協力隊の鈴木です。
9月の活動報告になります。
今年の夏は記録的な暑さになりましたが、9月に入ると秋の気配が一気に強まり、朝晩の冷えがそう感じさせる日々になってきました。特に東成瀬村は山間地域のため朝晩の寒暖差が大きく、季節の移り変わりがよく分かる地域だなと改めて感じています。
さて、今月のトピックスは下記3つになります。
村の子供達との宿泊研修や秋田県公文書館にて展示会などが行われ、村外で関わる機会が増えてくるようになり、村民としての意識が少しずつ高まっていく感覚が嬉しかったです。
冒頭でも述べました通り、夏が終わり秋を感じる日々になってきました。
お米の収穫、紅葉シーズン、産業祭や芸文祭などが近づいてきましたので、村での初めての秋を全身で感じていきたいです。
東成瀬村小学校5年生12名の生徒達があきた白神体験センター宿泊学習を行い、2日間の日程を引率者として同行させていただきました。目的地は山本郡八峰町にある「あきた白神体験センター」になり、秋田県の端から端(県南地域から県北地域)への大移動となりました。
村の子供達とは地域のお祭りなどで接した程度で、ほぼ初対面のため緊張されるかなと心配していましたが、一瞬で仲良くなり日程を終える頃には全員と楽しくお話ができるまでになりました。事前に行った先生方との打ち合わせにて、子供達はとても元気で素直で人懐っこいですよ!と聞いており、まさにその通りでした。
活動内容について、1日目はシーカヤック体験と貝殻ストラップ作りを行いました。ボートの準備、漕ぎ方の確認、ストラップ作成など子供達が一生懸命にしている姿を見て、自信の小学生時代を思い出し感慨深くなっていました。体験センターでの入所オリエンテーションにて、施設職員の皆様から『当施設では宿泊の準備やゴミの片付け、食事の準備などに様々なルールがあり、それに従って自分達で行って貰います。』との説明があり、シーカヤック体験でも、基本的には自分達で準備を行い、後片付けまで行いました。思わず手伝ってしまいたくなる場面もありましたが、目の前で成長していく生徒達を見るためにぐっと堪えて見守ることに徹していました。
2日目は白神山地にて十二湖散策を行いました。天気が危ぶまれましたが、小雨程度でしたので予定通り行うことができました。透明度が高いことで全国でも有名な「青池」で集合写真を撮りましたが、雨による霧のため残念ながら美しい青色とは言えませんでした。しかしながら、後の思い出話には間違いなく残る景色だったと思います。初日でだいぶエネルギーを消費したと思っていましたが、散策時でも元気いっぱいで嬉しかったです。
散策後、お昼ご飯を食べ、退所式を行いました。生徒を代表して感想を発表する時間がありましたが、小学5年生とは思えない内容でびっくりしたのを覚えています。教育に力を入れている証拠が垣間見える場でもありました。帰りのバス内では全員見事に熟睡していたみたいで、そこはやっぱり小学生だなと安心しました。
この2日間は、子供達のパワーと可能性を感じ、自分が忘れていた興味関心を思い出すことができました。引率者の立場ではありましたが、逆に力を貰い、楽しい時間を過ごすことができました。わんぱくにご飯をかき込む様子、何事にも全力でトライする様子、職員やガイドさんのお話を真剣に聞く様子など、一つ一つが輝いて見えたのが大きな収穫だっと思います。カメラ担当も兼任していましたが、シャッターチャンスが多く約400枚も撮っていました。見返す度に思い出が昨日のように鮮明によみがえってくるので、印象的な2日間になりました。
今後も同じような機会があれば是非とも参加したい事を伝えたところ、教育の場で一緒に仕事をしていきたいと先生方からも言って貰えました。個人的にも新しい側面を学べるチャンスにもなると思うので、積極的に関わっていきます!
秋田県公文書館にて開館30周年記念として企画展が開催され、前期展(8月24日~9月24日)に東成瀬村から資料を展示させて貰いました。4月からふる里館にて行われた連携展の続きになり、今回は県公文書館の畑中先生からイチ推し資料を!との要望がありましたので、これまでの活動報告で何度か紹介をしている「猫の掛け軸」と岩井川地区にある岩井川神社に奉納されている「大悲慈眼堂之記」の銅板などを出張展示しました。畑中先生によるユーモラスな解説で、公文書館収蔵の貴重な資料や横手市公文書館と大仙市アーカイブズからの資料を見ることができ、またひとつ地域の歴史について知ることができました。
前期展で一番注目された資料が県公文書館収蔵の久保田城下町の古地図で、二番人気だったものがなんと、猫の掛け軸でした。全国的に見ても珍しい鼠除けのおまじないがこめられた掛け軸であり、なにより愛らしい猫の姿が訪れた人達の印象に残ったのではないでしょうか。現在は出張展示のお役目を果たしふる里館へ帰ってきましたが、本物は展示せずに厳重に保管してあります。代替品は印刷されたものになりますが、精密にコピーされているため見た目の変化は殆どありませんのでご安心ください。
県公文書館での企画展を堪能したあとは同じく連携展が開催されている横手市公文書館へ移動しました。こちらでは四八豪雪での写真や横手城下町の地図などが展示されており、公文書館のみでしか見ることができない貴重な資料を拝見することができました。
東成瀬村に移住した一番の理由は、歴史や文化を学ぶためになります。これまでもこれからもブレることのない目的になりますが、今回の経験は今後の活動において大きなヒントになりそうな予感がしました。特に古文書への活動が村の歴史を紐解きながら、魅力発信に繋がるのではないかと考えているので、今後も注力していきます。
山々の紅葉シーズンを目前に控え、栗駒山の山頂付近は早めに色づく可能性があるとのことで、早速産沼コースで登ってきました。「神の絨毯」と呼ばれる紅葉スポットがありますが、残念ながら色づきはまだまだでした。山頂付近も本格的な紅葉は10月初週と見られる色づきであり、もしかするとそのまま枯れてしまうような木々も見受けられました。今年は厳しい残暑の影響で、葉の色づきが遅れているかもしれないとの分析が多く、観光資源への影響を身近に感じ取れる光景でもありました。本格的に紅葉が始まる頃は登山客で溢れかえるとのことで、賑わいの中での登山も一度は経験してみたいものです。
村に移住してから毎月必ず登山をしていますが、山頂からの景色はいつ見ても気持ちがいいです。道中の美しくも険しい自然に魅了されながら、雑念が取り払われるほどの絶景を見た時の快感は、何ものにも代え難いことだと思います。冬が始まるまでまだ時間はあるので、今後も様々な登山コースへ挑戦していくつもりです。
県公文書館にて開催された企画展より、東成瀬村から出張展示を行った銅板「大悲慈眼堂之記」について簡単な紹介になります。
寛文年間(1661~1673年)岩井川村に知行地を与えられ地頭となった藩士の遠藤傳左衛門(えんどうでんざえもん)が「御開成の心願」を立てて観音堂を建立し、銅板に武運長久と子孫繁栄、村人の願いを「大悲慈眼堂之記」として漢文で刻んで奉納したものになります。遠藤氏は村人と共に成瀬川の支流である合居川から取水した堰を6年かけて開削し、新田60余町歩(東京ドーム12個分)を開発しました。文書などには新田開発を行った秋田藩の武士たちの名前が多く見られますが、秋田から何十里も離れた山間の村で堰を開削して新田開発に勤しんだ地頭本人が、自分自身で日付入りの漢文の文書を銅板に刻んだ資料は他に見つかっていません。
こちらの銅板は現在、村の文化財指定候補物件となっています。無形文化財では「田子内盆踊り」が登録されていますが、有形文化財では今回が初になる予定です。
今後、文化財保護審議会を行い指定していく流れになりますが、私は資料の準備などに携わらせていただいています。村に移住しなければできなかった貴重な機会になりますので、責任感を持って取り組んでいく所存です。