このたび、第40回日本体操競技・器械運動学会大会(記念大会)を大阪体育大学にて開催できますことを、大変光栄に、そして心より嬉しく思っております。
本学会は、体操競技および器械運動に関する研究者、教育者、指導者、学生が一堂に会し、それぞれの立場から知見を持ち寄り、学び合う貴重な場として発展を続けてまいりました。そして第40回となる今大会は、本学会にとって一つの節目であるとともに、約30年ぶりに西日本で開催される大会となります。
本学では2019年に国際体操科学フォーラムを開催し、「科学」と「実践」の融合をテーマに、国内外の研究者や指導者とともに体操の未来について議論を重ねてまいりました。その後も、スポーツ科学と現場実践の融合を目指した取組を進め、近年では世界で初めて大学の体操競技練習場に富士通製体操競技動作解析システムを導入するなど、新たな挑戦を続けています。
一方、この数年間で人工知能(AI)は想像を超える速さで進歩し、私たちの研究や教育、そしてスポーツを取り巻く環境は大きく変化し始めています。映像解析や採点支援、データ分析など、AIは体操競技にも新たな可能性をもたらしています。しかし同時に、この急速な技術革新は、「体操とは何か」「指導とは何か」「評価とは何か」という、根本的な問いを改めて問い直す契機にもなっています。
体操競技や器械運動は、他の測定競技と比べても、運動者自身や指導者、さらには演技を見る人の「感覚」や「経験」が大きな意味を持つ領域です。AIや科学的データによって多くのことが可視化される一方で、それだけでは表現しきれない価値や判断も数多く存在します。目の前の人の個性を見極め、その日の状態や場の雰囲気を感じ取り、適切な言葉や方法で導く指導者の判断、学習者同士の相互作用を含めて学びを促進する環境づくり、授業の中で子どもの可能性を引き出す教師の工夫、さらには競技の本質や価値を見据えながら制度やルールを考える視点など含めて、現場で培われる実践知(Practical Intelligence:PI)の重要性は、むしろこれまで以上に高まっているのではないでしょうか。
そこで本大会では、「現代の体操におけるAIとPI(Practical Intelligence)」をテーマに掲げました。
本大会で考えたいのは、AIを受け入れるか否かという二項対立ではありません。AIという新しい技術を体操競技・器械運動の発展のためにどのように活かしていくのか。そしてその一方で、人だからこそ担うことのできる知や判断とは何か。AIとPIを対立する概念としてではなく、互いを補完しながら未来の体操を支える両輪として捉え、多様な立場から議論を深めたいと考えています。
今大会では、国際体操連盟(FIG)Executive Committee委員であり、トップレベルのコーチ、国際審判、プログラムディレクター、技術委員など豊富な経験を有するJeffrey Thompson氏をお迎えし、AI時代に体操競技はどのように発展していくべきか、そして何を変え、何を受け継いでいくべきかについてご講演いただく予定です。また、大会テーマに沿って器械運動領域と体操競技領域それぞれのシンポジウムに加え、世界で初めて大学の体操競技練習場に導入された富士通製体操競技動作解析システムの紹介や、輝かしい競技実績を有するなんば体操クラブの実践を取り上げる現場応用セッションなど、大阪開催ならではの企画も準備しております。もちろん、大会テーマに縛られることのない自由な観点から、多様な一般発表がなされることも期待しております。
第40回という節目の大会が、最新の研究成果を共有する場であるだけでなく、研究者、教育者、指導者、学生、そして体操を愛するすべての方々が立場を越えて対話し、体操競技・器械運動の未来をともに描く場となることを願っております。AIという急速な技術革新の時代だからこそ、体操の本質とは何か、人だからこそ担うことのできる知とは何かを、皆様とともに考え、議論できることを楽しみにしております。
大阪の地で、多くの皆様とお会いできますことを、実行委員一同、心よりお待ちしております。
第40回日本体操競技・器械運動学会大会
実行委員長 藤原 敏行