・今月で6月から定期的に行っていた、成瀬ダム展望台での物産販売会が終わり、その売り子としての業務を終えました。
【遊びが忙しいからよぉ。】
この何気なくボソッと呟いた一言が強く印象に残った。この言葉を言った方は、この村で数十年続く太鼓の団体のリーダーである。御年70歳になるこの方のエネルギーには凄まじいものを感じる。
都会からこの村に帰ってきて、全く畑の違う仕事を定年まで勤め上げ、その中で太鼓の団体としての活動も精力的に行ってきた。一時期は、秋田名物「竿燈祭り」のイベントに太鼓の団体として出席し太鼓を叩いたり、各地の様々なイベント行事に赴き、太鼓を通してその行事を盛り上げてきた。
伝統的な太鼓の団体というと、素人目線で、厳しい団体の印象が初めはあったが、実際に自分がその輪に入ると初めの印象は覆った。確かに長年続いてきたものの厳しさやその重さみたいなものを感じることもあるが、太鼓のメンバーは基本的に皆アットホームだ。練習の時も常に和やかな雰囲気があり、時に太鼓を打つことよりも、皆で他愛もない話を楽しむ方を優先する。一言で言うと、とにかく気持ちの良い人達だ。
一定数の人数が団体として活動を続けていくのは想像以上に大変なことであり、並大抵のことではない。それを続けてこれた一つの大きな要因に、このリーダーの方の人としての誠実さと柔軟な思考があると感じた。
太鼓の団体として、その技術の高みを追い求め只管に追い込んでいく、そんな伝統的な団体としての方向性がある中、その方向ではなく、多少ミスしたりしても自分たちがまずは楽しむことを大事にする、その空気感を軸として団体としての舵を取ってきたところにまず柔軟さを感じる。
そして今月、太鼓の団体としての記念イベントがあった。本番が近い日に明らかにそのリーダーの方は体調を崩していたが、本番までの準備や段取りなどを休むことなくして、自らも、時に地面に膝をつき息をあげながらも太鼓を打っていた。その姿に団体のリーダーとしての覚悟と誠実な人柄を感じ、ずっと団体として存続してきたことに納得した。
その方は、太鼓の他にも三味線や笛など様々なことをやっている。そういうものを遊びだと言っている。この方が言う【遊びが忙しい】だからこそ、より味わい深いものを感じ、頭から離れなかったのかもしれない。