協力隊の鈴木です。
2024年8月の活動報告になります。
夏期五輪がフランス・パリにて開催され、日本選手団の方々の素晴らしい活躍が脳裏に焼き付いた1ヶ月でした。
個人的にはバスケットボールとバレーボールに注目していて、同世代の選手達が世界で最も熱狂する舞台で躍動している姿は本当に感動しました。今後はパラリンピックが開幕するので、まだまだオリンピックムードは続きそうです。
さて、今月のトピックスは下記3件になります。
成瀬ダム交流会、明治大学文学部考古学専攻生による上掵遺跡発掘実習、成瀬ダムまつりなどが行われました。
村での2年目の夏は去年よりも多くのイベントに関わることができたと感じています。
何よりも着任するにあたって最も熱望していた上掵遺跡での発掘調査については、考古学への興味関心が燃え上がる最高の時間でした。
終わりに、気象庁による2024年9月~11月の天候の見通しでは、9~10月にかけて暖かい空気に覆われやすいため、気温は全国的に高いと予想されているそうです。どうやら残暑は続くみたいですが、夜の東成瀬村は秋の虫が鳴き始めており、季節の移り変わりを知らせてくれています。来月もありがたいことに行動する機会が多いため、引き続き健康管理に気をつけながら生活していこうと思います。
成瀬ダムにおける水源地域(東成瀬村)と水の恩恵を受ける地域(湯沢市・横手市・大仙市)の皆様と親睦を深めるべく、成瀬ダム交流会が今年も開催されました。
昨年に引き続き、村のまるごと自然館にて縄文体験(まが玉作り、火起こし、縄文衣装など)と、ダム工事現場の見学会が行われ、初めてのまが玉作りに苦戦している子供達や全力で火起こしをしている姿、親子で仲むつまじい光景をたくさん見ることができました。
昨年度より参加人数は減ってしまいましたが、参加者の方々と長く接することができたので縄文時代について詳しい説明が可能になりました。
夏休みの思い出は大人になっても忘れない事が多いと個人的に思っており、私自身も小さな頃に行った体験教室などは未だに覚えています。なぜまが玉を作ったのか?なぜこの形になったのか?どうして火が出ると気づいたのか?
今回の交流会ではこういった鋭い質問が多く、疑問に対してすぐに質問をして考えようとする姿も見られ、純粋な好奇心に感動を覚えました。夏休みのほんの1ページにすぎない時間だったかもしれませんが、誰かの心に残るような経験のお手伝いができて心から嬉しいと感じた1日でした。
東成瀬村で有名なモノと言えば、考古学の世界ではその名を知らない人はいないであろう『大型磨製石斧』が挙げられます。昭和40年(1965年)秋に東成瀬村田子内字菅生田掵で行われていた農道工事中に発見された世界最大級とされる4点の大きな石斧で、後に国の重要文化財指定を受け、現在は秋田県立博物館に保管展示されています。
この大型磨製石斧が出土した場所は「上掵遺跡」と名付けられることになり、今回の発掘実習などに繋がっていきます。ちなみに出土した地名と遺跡名が合っていない事については、様々な理由があって記録されることになっていて、これらを時系列順に並べて説明をしたいところですが、またどこか別の機会でお話したいと思います。
さて、この度の発掘実習には約5年ぶりに明治大学文学部考古学専攻生を迎え入れることになりました。平成29年(2017年)から令和元年(2019年)まで行われていた考古学実習ですが、令和2年以降は新型コロナウィルス感染防止のため中止となっていたため、待望の来跡実習の年になりました。
同大学の藤山教授指導の元、櫻田館長と村内からの作業員を含めて約30人ほどでの体制で行われ、東成瀬村教育委員会と秋田県埋蔵文化財センターの皆様の全面協力のもと、学生達と共に10日間の日程をこなしていきました。
実習内容について、遺跡踏査・遺物分布調査やトレンチ設定を行った後、掘削作業に取りかかり掘り下げを進めていきます。最終的には測量や図面作成を行い、調査資料として形を作っていくわけですが、掘削の過程で土器片や石器などが200点ほど出土したとみられています。それらの復元のための整理作業などもあるため、詳細な成果発表までが待ち遠しいです。
講義で説明を受けてはいるが実際に作業をするのは初めてという学生もいれば、発掘バイトをこなしながら経験を積んでいる学生も多く、私も10年ほど前に秋田県を飛び出して遺跡発掘バイトをしてきたなぁとついつい懐かしむ瞬間も多くありました。しかしながら時の流れは残酷であり、移植ベラ(土を掘るための道具)や箕(大きなちりとり)などの使い方がまったくおぼつかない状態でして・・・。一から教わる気持ちでお手伝いに徹した数日間でした。
発掘作業の現場を見たことがある、あるいは作業に従事したことがあるという人はそこまで多くないと個人的には思っており、遺跡や遺構が観光地化していて、その土地を訪れたり何かで情報だけ認知している人のほうが大多数を占めていると思います。ここ東成瀬村では「縄文ロマン事業」と題した村独自の調査が行われており、上掵遺跡周辺の詳細な試掘調査とその内容を確認しながら、埋蔵文化財の保存・管理・活用を通して地域の活性化と観光事業の振興を図ることを目的とした事業を実施しています。私がこの村の地域おこし協力隊になって取り組みたいと思っていた事業そのものであり、最も大きな目標でもありました。今回ようやく発掘作業へ携わり、その可能性について直接考えることができ、最終的な結論までに大きく前進することができました。発掘体験の中身をブラッシュアップしていき、専門性を高められるような体験を提供することが最も現実的であるかもしれないという考えが今のところ有力で、観光事業などへ繋げていくためには角度を変えた別の要素が必要だと考えています。自分なりの答えが出るまではありとあらゆることを学び経験していきたいと考えていますので、残された任期期間中でやれるだけやってみようと思います。
最後に、今回の発掘実習のおかげで、少しだけ眠っていた考古学への興味が復活し、探究心に火がつきました。今後の活動へ弾みが出る素晴らしい時間を共にすることができ、本当に感謝申し上げます。来年度もお待ちしております!
2026年頃での完成に向けて建設中の成瀬ダムですが、完成後の利活用の一環と「赤瀧まつり」を復活させ地域の活性化を図ることを目的に『成瀬ダムまつり』が初開催されました。
ダム建設予定地である仁郷・桧山台集落には赤瀧と呼ばれる滝の名所と赤瀧神社などがあり、日本全国を歩いて回った旅行家として有名な菅江真澄が実際に訪れ日記に記載されていることが確認されています。しかし、残念ながらダムの底へ沈んでしまうため、赤瀧神社は解体されましたが遷座先の神社は未定となっています。お祭りのほうが早く開催されましたが、早く移転先が見つかり真の意味での赤瀧まつり=成瀬ダム祭りを開催できる日が来て欲しいと個人的には思っています。
さて、今回のお祭りでは仙人太鼓メンバーとしてオープニングアクトと会場スタッフ任務を任されました。コンクリートからの照り返しが暑く、まるで赤瀧のように流れる汗と共に演奏しました。真夏の炎天下というなかなか過酷な環境での演奏でしたが、アドレナリンで叩く太鼓は本当に気持ちが良く、清々しい気持ちになれました。演奏終了後は会場スタッフとして裏方での作業を行い、無事に祭りを終えることができました。
村内外から様々な出演者や出店企業が集い、様々な芸能分野での演技や美味しい食べ物や飲み物を同時に楽しむことができる素晴らしい時間で、特に「餅まき」はかなり盛り上がったんじゃないかなと思います。昨年、新築の家を建てる際に行われる上棟式での餅まきに参加したことがあり、投げられた餅やお菓子などを取り合う姿には慣れたと思っていましたが、今回の餅まきは規模が違いすぎて正直驚きました。ちなみに餅まき文化の聖地と言われる和歌山県では年間300件以上も餅まきが行われているそうです。
夏といえば夏祭り!というイメージは誰しもが持っているかもしれませんが、成瀬ダム祭りが今後、東成瀬村の夏の象徴となるには継続性が最も重要になるかと思います。ダム関係者、事務局、近隣住民など様々な人との関わりなくしてはできないイベントであるが故に、次回への期待も大きくなっているかと思います。単発で終わってしまうにはもったいない夏の大イベントでしたので、もう一度演奏できる日を待ちながら日々の練習に励んでいこうと思います。
秋田県公文書館と東成瀬村教育委員会の連携展が8/22より開催しています。(閲覧無料)
開催日程
前期展:8/22~9/23
後期展:9/26~11/4
会場 秋田県公文書館2階特別展示室
休館日 毎週水曜日
秋田県公文書館と東成瀬村教育委員会と双方の資料を持ち寄り、「東成瀬村アーカイブズ・ギャラリー」を開催することになりました。
アーカイブズとは文書、図面、写真から現代の音声記録映像や電子記録まで記録史料全般のことを言います。この展示では、東成瀬村に焦点を当て、公文書館所蔵資料と村の資料から、豊かな人間の営みを浮かび上がらせます。どの資料をとってみても村の歴史にとっては貴重なものばかりです。展示を閲覧される皆様におかれましては、どうか一つ一つの文書と絵図から、先人の姿を感じ取って頂ければ幸いです。