協力隊の鈴木です。
2025年2月の活動報告になります。
タイトルにもあります通り、今月は凄まじい寒波が日本列島を覆いました。日本海側を中心に記録的な大雪を観測した地域が多く、秋田県でも北秋田市などで観測史上最大の積雪記録(141センチ)となるなど、昨シーズンとは真逆のデータとなってしまいました。東成瀬村でも2月初旬と下旬にて大雪となり、降雪量が20~30㎝となる日が続き、観測地点全てで200㎝を越す量となりました。
"住めば都"と思っていた先月の自分を殴ってやりたいくらい、日々の雪寄せがハードモード過ぎました...
それでも毎日稼働してくれる除雪車やお隣さん達との連携があって、なんとかこの大寒波を乗り越えられたと思っています。改めて、本当に改めて『豪雪地帯 東成瀬村』を感じた一ヶ月であり、早く春になって欲しいと心の底から願った一ヶ月でもありました。
さて、今月のトピックスは下記4件になります。
年中行事 - 雪中田植え - へ参加、雛人形と雛壇の飾り付け、博物館等連絡協議会実務担当者研修会、2025年ジュネスカップスキー大会などが行われました。
雪国ならでは行事が多くあり、厳しい寒さの中でしか経験できないことも多くありました。
気温は少しずつ上がってきており、暖かい日が続くようになるまであと少しです。残り僅かであろう冬期期間を楽しむ姿勢は忘れずに生活していこうと思います。
村では『年中行事』と呼ばれる定まった日に決まったことをする習慣があり、農耕主体の生活では最も身近なものでした。しかし、現在では農業従事者の減少と核家族化などが進み、簡略化あるいはその行事自体が忘れ去られているのが現状です。このような伝統を後世に伝えるため、村内の小学校と連携し『ふるさと東成瀬の伝統行事を体験しよう』というテーマで活動を行っています。その一つが今回行われた『雪中田植え』になります。
雪中田植えは小正月(旧暦1月15日)に行われる濃厚予祝行事の一つで、雪の上を平らにならし、四隅に朴の木(傍にミズキを立てる事で親子を表すとのこと)を立てて、御幣や藁の下がりなどで飾り付けをした注連縄で囲って田んぼとし、稲作の神様にお膳をお供えし礼拝を行います。そして稲わらと豆柄、ヨシを一束にしたものを12束植え、籾と大豆を全体にまき散らします。(昨年は閏年のため、13本でした)2週間後、植えた稲束がどのくらい倒れているかで豊作あるいは平年作かどうかを占います。またこの年中行事では、菅笠や蓑、わらぐつを履いて行うしきたりがあり、生徒たちも実際に身にまとって雪中田植えを行いました。昨年は雪不足のため、周囲からかき集めた雪でなんとか会場を作りましたが、今年はそんな心配が無いくらいの積雪量だったため、会場作りは万全の状態で行われました。
その後は農耕予祝のための餅づくりが行われ、餅つきや餅づくり(ホケキョ餅・粟穂餅・繭っこ餅の3種類)で賑わい、最後は全員でつきたてのお餅を頂き、昔がたり(東成瀬村に伝わる昔話を村の方言で話す)を聞きました。
雪中田植えは村の小学校5年生が担当となり、地域の先生である友信さんからの説明を真剣に聞いた後、寒さに負けずに行事に参加していました。代表に選ばれた生徒達は、菅笠や蓑、わらぐつを装備して田植えを行いました。わらぐつが意外と暖かいとの感想があり、先人の知恵が生きた瞬間でもありました。
田植え会場の後ろでも友信さん特性の稲わらを植えます。すぐに倒れないよう深めに植えるのがコツです。
集合写真も撮りました。素敵な笑顔でいっぱいです。
餅つきや餅づくりは大勢の方々と終始大盛り上がりで行われました。
御年91歳の友信さんも勢いよく餅をつきます。足腰の丈夫なところが流石としかいいようがありません...生徒達も負けじと餅をついていました。いい音がなると大喜びをする姿は無邪気そのものでとても愛らしかったですね。
つきたての餅の半分はホケキョ餅・粟穂餅・繭っこ餅へと姿を変えました。生徒達は自分で食べる姿を想像してなのか、かなり大きくして縄につけていましたね。出来上がった餅はしばらく乾燥させ、下級生である4年生が7月の年中行事『歯がため』(歯が丈夫になるように願いを込める)の際に餅を食べます。年間を通して行う年中行事は小学校生活全てで関われることが地域密着型教育の強みですね。
残り半分はきな粉とあんこの味付けをした餅へと変身です。今年も餅作りを行いましたが、昨年よりうまくできた気がしたので合格としましょう。
出来上がった餅は全員で食べます。喉にひっかからないように注意しながら食べる姿もやっぱり愛らしいです。
稲作の神様へのお供えも忘れずに。何事も感謝を忘れずに、友信さんが伝えたいことはいつも一貫していて勉強になります。
3月3日に行われるひな祭りに向けて、ふる里館では今年も雛人形と雛壇の飾り付けを行いました。
今年は入口ではなく、和室での飾り付けとなり畳との相性は抜群でした。
最上段から内裏雛、官女(3人官女)、五人囃子、随身(貴人の警衛を行う者、童謡うれしいひなまつりでは左大臣・右大臣とされている)、仕丁もしくは衛仕(地方からの労働者、雛飾りの中では唯一庶民出身の白衣を着た3人1組)、嫁入り道具揃、御輿入れ道具と飾り付けを行いますが、写真左側の雛壇は8段となり1段多いことにお気づきでしょうか。
実は五人囃子と随身の間に歴史上の偉人達が特別ゲストとして加わっているのです!果たして誰なのか、写真を拡大して確認するか、実際に見に来てみてはいかがでしょうか?
ふる里館入口近くでは小さな雛人形たちがお出迎えをしてくれますので、ぜひ足を運びにいらしてください。
令和6年度 秋田県博物館等連絡協議会実務担当者研修会が秋田県立博物館にて開かれました。
クラウドファンディングを活用した文化財の保存と活用について ~鈴木空如筆「法隆寺金堂壁画」表装の取組から~
というタイトルの元、大仙市教育委員会 太田公民館の高橋さんによる報告が行われました。
法隆寺の壁画模写などを手がけたことで知られる古仏画模写研究を極めた「鈴木空如」と彼が手がけた模写絵を現代に蘇らせるためにクラウドファンディング(以下「CF」と称する)を主体とする活動が紹介され、鈴木空如の生い立ちから主な作品、CFへの取組内容(運営会社の選定、税の優遇措置、手数料など)、実際に取り組んだ大仙市での事例などの報告を聞くことができました。
古仏画模写というワード自体、初めて聞く人が多いと思いますが、模写研究が進んでいなければ現代を生きる私達がこの目で仏画を見ることは殆ど出来ていなかったと言っても過言ではないと思っています。本物の作品が何らかの理由で失われてしまっても、模写された作品があることで再び生き続けることができる...まさに永遠の生命の芸術を空如は求めていたんじゃないかと私は解釈しました。そして、後世に残すべき文化財を守るための活動のひとつとしてCFという選択肢があり、見事に活かされた大仙市の取組は本当に素晴らしいことで、言葉を選ばずに言うとめっちゃ感動しました。個人的にはREADYFOR(CF運営会社)で国立科学博物館のプロジェクトに参加したことがあり、表面上だけの仕組みだけ頭に入っていた状態から、実際に取り組むときに行うべき行動やメリットデメリットを詳しく聞くことができたことが大きな収穫でした。※CF内容の詳細については下記URLより
東成瀬村でもCFを活用した取組は何件か存在していますが、文化財保護の視点からCFという選択肢はアリなんじゃないかと考えているので、今回の研修会をきっかけに動き出したいと思います。
ちなみに大仙市でのCFは今後も継続的に行う予定で、今年の5月以降から新たに立ち上げるとのことでした。そのときは私も全力でサポートしていくつもりです!(鈴木空如展なども開催予定とのことです)
〈参考サイト〉
大仙市 観光・文化・スポーツ 文化財
https://www.city.daisen.lg.jp/archive/contents-861
READYFOR 法隆寺金堂、火災で失った色彩 現代に残る「鈴木空如」模写絵を未来へ
昨年に引き続きジュネスカップスキー大会のサポートを勤めさせていただきました。
今年の積雪量は充分で、雪不足による心配はまったくありませんでした。
二日間に渡って行われた本大会ですが、受付業務から選手着用のビブ回収や表彰式の準備などに携わり、微力ながら応援もかねて参加させていただきました。滑り終えた後にタイムを気にする姿はまさにアスリートでして、バレーボールやバスケットボールで高みを目指していたあの時を思い出されるものでした。
カメラを向ける親御さん達に恥ずかしがりながらも笑顔を見せる選手たちがいました。
アスリートではありますが、競技が終わればごくごく普通の子供たちだったところが素敵でした。
村の小学校3年生がふる里館へ社会科見学の授業で来館しました。
講師は地域の先生である友信さんをお招きし、昔の生活とその道具たちについて説明をしました。
普段の生活のための道具(藁でできたもの)や農業用道具について熱心に質問していて、興味関心が芽生える瞬間はいつみてもいいものです。先人達の生きた証をいつまでも忘れずに立派に成長してもらうことを願うばかりです。