生物は自身を取り巻く環境に適応するため、柔軟性と頑健性を兼ね備えた環境応答機構を進化の過程で獲得してきた。
本研究会では、こうした応答機構を「環境シグナル」という視点から捉え、従来の気温や日長といった季節変化や、それらの逸脱によるストレスに留まらず、地震や津波といった大規模環境撹乱、さらには群体性動物の同種他個体コミュニケーションや共生・寄生に代表される異種間相互作用にまで裾野を広げる。
細胞レベルでは転写・翻訳制御のダイナミクスや生殖細胞の運命決定機構がどのように働くのか。
個体レベルでは、冬眠や群体形成、寄生種による宿主支配、共生による新たな関係性の構築がどのように成立するのか。
そして群集レベルでは、大規模環境撹乱後の動植物群集の変遷過程をどのように解釈するのか。
これらの多様な生物階層の問いに対し、各分野の新進気鋭の若手研究者が最新の研究成果を発表する。
本研究会を通じて、異なる生物学的階層で観察される現象に理解を深めると同時に、それらに共通する応答原理の抽出に向けた議論をする。
各自が取り組む一つの生命現象を多階層の観点から見直す契機となるとともに、階層を超えた生物学的現象の記述スキームの統一可能性についても議論を深める場としたい。