流リプルの低減を行うことを目指す。 

パワーデバイスの状態監視機能を有するゲート駆動回路の高周波駆動化に向けた一検討

天野 慎也  

パワーエレクトロニクス機器,並びにパワーデバイスは鉄道,電気自動車,インフラ設備などに用いられることからその信頼性が極めて重要視されている。現状のパワエレ機器では一定時間ごとにメンテナンスを行う,時間基準保全をおこなっている。しかし、時間基準保全ではメンテナンス時間外の故障や,メンテナンスコストの問題が挙げられる。そこで本研究室ではセンサなどでリアルタイムに状態を監視する状態基準保全に注目し,パワーデバイスの状態監視機能を有するゲート駆動回路を提案している。これはパワーデバイスの状態監視を行う機能と,通常のパワーデバイスの動作の両方を可能とした回路である。しかし,本研究室の提案する回路では状態監視を行うために用いている絶縁型アンプにより,主回路の高周波駆動に適していない構成となっている。そこで本研究では状態監視並びに主回路の高周波駆動の両方を達成するため,状態監視と通常駆動で絶縁方式を分けた回路構成を提案し,実験を行った。実験により,従来回路と比べて,矩形波における立ち上がり・立ち下がり時間は約80 %短縮されたことを確認した。 

パワーMOSFETのHTGB 試験環境の構築

山﨑 詢也  

パワーデバイスは鉄道や電気自動車などのインバータや電力系統装置など社会インフラに適用されるため高い信頼性が求められる。パワーエレクトロニクス機器の故障要因うち,およそ4 割がパワーデバイスであり,パワーデバイスの信頼性は極めて重要である。また,近年パワーエレクトロニクス機器においてワイドバンドギャップ半導体である SiC-MOSFETの採用が増加している。SiC-MOSFETの長期信頼性に関する研究によると,パッケージの劣化だけではなく,半導体のベアダイの劣化について指摘されており,特にゲート酸化膜が劣化が懸念されている。SiC-MOSFETのゲート酸化膜の特性として,ゲート酸化膜の欠陥密度はSi-MOSFETと比較して 2 桁高いことが報告されている。また,しきい値電圧とオン抵抗の低減によるゲート酸化膜の薄膜化によりゲート酸化膜経時絶縁破壊 (TDDB:Time Dependent Dielectric Breakdown) の発生が懸念される。そこで本研究では, ゲート酸化膜の信頼性評価として高温ゲートバイアス (HTGB:HighTemperature Gate Bias) 試験に着目した。HTGB 試験とは個別規定した酸化膜絶縁破壊電圧値付近の直流電圧を高温条件にて MOSFET のゲート・ソース間に印加し,ゲート酸化膜の絶縁破壊を発生させ, ゲート酸化膜の寿命を算出する試験である。現在, 本研究室では SiC-MOSFET のゲート酸化膜信頼性を実験的に評価した実績は無いため, 従来の試験方法による評価ができる試験環境の構築し検証を行った。  

AuPd合金を用いたナノギャップ電極に対するAl2O3被覆効果

筒井 優貴 

ナノギャップ電極は,絶縁体基板上にナノスケールの空間を挟んで金属電極を向かい合わせた構造の素子である.ナノギャップ電極は,印加電圧によって可逆的な抵抗変化を示す.この抵抗スイッチ効果を利用して不揮発性メモリとしての応用も研究されている.しかし,ナノギャップ電極は抵抗変化を繰り返し行うと,構造が薄く変化してしまう問題がある.本研究では,ナノギャップ電極を絶縁体のAl2O3で包み被覆した素子の電気特性を評価し,Al2O3被覆が抵抗変化後の電極の形状に与える影響について検証した.電流-電圧特性から,Al2O3被覆をすることで電流の最大値が減少し,構造の変化が抑制されていると考えられる. SEMを用いて抵抗スイッチ後の構造を観察した.Al2O3被覆がない電極は,ワイヤ部分の膜厚がより薄く変化し,電極全体の形状が変化している.一方で, Al2O3被覆がある電極は,形状の変化が局所的であり,ワイヤ部分の膜厚がより薄く変化せずに存在している.電極全体をAl2O3で覆うことで,原子の移動範囲が制限された可能性がある.本研究では,電極全体を絶縁膜のAl2O3で覆うことでナノギャップ電極の電極形状の変化を抑制することが可能であると示された. 

金-パラジウム混合ナノギャップ電極における混合比とスイッチング特性の関係

佐藤 拓真 

近年,人類が扱う情報量は爆発的に増大している.その為,情報を保持することができる不揮発性記憶素子の高速動作や大容量化が求められている.素子の微細化を進めるため,数ナノメートルの真空ギャップを隔てた 2 つの金属電極から構成されるナノギャップ電極が注目されている.本研究では異なる物性を持つ金属を混合してナノギャップ電極の材料に用いることで,ナノギャップ電極の隆起抑制を目指した.